今日の心に響いた格言、名言、一節

日本の将来を真剣に考えて投票する人間が果たしてどれだけいる? (民王 池井戸潤)

たしかにいま、日本中がどうも子供じみてるような気がする。政治家に女がいたらけしからんとなり、増税だといえばとんでもないとなる。
一方で、各世帯に金をばらまくとか、高速道路を安くするとかはどこにもない。あるのは要求だけだ。この日本に、日本の将来を真剣に考えて投票する人間が果たしてどれだけいる?

感想

衆院選と最高裁の国民審査が近い今、タイムリーだったのでピックアップ。
これまでの人生で真面目に投票することはあっただろうか?私自身振り返ってみると、なんとなく勘で投票するかそもそも投票に行かないということばかり。立候補者が掲げているマニフェストを見たこともほとんどない。
メディアや新聞の流すニュースや情報には、どうしてもバイアスがかかっている。それが政治関連であれば尚のこと顕著だ。平等ではない。
民王のいうスキャンダルや、”けしからん”というニュースばかりが目立って取り上げられるのも目にする。
投票という行為は、国民に平等に与えられた意思表示する権利だ。せっかく与えられた意思表示の機会であれば、ぼんやりとイメージで選ぶだけでは勿体ない。一度じっくり考えてみて、実現して欲しいことに対して一票入れるのもいいかもしれない。

既得権益も守りたい、か (民王~シベリアの陰謀)

この国難に、ウィルス感染をなんとか防ごうという志はないんですか。
面倒なことはしたくない、前例も覆したくない、既得権益も守りたい、か。

感想

作者の心の叫びが混じってるかもしれない本一節。
劇中では、役人や医療機関に向けられた言葉だったが、私はこの時自身が勤めていた会社を思い出していた。
緊急事態宣言発令をはじめ、テレワークや時差出勤を推奨されていた中、前社は社員の感染防止に対しどこまでも二の足を踏んだ。社員がそもそも少ないことや、テレワークする環境が整っていないことも理由としてあったかもしれない。だが根底には、「面倒はしたくない」「前例がない」「利益が減るのを避けたい(既得権益も守りたい)」という本音があったように思える。結局、社員に数名感染者が発生して業務に支障が出ていたのだから、その分の利益は目減りしたことになる。

大切なのは、生きようとする気持ち(民王~シベリアの陰謀)

人にはそれぞれ、生まれ持った運がある。重篤な病気のとき、その人がどうなるか医者にもわからない。運が良ければ還ってくる。それを信じるしかないんだよ。そしてもうひとつ大切なのは、生きようとする気持ちだと思う。

このウィルスと戦って、なんとしても生きたい。そう思えるかどうか。だから希望を捨てないで生きろって、その友達にいいなさい。一緒に生きようって。

感想

実は本小説を読む前、私は今年の夏頃にコロナウィルス陽性となってしまい、半月ほど自宅で寝込んでいた。だから、民王~シベリア陰謀編~のウィルス騒動は、より没入して読んでいた。
寝込んでいた際は、ひとり暮らしであったため身近な人に移すといった事はなかったが、下がらない熱や止まらない咳と孤独に格闘する羽目になった。日がたつにつれ段々と消えていく嗅覚と味覚、解熱剤を飲んでも中々下がらない高熱、どこにも出かけられず食料の確保もできないもどかしさ。
なにより、人と会えないのが辛かった。
こんなに苦しいのであれば、打ち負けてしまう人が出てもおかしくはないと思った。実際、私も重症化の一歩手前までいったので、下がらない高熱で朦朧としている時は死を意識していた。正直いって仕事もつまらない、自分ひとりが欠けても会社は困らない、給料だって上がらない、復帰してもつらい人生が待っている……と、どこまでも後ろ向きなことばかり考えていた。
”もういつ死んでもいいや”とすら考えた。体が辛い時期が続くと、思考も黒く染まってくるものだ。

ただ、そんな中でも心配してメッセージをくれる人がいた。
家族であり、恋人であり、親しい友人だ。
彼らと言葉を交わしたり、励まされているうちに「まだ死ねないな…」と心の中で改めて思い直したのだ。治して元気な姿を見せようと。そして、20日弱ほどで復帰したーーー

たしかにウィルス感染症が重症化するかどうかというのは、運によるものかもしれない。でもなにより大事なのは、作中にかかれているように生きようとする意志だ。それを私は、民王~シベリア陰謀編~と自身の闘病生活によって教えてもらった。


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