見出し画像

ベトナムの中の日本みたいな街に住む

前回書いた通り、「絶対住まない」と思っていたホーチミンのタワマンに住んでいる。
タワマンの名前は、ビンホームセントラルパーク。

画像1


「ビンホーム」といえば、ベトナムの最大手ディベロッパー・ビングループが作った、巨大マンション群、というかもはや街。
ホーチミンに赴任してきた駐在員がまず会社にあてがわれる、ザ・定番マンションの一つ。
セキュリティバッチリ、英語通じる、スーパー・病院・学校まで敷地内に完備。
コンクリートで覆われた地面、穴が空いてない道路、いつも待機しているタクシー。屋台じゃなくて、コンビニとチェーンのレストランが軒を連ねる。
便利で清潔で快適、まるで日本を切り取って持ってきたような場所。

画像2

3年前、私は一人でホーチミンに飛び、外国人のほとんど住まないローカル地区でいきなり暮らすことになった。
そんな私にとって、ビンホームは「今更行く必要の無い、ベトナム初心者の街」だ。
正直、「ビンホームに住んでいます」という人に会うと「まだLv1なんだ」と、見下すような気持ちすらあった。

そのビンホームに、住むことになった。

初めはビングループの鳴り物入りの一大プロジェクトとして衆目を集めたビンホームだったが、最近は、外装の劣化が激しかったり、他にもっといいマンションが出来たりしたため、イメージや値段も下がり、私のような並の収入の外国人なら手が届くようになってきたのだ。

そんな折、かなり良い条件のシェアハウスの話が舞い込んだので、「ホーチミンにいるなら一度はタワマンに住んでみたい」と思っていた私は、乗っかることにした。

マイナスであれプラスであれ意識していると引き寄せてしまうものだ

■■■

ところで、ビンホームは私の「ニュータウンコンプレックス」を大いに刺激する場所である。
私は、都内に通勤するサラリーマン家族が住む郊外の街、いわゆるニュータウンで子供時代を過ごした。
安全に管理され、ノイズや危険を排除された場所で育てられた「もやしっ子」だという自覚が、すごくある。
土に毎日触っていた田舎の子供や、雑多な東京の下町で豊穣なカルチャーをぐんぐん吸収して育った子供に、全然かなわない。
ニュータウンは、全てが均質で、すごく汚ないもの、危ないもの、下品なものも無い。その代わりにうっすらと全体的にダサい。

画像3


ビンホームにいると、安心と嫌悪感がまじった気分に陥る。
コロナで日本に帰れないのに、まるで日本へ帰ってきたような、無理やりセーブポイントを踏まされたような、居心地の良さと悪さ。
正直、楽といえば楽である。
18本あるタワマンの1階には、午前2時まで開いているスーパーと24時間開いているコンビニが入っている。
屋台で通じないベトナム語を使って奮闘したり、値段や商品名が分からず買い物をして大失敗をすることもない。

画像4


また、近いうちには引っ越しだ。
正直、既にベトナムのローカルエリアが恋しい。
目に入るコンクリートジャングルがダサすぎて。既に飽きている。
しかし、ここにいる期間は、
「自分の中の日本を見つめなさい」
「ベトナムにこだわりすぎず、日本語で、ネットで、できることを見つめなさい」
「あなたはベトナムに限らず世界のどこでも住めることが理想なのだから」
というメッセージだと思って、落ち着いていろいろ考えてみようと思っている。

画像5




渋澤怜(@RayShibusawa

▼ ● ▲ ▼ ● ▲

おすすめエッセイ 
ベトナムの話まとめ 
自己紹介 

▼ ● ▲ ▼ ● ▲

スキを押すと、短歌を1首詠みます。 サポートされると4首詠みます。