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折々のチェスのレシピ(4)

まずはある局面をご覧ください。

白は駒得しているだけでなく、順調に黒のキングを追い詰めています。というふうに見えます。ところがよく見ると、黒のキングをメイトする手筋は当面ありません。白から見て左辺方面に黒のキングはまだまだ逃げ道があります。また、h7にいる自分(白)のビショップはこのままでは動かすことができません(動かしてクイーンを取られてもメイトできるなら動かせますが)。

ということで、実は白は一見すると優位ではありますが(ソフトの評価でも優位ですが)、ここから先、黒のキングを追い詰めていくのことは一筋縄ではいきません。

その理由はいくつかありますが、最も大きいのは、キングサイドにキャスリングした黒に対して、駒をそちらばかりに集めすぎてしまったことです。ここから先、白は右辺遠くに集めてしまった駒を有意義なマスに戻したり、キャスリングするならするとしても、だいぶ手数がかかってしまうでしょう。その間に黒が手を作ることも可能です。ついでに言えば、白はキングがそれほど安全でもありません。

チェスは将棋と異なり、メイトするのに自分の駒を相手のキングの周囲に集める必要は必ずしもありません。もちろんそれでメイトできれば当然そうしますが、遠くからでも効く駒が多いチェスは、駒を集めてメイトしにいくというよりは、遠くから効く筋を作っていく感覚で指していくと詰め筋ができやすいゲームでもあります。

この対局でそれをやったのは黒のほうでした。

黒の各駒は白のキングに対して遠くからしか効いていませんが、白はあと数手でメイトされてしまいます。この上図の詰ませ方(駒の配置のバランスなど)を一つの模範例として覚えておくといいかと思います。ちなみにあと一手早く手番が回って来れば白の勝ちでした。


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