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歴史ある五木村のお茶を守りたい!五木村から海外も視野に挑戦

今回は、五木村のお茶農家である松井さんに、村の歴史や魅力、五木茶に対する思いや今後の展望について伺いました。(2023年12月)


松井祐起さんプロフィール

熊本県球磨郡五木村のお茶農家。南稜高校を卒業後、五木村で家業を継ぎ就農し約20年。現在、五木村唯一のお茶専業農家としてECサイトなどで様々な種類の五木茶を販売。趣味は、中国・台湾・インドなど海外のお茶を飲むこと

五木茶の歴史と五木村の魅力

文献によると江戸時代の頃にはすでに五木村でお茶を栽培していたようです。球磨地域で採れる球磨茶はかつて琉球に輸出していた過去があり、この地域では、お茶の栽培が昔から盛んに行われています。そこから昭和50年頃をピークに五木村内でも10数件のお茶農園がありました。しかし現在では、高齢化やダムの移転問題などで人口が減り、現在工場を持ち、専業でお茶を作っているのは、ここだけとなっているのが現状です。生産者がいないのでうちがなくなると五木茶が衰退してしまうと考えています。五木村のお茶を無くしてはいけないという思いが強く、それをやりがいに、お茶農家を続けるモチベーションになっています。
五木村の魅力はやはり自然だと思います。自然に囲まれていて、川は綺麗で、球磨川の支流である川辺川の水質は日本一と言われています。人口は少なく、同級生も十数人程度でしたが、少ないからこそ人のつながりが深いのも特徴です。五木村に住む一人一人が、今後の五木村を良くするためにどうすればいいか真剣に考えて、同世代が団結しているところも五木村の魅力の一つだと思います。

東京など県外向けやECサイトを活用し販売

PR活動を積極的に行い、東京など県外向けに高級茶の販売を目指しています。お茶は関東圏と関西圏で好みが異なっています。関東圏は香りよりも味を求めて、関西圏では、さっぱりした風味のお茶が好まれる傾向があるようです。関西圏のその地域に適したお茶を作っていたからか、現在は関西圏のお客様がメインとなっています。

また土地柄的に農地拡大をすることが難しいため、その代わり収穫率、取れ高の高い品種の栽培を行うなどの工夫をしています。例えば、「やぶきた」と言う品種が50キロ取れるなら、違う品種を植えたらば80キロ取れるなど、品種によって収量に大きな差が出ます。色々な品種を試験的に植えることで収量もそうですが次の展開に幅出したいと考えています。

その他、ECサイトにも力を入れています。以前から個人販売は行っていたのですが、ECサイトやホームページを地元の企業にリニューアルしてもらい、写真やサイトの作りなどしっかり丁寧に作ってもらったことも売り上げに繋がっていると思います。

若い世代に向けてのマーケティング戦略を考える

今は主に父の代から懇意にしている個人のお客様から購入いただいているのですが、やはり従来の顧客層は年々減少傾向してきているのが現状です。そのためこれからは、どうやって若い世代の方々に買っていただけるかも重要になってくると考えています。茶業界全体が不景気で、どうやって収益を上げていこうかと考えていた時に、これまでの緑茶以外のお茶を作ろうと目をつけたのが、萎凋香(いちょうか)緑茶(※)というお茶です。ペットボトルで飲むお茶は飲まれますが、急須で入れて飲むリーフ茶はなかなか若い世代は飲まないので、新しい種類のお茶の開発・生産にも力を入れることで、アピールに繋げたいと考えています。

 ※萎凋香緑茶・・・花や果実を思わせるような甘い香りを持つ緑茶

また、カフェへの展開も始めていて、現在2~3件のカフェにお茶を出しています。お茶に合ったお菓子作りにも現在力を入れており、以前は、緑茶に合ったお菓子などを作っていたのですが、今は業界のトレンドも踏まえて、紅茶に合う焼き菓子やシフォンケーキなども販売しています。

五木村から海外へ、販路拡大・輸出も視野に

今後は、海外への販路拡大も重要かなと考えています。抹茶が世界では最も人気で、近くでは鹿児島県などが有機JA認証の取得を促進しながら海外展開に力を入れています。また、有機JAS認証は取得していないものの、元々認証が取れるような栽培方法をうちではしていましたので、取ることは難しくありません。今後取得しブランディング等に活用することも考えて行きたいと思います。

五木村の歴史やお茶の販売戦略などをお聞きして村や農家の魅力を再発見できた取材でした。人吉球磨・農業未来プロジェクトでは引き続き地域の若手農家さんの取材を続けていきます。次回の取材記事もお楽しみに!


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