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【ライヴ動画&原稿】2017年に書き散らかされた聖書の断片



【原稿】

わたしの化粧がどんどん濃くなるのはあなたが私を待たせすぎているからだ。


バレンタインデーの返事なんか、ホワイトデーまで待てないよ。
あの時返事がもらえなかったから、その日告ってきた別な男の子と付き合うことにした。今日で一か月記念。
女の子は待つと老けるんだよ。あ、君、昨日床屋いったんだ。ウケるね。あわれだね。


ほとんどの人間は読んでいないニュースをリツイートしている。
ほとんどの人間はよく知らない人間を好きか嫌いになっている。


Facebookで知った、呼ばれなかった結婚式、一番華やかなドレスを着た子に自分の名前をタグ付けして、失踪することにした。どこにでも歩いて行けるんだよ、女の子は、ヒールを折って、墓場でも廃墟でも。ない会社で働いて、いない相手と交際中で、そのうち無い結婚式を挙げて、めでたしのうちに、Facebookの中だけの存在になろうね。


おめでとう、もし何事もなかったとしたら。
おめでとう、もし何事があったとしたら。


好きな人が日替わりなのは人生にたいして誠実な証拠じゃないですか。小説家の嶽本野ばらは、毎日カレーしか食べないらしい、としたら、カレーを愛しているのか、憎んでいるのか。煮込んでいるのか。愛せる見込みです。



神様に聞かれました、「あの人のどこが好き?」と。
「やさしいところ」「あとは」
「明るいところ」「あとは」
「おいしそうに食べるところ」「あとは」
「大人なところ」「あとは」
「お金持ってるところ」……
神様に促されて、がんばって108個答えました。それは、私の頭の中の彼に、一個一個銃弾を撃ち込むような作業でした。全て終わった後、神様は108個の穴が空いた彼と、108個の穴を連れてきて聞きました。あなたが本当に好きなのはどっち?


大人が寄ってたかって、あの少年の口を割ろうとした。
「好きな食べ物は?」「好きなゲームは?」「好きなスポーツは?」「あめたべる?」
少年の答えは「ない」「ない」「いらない」
そうだよね、好きってそんなに簡単に見せるもんじゃないね。
そんなこと聞いて分かった気になられてもね。


「君のそういうところが好き」と言われるたび、ちょっと死ぬ私。
そういうところを釘止めされて、標本にされて、ちょっと死ぬ私。

解説をつけすぎた詩集は死ぬよ。
神様が書き損ねた一行目が、どこにもかしこにも無数に散らばってるんだ。
私たちは永遠に書きかけの本。脚注ばかりが長くつき続ける、いつまでも終わらない本。


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チャックさんに「みんなに広く受け入れられそうな、恋愛ぽいやつ書いて」「100万回生きたねこみたいなの」って頼まれたけど、全然出来なくて、愛の不可能性を歌う聖書みたいなのの断片が出来た。ラストから2行目は、朋友の詩人、もり(twitter: @morinanigashi)のパクリ。


https://www.youtube.com/watch?v=PhukohfII8U&feature=youtu.be

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