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猫”だけ”が住む部屋に3時間だけ居候した日のこと

私は毎朝、自分のアパートの屋上に行って瞑想をするのだが。

ある日の朝の屋上での瞑想後、自室に戻ったら、部屋の鍵が壊れてて開かなくなってしまった。

幸い携帯電話を持っていたので、即大家に連絡した。
(昔、浴室の鍵が壊れて閉じ込められて以来、私はどこでもなるべく携帯を持参するようにしている)

大家は隣の家に住んでいるので、即来てくれた。

しかし、大家が持参したスペアキーでもなぜか開かない。

朝7時、パジャマ姿で携帯しか持っておらず、丸腰で廊下に立ってる私を、大家は憐れみ
「鍵屋を呼ぶから、ひとつ下の階の空き部屋で待ってて良いよ」
と言ってくれた。

私の部屋のちょうど真下にあるその部屋は、厳密には空き部屋ではない。

今は猫だけが住んでいる。

家主は手術中で長期不在にしており、家主の荷物はそのまま残っている。

家主不在の間、大家が毎日部屋に入り、餌をやっている。
なので、大家的には私を部屋に入れても良いと思ったのだろう。
(日本ならアウトな気がするが、私が住んでいるのはベトナムだし、そのへんはルーズだ。)

一個下の部屋の電子キーの暗証番号を教えてもらい、階下の部屋に入る私。

その部屋は、私の部屋の真下だから間取りは完全に同じなのだが、なんと、ベッドが無かった。

ベトナムの部屋は、家具が備え付けなので、ベッドがないということは、わざわざ大家に頼んで撤去してもらったということだ。

「クイーンサイズのベッドをどうやって外に出したんだろう? バラさないと出せないよな? えらい手間だな? 大家、よく承諾したな?」 
と思う隙もなく、足に猛烈まとわりついてくる超可愛い猫。


きっと家主が長期不在で寂しいのだろう、ものの5分でお腹を見せてくるし、30分以上も激しく撫でを要求してくる猫。

私はコロナ後遺症の療養中で、常に具合が悪いので、横になりたいのだが、他人のベッドを使うのは流石に気が引けるので、ベッドが無くてよかった。

しかしこの部屋にはマットレスや布団すらもないけど、家主は普段どうやって寝てるんだ?

……と思いながら、知らない人の部屋で床に寝転がり、他人の猫を撫で続ける私。

30分ほど経って大家に「鍵が開いた!チェックして!」と言われ自室に戻った。

鍵は開いたのだが、チェックで鍵を開けたり閉めたりしてる間に再度壊れてしまい、今度は部屋に携帯を置いたまま再度締め出される。再び階下の猫部屋へ戻る。

今度は、携帯すら無い「精神と時の部屋」状態で他人の部屋に寝転がることになった。

しっかし、自分の部屋の真下にこんなに可愛くて懐っこい猫がいたとは。猫の要求に応え、撫で続ける。

9時ごろには、空腹のまま部屋から締め出された私を憐れみ、大家が牛乳とビスケットを持ってきてくれた。

その時に雑談したのだが、この部屋の家主(=猫の飼い主)は30歳位のベトナム人女性で、子宮の手術で入院中とのこと。

私も去年、子宮筋腫の手術をしているし、年齢も近いので、不思議なシンクロだ。

猫も、私の猫とは模様は全然違うけど顔立ちが非常に似ている。

これで部屋の様子まで似ていたら「ベトナム版の私? 一階下のレイヤーに住むパラレル私?」と思うところ……だが、残念ながら部屋はベトナム人らしく物が多くて整理整頓がなってない、ぐちゃぐちゃの部屋だった(私は断捨離魔で、部屋はいつも片付いている)。

大家が去り、引き続き猫を撫でながら他人の部屋の床に横たわる私。

鍵屋が来て私の部屋を開けてくれたのは10時だった。

つまり3時間も経っていたのだが、猫のおかげであっという間だった。もし携帯を持っていたとしても触る暇はなかっただろう。

ベッドというエッセンシャルな家具が無くて、中央がぽっかり空いている、しかし服とか細々したものは多くてクローゼットから溢れてる、異様な部屋だった。

そこに猫だけが住んでいる。

もうちょっと滞在してみたい気もしたが、猫のうんこ臭すぎた。猫はかわいいが、あと数時間いたら鼻がもげていた。

私は「『うんこ味のカレーかカレー味のうんこか』っていう問題があるけど、味がどうこうより要は『匂い』次第だな、うんこの匂いはマジで耐えられないな。」と思ったのだった。


おしまい。

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