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かつて14歳だった大人へ

営業兼スーパバイザーの石川です。
今回選んだ本は、瀧本哲史さんの「ミライの授業」です。

ご存じの方も多いと思われますが、瀧本さんは、日本のエンジェル投資家と呼ばれる経営コンサルタントを本職にされていらした方です。意に反して有名になられたのは、子供の教育に、ディベートという切り口から携わり、未来を子供に託す活動をされておられたからでした。ディベートは、仮説・検証・議論を行う訓練になる方法です。仕事にも活きますが、そもそもどうやって生きていくか。先行き不安な未来の切り拓き方を子供たちに教えてくれることで、有名になられたのが、『武器としての決断思考』『僕は君たちに武器を配りたい』の2冊の出版でした。説明がすべて過去形なのは、とても残念なことに、今年の8月にご逝去されたからです。

この「ミライの授業」は、亡くなる前に出版された最後の本とのこと。14歳の中学生に向けた本ではありますが、かつて14歳だった皆さんにも、と書かれており、手に取りました。瀧本さんのことを検索すると、聡明さ以外にも、コンサルという、ばっさばっさ切っていくイメージとは異なり、とてもポジティブで温かい人という言葉で、ご本人を紹介される文章をよく目にします。その人となり、をこの本からも感じる一冊です。

本書は、これから10~20年の間に働く人の約半分が、ロボットに仕事を奪われかねないという試算がでている世の中に、社会人として成長する子供たちがどのようにして太刀打ちしていくことができるのか、そんなヒントを、5つの法則として、過去の偉人の具体例から、学ぶ作りになっています。

未来をつくる5つの法則
法則1 世界を変える旅は「違和感」からはじまる
法則2 冒険には「地図」が必要だ
法則3 一行の「ルール」が世界を変える
法則4 すべての冒険には「影の主役」がいる
法則5 ミライは「逆風」の向こうにある

法則1には、疑う力が必要です。人に対してではなく、コトに対して疑う力。疑いもせず、がんがん課題解決をしていくだけであれば、コンピューターの方が正確に、しかもスピードも速いので、求められることは、発見力です。紹介された偉人の中で、最も意外だったのは、看護婦で有名なナイチンゲールの話でした。多くの人を救ったのは、彼女の志や勇気ももちろんですが、実は当時戦争の兵士は、戦闘で亡くなるよりも、劣悪な環境の中での感染症によって30倍も人が亡くなっているという事実を見つけ、周囲を納得させるだけの”統計学”を用いて、しかも、わかりやすいように可視化させ説明したことで援助を受けたそうです。
法則2は、まさに、過去に誰も知らない空白の領域を探そう、冒険してみようというコロンブスの話から始まり、ビル・ゲイツも登場します。探すには仮説が必要だし、しかも他の誰もが立てない場所で仮説を立てること。そして柔軟に社会や状況の変化に応じて対応しないと、失敗するよという話です。電気の発明で有名なエジソンが、まさかの失敗例として取り上げられています。
法則3の章は、世界に通用するルールを作ったことで世の中が変わった話がいくつも紹介されています。柔道がなぜオリンピック種目になるほど世界に広まったのか、その嘉納治五郎の話。日本国憲法に、当時どの国よりも先進的に男女平等の権利を採用することができたのか奇跡とも言える、ベアテ・シロタ・ゴードンという一人の女性の存在の話、ファッションを通じて理想とする社会を実現させたココ・シャネルの話。どれも興味深いものばかりでした。
法則4では、自分一人では不可能なことでも、誰かと補い合えば達成できる。そんなポジティブな話をしてくれています。伝える力や、協力者を得られず失敗した例としてあげられていたのが遺伝の法則のメンデル。要は研究者として優れていたが、周りに理解してもらえるだけのコミュニケーション能力が足りず、失敗したという話で、現在にもよくありそうな話でした。自分のことをまずは知ること。そして、足りない部分を補ってくれる協力者を見つけよう。過去の偉人にも立役者がいるんだよ、という話です。
法則5は、何か進行しようとしても、思うようにことが進められず、いろんなことを言ってくる人がいて、逆風があるという事実を伝えています。そんな逆風にも立ち向かった”新人”の話を紹介され、緒方貞子さんも、そのおひとりでした。しかも新人として扱われたのが御年60歳の時。驚きますよね。

こども向けの本です。だからか、とても前向きになれる本です。ですが、冒頭にも記載しましたが、かつて14歳だった大人向けにもなっています。この14歳の読者たちと同じ社会で、ネガな存在でなく、同じ未来を変える大人としていられるように、自分に何ができるのか、改めて考えるきっかけをもらえるのではと思いました。
最後に瀧本氏のこの本の締めくくりの文章を紹介させていただこうと思います。

~かつて14歳だった大人たちには、知識がある。経験がある。もう一度人生を選びなおすだけの、時間も残されている。・・・・・、60歳を過ぎて国際問題の最前線に身を置いた緒方貞子さんを、思い出してほしい。

亡くなられた方からの言葉だから、より一層響くものがありますよね。
瀧本さん、そして緒方さん。素晴らしい方々を失ったのだなと、改めて感じます。ご冥福をお祈りいたします。