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もう1人と雨の話

 僕が妻に恋をした日もこんなどしゃ降りだった。

 あの日はたまたま僕の当時の家で、何人かでパーティーをしてた。そこに妻もいた。

 そろそろお開きに、ってことで、何人かは帰ったのだけど、しばらくして妻だけ戻ってきた。

 「雨がやみそうにないんです。」

 どう考えてもこんなに急にどしゃ降りになるのは不自然だったし、それをさも当然のように言ってきた妻にも違和感を覚えた。

 でも彼女の髪から滴る雨の滴と、雨に打たれて寒いのか、少し赤くなった頬を見たらそんなことどうでもよくなった。

 とりあえずタオルを渡し、シャワーを浴びさせる。服を乾かしながら、彼女のことを考えていた。

 もし、雨に降られたのが偶然だったとしても、僕のもとへ戻ってくる口実のために、あんなに濡れてきたのか。

 何てかわいい、何ていとおしい。

 そう思ってしまったら、もう意識せずにはいられなかった。

 シャワーを浴び終えた彼女にドライヤーを渡し、こう言う。

 「この雨、きっと、止まないだろう。」

 以上、らずちょこでした。

 ※この物語はフィクションです。

 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。

 ではまた次回。

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