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『醜聞』黒澤明全作レビュー&イラスト

このバイク二人乗り場面がロードムービー感ありますよね。でも本作はそんなさわやかな始まりなのですが、人間の弱さと再起を描く重厚な作品なのです。
↑三船敏郎さんと山口淑子さんを描きました。

ストーリーはこんな感じ(ネタバレあり)

■画家の青江一郎(三船敏郎)は、オートバイを飛ばし伊豆の山々を描きに来ていた。宿が偶然同じだったので人気声楽家の西條美也子(山口淑子)を後ろに乗せてホテルまで送る。
■たまたま浴衣姿でバルコニーでちょっと談笑、そこを雑誌社「アムール」のカメラマンが隠し撮り、嘘の熱愛記事を書かれてしまう。
■雑誌は飛ぶように売れ、青江は雑誌社を告訴することにした。蛭田と名乗るおっさん弁護士(志村喬)に依頼した。
■蛭田の家を訪ねた青江は、結核で寝たきりの娘(桂木洋子)の素直な性格に感動、蛭田を信用できる人間と考える。
しかし、病気の娘を抱えるも金のない蛭田は10万円の小切手で堀に買収されてしまっていた。
■裁判が始まるも、買収された蛭田は抗弁せず、法曹界の重鎮・片岡博士を弁護人にたてた被告側が圧倒的に有利だった。公判が進むも勝ち目はなかった。
■そんな中、父親の不正を察知し心を痛めていた蛭田の娘が死んだ。呆然自失となる蛭田。最終の公判の日、青江側の敗訴が決定的になる寸前、蛭田は自ら証人台に立ち、10万円の小切手を出して自ら買収されたことを証拠に被告人の不正を告白する。
これが決め手となって青江側の勝利となった。記者団の前で青江は蛭田を想い「僕たちは今、お星様が生まれるのを見たんだ」と語った。


では映画の感想です
人間が屑に転落するけども再起は可能なんだと訴えかける映画です。フランク・キャプラ映画のようなヒューマニズムあふれる良作といえるでしょう。
黒澤さん翌年にドストエフスキー原作の『白痴』を撮ります。純粋で無垢な存在の蛭田の娘は、『白痴』のムイシュキン公爵のようなポジションだといえるかもしれませんが本作の方が明快でわかりやすいですね。それを意識してまず『醜聞』を入門編として見てから大作『白痴』をみるといいかもしれません

黒澤さんは画家を目指していたのは有名な話ですが、ここにでてくる三船敏郎演じる青江はイケメンで正義感にあふれ颯爽とバイクにのるというかなり願望が入っているかもしれませんw

音楽家といい雰囲気になるというのも音楽に並々ならぬ興味を持っている黒澤明の自己投影かな、しかも山口淑子のエキゾチックな美しさ!

雑誌記者によってでっちあげの熱愛報道されてしまうんですが、冷静に考えると冒頭のバイク二人乗りの楽し気な雰囲気、その後のホテルのバルコニーでの会話をみると雑誌記者の目はあながち間違っていないような、、、、どう考えても二人は惹かれあっているように見えますね。美男美女でお似合いですし。

裁判まで起こした割にその後付き合う未来もあり得そう

ではでは

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