卒業

卒業した。卒業できた。私、生きてた。死ぬ気で勉強して入った憧れの高校は、蓋を開けてみればこれっぽっちも輝いてなかった。寝る間も惜しんで勉強してたあの頃の私にこの事実を告げたら、あの頃の私はどうするんだろう。きっと信じないんだろうな。自分に都合が悪いことなんて信じずに、キラキラした毎日を夢見て勉強するんだろうな。
ゴミみたいな高校生活、苦しくて辛くて、何度も逃げようとしたし、実際逃げたこともあった。それでも私、辞めはしなかったんだよ。学校も、生きることも。そんなの当たり前だって、みんなも同じように頑張ってるんだって、そんな正論今はいらない。誰も褒めてくれないから、今日だけは私が私を褒めてあげるの。私の苦しみなんて、誰にも分からないし、私にだって誰かの苦しみは分からない。だけど、分からないかもしれないけれど、知ろうとすることならできた。人のこと、信用出来なくなった時もあったけれど、人と人との繋がりはやっぱりあったかいね。私のことなんて何も分からないくせに、知ろうとしてくれた友達が何度も「大丈夫」と言ってくれた。卑屈な私は心の中でその言葉を鼻で笑ったけれど、その言葉がなかったら乗り越えられなかった夜は間違いなくあった。しょうもない綺麗事に救われた夜は、間違いなくあったよ。
昔、「過去は変えられる」と私に言った人がいた。私には全然意味が分からなかった。過去はもう、どう頑張ったって動きようがないから。過去は変えられるなんてそれこそ綺麗事で、自分の間違いを、失敗を、なかったことにするなんてずるいと思った。弱いと思った。だけど、今なら分かる気がする。その言葉の本質が、やっと分かった気がする。ゴミみたいな高校生活はただの苦痛で、黒歴史みたいなもので、全部消し去りたいと思ってた。でも、でも今なら、あの日々は必要だったと言えるよ。今までの間違いや失敗をなかったことにするんじゃなくて、そこから学んで成長すればそれは糧になる。間違ったまま、失敗したまま放っておけば、それは自分の枷になるだけ。私、ちゃんと糧にできたよ。悔しくて仕方なくて、私ばかりが不幸なように感じて、必死にもがいた。傍から見れば無様だったかもしれないけれど、それでもいい。私が今ここにいて、曇りなく笑えているんだから、それでいいんだよ。あの経験があったから、紡ぐことの出来る言葉がある。私は、私にしか表現できない感情がこの世には沢山あると思ってる。自信過剰が丁度いい時だってあるんだよ。盲信するわけじゃないけど、自分のことは真っ直ぐ信じてあげたい。だから私、振り返ると反省だらけだけど、後悔はしてないよ。あの時間違えなければ、あの時失敗しなければ、今とは違った景色が見えていたんだと思う。だけど私、間違いだらけで失敗だらけの自分にしか見られないこの景色が好きなんだ。大丈夫、私が誰かになれないのと同じように、誰も私にはなれないから。悩みながらも進み続けて、最後に「私でよかった」って思えたらそれはもう私の勝ちでしょ?
私に「強くなったね」と言った人がいたけれど、また別の人は私に「弱くなったね」と言った。そんなもんなんだよ。見る場所を変えれば、同じものでも全くの別物に見える。見方次第で、どうにだってできるんだよ。悪い方に考え出したら、どこまでだって悪い方に考えられてしまうんだから、その逆だってできるってことでしょ。なんで自分の不幸ばっかり探してたんだろうね。当時は気付けなかった処世術に、だんだん気付けるようになってきた。これも私の成長かな。嫌いな人もいたし、もちろん好きな人もいた。人と人に限らない全ての出会いが、私を成長させてくれたんだと思う。だからさ、結局「出会えてよかった」の積み重ねみたいな毎日だったのかもって、思うんだよ。お互い取捨選択を繰り返して、私の隣には数人しか残らなかったけれど、その数人が素敵な人ばかりでさ。人は傷付いた分だけ強くなれるし優しくなれるから、優しいあの人も、強いあの子も、きっと沢山傷付いてきたんだね。消えない傷は、勲章だよ。私が、あなたが、頑張った証だよ。世の中は決して甘くなんてないから、ここだけはたっくさんの甘さで溢れさせていたい。たまには、自分のこと褒めてあげてもいいんだね。それが分かってから私は楽になった。今でも正直、思い出すと目を逸らしたくなる過去はある。だけどさ、忘れたくない過去ほど消えてしまいやすくて、忘れたい過去ほど消えてくれないんだから、私たちが過去に反省点ばかり見つけてしまうのは当たり前のことだと思うんだよ。これも綺麗事かもしれないけれど、この言葉に私自身が救われる夜はきっといつか訪れるはず。今の私が、いつかの私の枷にならないように、糧になれるように。沢山の言葉をここに残しておきたい。こんな私だからこそ、紡ぐことの出来る言葉を、残しておきたいんだ。
大きな期待を抱いて入学したあの日も、テストで悪い点を取ったあの日も、部活を辞めてやろうと思ったあの日も、ひとりでお弁当を食べたあの日も、独りぼっちだと思ったあの日も、死のうと思ったあの日も、誰もいない教室を探して勉強したあの日も、人生を変える出会いをしたあの日も、独りじゃないことに気付いたあの日も、くだらない話で笑い合ったあの日も、大切な友達と共に卒業した今日も。全部全部、他でもない私が確実に生きてきたんだね。私の後ろに、ちゃんと道はできてたんだね。

みんなも、私も、卒業おめでとう。


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