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【RS07】クラシカルなポップスを奏でるコンポーザーピアニスト・小池花奈

作編曲家として、ピアノ奏者として、多方面で活躍している小池花奈(こいけ・かな)。彼女の音楽遍歴や、20年1月25日に渋谷LOFT HEAVENにて予定されているソロライブのコンセプトなどを訊いた。

ピアノからエレクトーンへ、作編曲家から演奏者へ

大阪府出身の小池は、3歳のころにヤマハ音楽教室へ通いはじめた。小学校へ入学してから中学校を卒業するまでの期間、ほとんど外で遊んだ記憶がないという。

「学校で勉強するか、習い事に行くか、家でピアノの練習をしているか、っていう生活でしたね」。

音楽教室ではクラシックの演奏だけでなく、作曲技法も習った。小学校一年生のころから毎年、新曲を作って発表するコンクールに出場していた。

「ただ、私は演奏が本当に苦手で、人前で弾けないんです。発表会の審査でも『曲は良いけど演奏が……』と散々な評価を受けていました」。

同時期、演奏者としてもピアノコンクールに参加し、挫折を味わう。

「やっぱり、コンクールとかには、とても上手な子がいるので。小学生の時点でピアニストは諦めました。でも作曲は好きだったので、作曲家になりたいと思いました」。

演奏する楽器も、ピアノよりエレクトーンを好むようになる。

「ヤマハでピアノを始めると、最初はグループレッスンで、一人一台エレクトーンを割り当てられるんです。ピアノよりエレクトーンの方が、奏者の絶対数が少ないので、開拓の余地がある気がしたんです」。

中学校三年生の時にはジュニアエレクトーンフェスティバル2009全日本大会へ出場。大阪府立夕陽丘高等学校音楽科ピアノ専攻へ進学後も、エレクトーンと作曲を中心に取り組んでいたという。

そんな生い立ちの小池だが、けしてクラシック漬けだったわけではない。家族の影響もあり、MISIAやaikoといった流行のJ-POPアーティストの楽曲や、映画のサウンドトラックなども好んで聴いていた。

高校卒業後は、東京音楽大学作曲指揮専攻作曲(芸術音楽コース)へ進学するために上京。

大学だけにとどまらず、学外のサークル活動に勤しむようになった小池は、そこで運命的な出逢いを果たす。

「各方面から作編曲の仕事を請け負っている先輩がいたんです。彼が忙しくなり、その仕事を手伝うことになりました。それから学内外、企業からも仕事の依頼が来るようになりました」。

依頼の数は徐々に増加。在学中にSony Music Entertainment×JOY Kids' Theater企画ミュージカル公演『赤毛のアン』、いわきアリオス主催『0さいからのコンサート』などをはじめ、多くの室内楽アンサンブルやオーケストラの編曲を担当した。

17年3月に大学を卒業した小池は、そのまま作編曲家としての活動に集中した。しかし、同年9月ごろに心境が変わったという。

「作編曲家を担当したクライアントの演奏会に行くと、なんだか急に、ステージにいる演奏者がとても楽しそうに見えたんです。元々ピアノやエレクトーンを弾いていたこともあって、『やっぱり自分も演奏したい』と思うようになりました」。

だが、どのように演奏活動を始めればいいのか分からなかった。それまでの小池は、他人から頼まれたり、誘われたりするばかりで、自ら動いた経験がほとんどなかったのだ。

ちょうどそのころ、知り合いの音楽家のライブを見に行ったことで、東中野にあるバー&ミュージックスポット『ALT_SPEAKER(オルトスピーカー)』を知る。

「はじめて演奏するなら、こういうお店が良いなと思いました」。ミュージカル系の歌を嗜んでいる友人を誘い、17年12月に初の演奏会を企画した。

その演奏会で手ごたえをつかんだ小池は、インストゥルメンタルバンドを組み、18年2月にも演奏会を行った。さらに、音楽以外の目的もあって、オルトスピーカーでアルバイトを始めたことが転機となる。

「私はライブやコンサートの衣装や靴も好きなんです。自分のライブの衣装を作りたいっていう夢があって、いつかちゃんと服飾の学校で学びたいと思っています。まずはお金を貯めようと、幾つかバイトをしていた時期があるんですが、そのうちの一つにオルトスピーカーさんを選びました」。
(※編集部注:現在、小池さんは同店でのアルバイトはしていません)

同店には、誰でも飛び入りでグランドピアノを弾くことができる『PIANO OPEN』というイベントがある。いわゆるオープンマイクのピアニスト版と呼ぶべきものだ。店主は、同イベントを盛り上げるため、小池にも演奏をするよう伝えた。

「困りましたね。私が作編曲を行っていたのは基本、室内楽アンサンブルかエレクトーン用だったので、ピアノで弾けるオリジナル曲が無かったんです。地元で演奏会を開いたことはあったので、レパートリー自体はゼロではありませんでしたが…」。

最初は戸惑った小池だが、毎週のイベントに半ば強制的に参加させられているうち、「もっと練習しなきゃ恥ずかしいな」「オリジナルのレパートリーを増やさなきゃ」と練習するようになった。

すると18年9月、同店に通っていたイベンターから「自分が企画するブッキングライブに出演しないか?」と誘われた。ソロでのライブは初めてだったが、いい機会だと考え承諾。なんとか40分の持ち時間を弾き終えた。

「40分って長いと思っていたけれど、やってみたら意外とできて。『これを2セットやれば、ソロライブできるやん』と思いました」。

とんとん拍子に話は進み、19年2月、同店にて初のソロライブを開催。19年11月にはエレクトーンも交えた演奏会を開いた。20年1月には、会場を渋谷LOFT HEAVENに移す。

「ソロでちゃんと練習をするようになって、あれほど苦手だったはずのピアノが楽しいと思えてきたんです。エレクトーンは運ぶのも大変だし。もっとピアノで力をつけたいと思っているところです」。

『テーマ』のある音楽を届けたい

初めてブッキングライブに出演した際、小池がピアノで弾くことのできるオリジナル曲は3曲しかなかった。持ち時間の残りは、クラシックを2曲と、秋の童謡のアレンジを演奏したという。

「今もまだ、ピアノ曲のレパートリーは少ないです。合同制作も含めてオリジナルは17曲ありますが、ピアノは9曲。あとはオーケストラや合奏、エレクトーンで作ったものです。増やしていきたいですね」。

小池のオリジナル曲の特徴として、インストゥルメンタルでありながら、一般的なJ-POPのような長さと構成の楽曲が多い点が挙げられる。

「私の音楽を聴いて下さる方は、シンガーソングライター関係者が多いので、いわゆるAメロ・Bメロ・サビという構成の楽曲の方が聴きやすいかなと思っています。長さも、ほとんどの曲は、意識的に5分前後でおさめるようにしています」。

クラシックの基本を踏まえた上で、ポップス的な要素をふんだんに取り入れた小池のオリジナル曲は、クラシカルなポップスと呼ぶに相応しい。

彼女の代表曲は『stella(ステラ)』。イタリア語で『星』を意味するタイトルの通り、夜空に瞬く光が連想されるような美しい曲である。

「ピアノでソロ演奏をするようになってから作った最初の曲です。弾きながらいつの間にか繋がっていたというか、自分でも弾きやすい曲ですね」。

筆者が惹かれる楽曲は『赤龍の舞』だ。彼女の演奏技術に感嘆するとともに、雄大さと力強さを感じる楽曲の展開に心を掴まれる。

「元々、エレクトーンのコンクール用に作った中国風の曲です。原曲には二胡の音などを入れているんですよ。オルトスピーカーのオープンマイクで弾ける曲がなかったので、初めは無理やりピアノ用にアレンジしました」。

小池のレパートリーには、クラシックの有名楽曲やジブリのメドレーといったカバーも含まれる。「18年12月からほぼ毎日、SHOWROOMのライブ配信をしていました。ネタ作りとして、色々とレパートリーを増やしました」。現在は、活動スタイル変更のため、いったん配信活動は止めているという。

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今後の目標を訊くと、「まずはピアノをもっと弾けるようになりたいです」と言う。「幼いころにちゃんと練習してこなかったツケが回っていると感じています。基礎が無いから誤魔化している部分があって」。

最近は、基礎練習に時間を割いている。「幼いころに取り組んだ曲とか、『一回やってできるようになったら終わり』だと思っていました。そうではなくて、どこまでも追求できるものなんだ、って今さら気づきました」。

基礎練習に時間をかけることにより、以前よりも、思うような音が鳴らせるようになったと感じている。「『ちゃんと基礎練してるぞ』と自信もついて、人前で弾くのが楽しくなってきました」。

19年は、東京と大阪あわせて4回のソロライブを行った。来年以降は回数を減らす予定だという。「『ピアノを弾く』ということに慣れてきたので、もっと『テーマ』にこだわっていきたいですね」。

『ショーっぽいライブ』がやりたいと言う小池。「ファッションショーしながらライブをするのもいいなぁ。それぞれの技術がちゃんとつけば、ですけど」。

20年1月25日には、渋谷LOFT HEAVENにてピアノとエレクトーンの両方を使用したソロライブを開催する。タイトルは『Märchen(メルヘン)』だ。

「『Märchen』というテーマに沿って、ピアノもエレクトーンも、オリジナル曲もクラシック曲も選んで演目を構成しています」。

一体どんな世界を見せてくれるのか、非常に楽しみだ。

Text:Momiji

INFORMATION

2020.01.25(Sat) open 18:00 / start 19:00
『Märchen』Piano&Electone Solo Live Vol.2
[会場] 渋谷LOFT HEAVEN
[料金] 一般 ¥2500(+1drink) / 学生 ¥1000(+1drink) 
◎チケット購入はこちら:http://kanakoike.buyshop.jp
◎ライブに関するお問い合わせ:kanakoike115@gmail.com (小池花奈)

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