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食を通して皆を元気に!作業療法士からきくらげ栽培への挑戦

今回は作業療法士を経験後、球磨郡水上村で主にきくらげを栽培されている西本美帆さんに就農の経緯やきくらげ栽培へのこだわり、活動のコンセプトなどを伺いました。(2023年12月)


西本美帆さんプロフィール

作業療法士として16年間病院に勤務。出産を機に就農し農業を始めて6年。
球磨郡水上村で、きくらげを中心に農作物の栽培・生産から販売まで幅広く手がける。球磨三日月農園代表、AGRIHAND代表。野菜スペシャリスト、食育アドバイザーの有資格。

作業療法士からきくらげ農家へ

作業療法士をしていた頃は、主に、脳卒中後遺症の高齢患者さんに対してのリハビリテーションを行っていました。リハビリを通して最終的には生活ができるように支援をするものの、片麻痺など後遺症が残り、寝たきりや車椅子生活を余儀なくされ施設に入所されるケースが多いです。脳卒中は予防が大事でその観点から、普段の運動や食生活の重要性を感じ、食に対して興味を持ちました。また、子供が生まれたこともきっかけで、子供には体によい、土地のものや旬のものを食べさせたいという思いもありました。加えて、近隣の状況を見ると農業の後継者不足の課題も感じており何か役に立ちたいと考え就農に至りました。

きくらげ栽培への挑戦とこだわり

きくらげは国産のシェアが数%程度で海外産が多いのですが、国産の中では人吉球磨地域は比較的シェアが高い地域です。栽培は何もない状態でゼロからスタートしました。

きくらげは菌床栽培ですので、栄養や菌は菌床の中に入っており、その菌床は業者から仕入れています。搬入後、切込みを入れ、水を与えること約3週間で美味しいきくらげを収穫することができます。湿度や温度で厚みが変わるため、プリプリなきくらげを作るために、水分量の調整が必要で片時も離れることができず、初めは難しく感じました。また、農薬は使用しないため、虫が発生し駆除にも手間がかかります。水上は球磨川の源流なので水質が良く、普段は気付きにくいですが都会から来た人は水が非常に美味しいと言ってくれます。そのような良質な水の存在もきくらげ栽培に良い影響を与えてくれています。

きくらげは廃棄やロスが出にくい点も良いと感じています。私の両親も農家でしたが、規格外作物の廃棄やロスが沢山出ることに私自身も驚いていました。実際にきくらげ栽培をする中で、毎日地道にお世話をしていると愛着や愛情が湧いてきて、作物も生きているのだと感じることがあります。一つの命として少しでも無駄にしたくない、そんな思いがあるので、廃棄やロスを出さないことを重要視していますし、一つの命として真心を込めたきくらげへの向き合い方、栽培を意識しています。

お客様へ食べ方の提案や価値の説明を大事にしたい

近隣の物産館で販売していますが、営業、マーケティングから個装や在庫管理までひとりで行っているため時間はかかりますが、店頭でお客様に「美味しかった」と言われることもあり、それを励みに続けています。

また、お客様からきくらげの食べ方を教えてほしいと言われることが多く、乾物の使用方法や食事メニューへの取り入れ方の説明が必要だと感じています。きくらげはビタミンD、食物繊維が豊富で体に良いきのこですが、忙しい現代人にむけて乾物を戻す手間を省き、手軽に食べて頂けるよう「食べるキクラゲ」を開発しました。今後もマルシェやその他お客様との接点、コミュニケーションを通して、乾物の使用方法やレシピを普及していきたいと思います。

食を通じて皆を元気に!

農家としてどうしたら美味しくできるのかを考えることは前提ですが、その上で、一番考えたい、大事にしたいのは、どうしたら皆を元気にできるかと言うことです。マルシェなどで一般の消費者への説明や提案などコミュニケーションを通して皆を元気にし、自分自身もよりやりがいを感じ楽しく元気に活動できればと思いますし、そのような活動を通して、農家のイメージを変えることで農家の後継者不足、人材不足の課題解決の一助にもなればと考えています。

きくらげ栽培へのこだわりや活動のコンセプトなど農家の魅力を再発見できた取材でした。人吉球磨・農業未来プロジェクトでは引き続き地域の若手農家さんの取材を続けていきます。次回の取材記事もお楽しみに!


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