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若い世代や海外に向けてもお茶の魅力を届けたい!お茶づくりに対しての思い

今回は、あさぎり町で主にお茶を栽培されている小出大輔さんにお茶の販路やお茶への思いなどを伺いました。(2024年2月)


小出大輔さんプロフィール

工業高校を卒業後、お茶の本場静岡で5年間研修。地元に戻りお茶農家として就農
球磨郡あさぎり町上地区でお茶を中心にミシマサイコなどの栽培
若手お茶生産者団体・球磨ティーファーマーズにも所属

お茶との出会い、お茶を通した仲間との出会い

実家のお茶農家を子供の頃から継いで欲しいと親から言われていました。しかし、中学や高校の頃は自動車など機械が好きで、工業高校に進学し勉強をしていました。ある時、ふとお茶について調べてみると、とても面白く感じ、お茶のことをもっと知りたいという気持ちになり、その後本格的に農家をやってみたいという気持ちに。父の勧めもあって、お茶の本場・静岡で5年間、お茶の専門学校やお茶の問屋で学ぶことを決めました。研修期間中は、同期約20人と共にお茶の基礎的な知識や栽培技術を学びました。お茶の勉強ができたことはもちろん良い経験でしたが、一番良かったと思うことは、一緒に学んだ同期や先輩たちとの出会いです。静岡での研修を終えた今でも、そこで出会った仲間たちとは頻繁に連絡を取り合い、お互いの近況を報告し合っています。お茶に関して悩んだ時や困った時に話し合える環境があり、人とのつながりができたことが、お茶農家としての今の自分に活きています。

様々なお茶の販路

収穫したお茶の販路は大きく分けて3つあります。一つ目はJA(農業協同組合)さん経由での飲料メーカーへの販売です。この販路はお茶の単価が固定されるため、市場の変化による価格の変更の影響を受けにくくなっています。

そして二つ目はJAさん経由でのお茶屋さんへの販売です。お茶の収穫時期に入札会が開催されますのでそこに出品しています。入札場には、色々な地域のJAさんからの出品やお茶屋さんが集まって交渉を行い、それに応じてお茶の値段が決まります。この販路は、価格が予測しづらく、自分たちが予想した価格で売れるとは限らないですが、JAさんや地元でお世話になっているお茶屋さんと、事前にコミュニケーションしておくことで、予想通りの価格で買ってもらえることもあります。
三つめは直接販売です。地元のスーパーや物産館に向けて販売していますが、地元のスーパー向けでは、お茶の価格が高くはない現状があります。地域の若手お茶農家同士で協力し、お茶のこだわりや価値を理解してもらい、お茶の魅力を上げるための活動もしています。

お茶への思い

ここ数年は肥料の価格高騰や売価の下落等の外部環境があり、お茶は経営面では厳しいものがあります。そのため、新たな販路開拓を模索しています。現状他の作物の方が経営面・収支は良いのですが、自分としては、お茶農家としてやっていきたいという気持ちが強いです。他の作物も栽培しつつ、その間色々チャレンジしながら、最終的には、お茶の収益を上げていきたいと考えています。経営的にはよくない面もありますが、お茶への思いが一倍強く、最終的には、お茶だけでやっていきたいです。

また「球磨ティーファーマーズ」という球磨地域の若手お茶生産者で結成された団体にも所属していて、農園への研修訪問や試飲会などの活動を行なっています。以前、若いお客さんやファンが多いお茶農家が運営するカフェへ研修で行く機会があり、栽培方法や販売方法など聞くことができて、非常に勉強になりました。今年は県内の農園へ研修に行くなどの活動をしており、数年後はまた試飲会のイベントも開催していきたいです。

様々な種類のお茶に挑戦されている農家の方が多くいますが、お茶農家の戦略はやや似通っている点が多いため、差別化を図るためには、自分のお茶のファンを作ることが重要だという話を聞いたことがあります。一度ファンになった人が、自分の他の商品を買ってくれたり、友達におすすめしてくれたりすることで、ファンが増えていき、良いサイクルを作り出すことができます。自分のお茶のファンが増えていくような施策を打ち出していきたいです。

農家は、自分でやりたいことを決められるところも魅力だと思います。
私自身も現在やりたいことをやりやすい環境でできているので、もちろん失敗のリスクはありますが、いろんなことに挑戦していきたいです。

今後の挑戦

現状、シニアの方や本当にお茶好きの人以外は、かつて程急須のお茶を飲まなくなってきている傾向があります。若い世代の方にも買っていただけるように、紅茶やフレーバーティーなどに力を入れていきたいです。またお茶だけに限らず、そのフレーバーティーに入れる柑橘類なども栽培していきたいと計画しています。

また、外国人にとって、急須で淹れたお茶は、日本の独特な文化と捉え、とても人気があります。特に抹茶は、アメリカをはじめとする海外市場で非常に人気があり、輸出のチャンスが広がっています。海外も視野に入れて、お茶だけでなく、抹茶を含む様々な茶製品に挑戦したいです。

そのためにも有機JAS(※)の認証取得を目指しています。有機JASは、海外市場での感触が良いようで、今後は、慣行栽培(※)と有機栽培(※)を並行してやっていきたいです。


有機JAS制度: 農薬や化学肥料や農薬を使用しない栽培方法でできた食品であることを証明する制度
慣行栽培: 農薬や化学肥料を使用する従来型の栽培方法
有機栽培: 農薬や化学肥料や農薬を使用しない栽培方法

お茶農家さんの販売戦略やお茶への思いを知ることができた取材でした。
人吉球磨・農業未来プロジェクトでは引き続き地域の若手農家さんの取材を続けていきます。次回の取材記事もお楽しみに!

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