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折々のチェスのレシピ(36)

下の局面までくれば次の一手は比較的容易に思い浮かぶと思います。

第1図

タダで落ちている駒を拾いにいきます。どこにタダで落ちている駒があるのかと訝しく思うかもしれませんが、

取り返されてしまうではないかと思われるかもしれません。たしかに、

取り返されてしまいます。しかしながら、

もっと大きな駒をいただくことができます。この手筋が見えていれば黒はビショップを取り返すことはできないはずです。よってタダで落ちていると表現したわけです。

問題は第1図の直前で上の手が思い浮かぶかということです。こうされると黒はdファイル以外にクイーンを逃すと単に逃げただけになるので、心理的なことも含めて、dファイルのどこかにクイーンを逃しておきたいと考える可能性が高いです。ソフトやAIは別の手を示すかもしれませんが、人間と指す対局ではこの手が一番勝ちに近づく最短のように思います(黒はビショップを当てる手もありますがより形勢を損なうことになります)。

ソフトやAIは最善手を示してくれるので大変ありがたいツールですし、それによって従来の定跡が持っていた瑕が発見できたり、知らなかった手順を教えてくれたり、「チェスのレシピ」を書いている人も重宝していますが、この手は心理的に相手は困るだろうとか、こういう攻撃的なプレイヤーは守りが苦手そうだから事前にここのマスを空けさせておこうとか、そういう機微に触れるような手は普通は推奨してくれません。実践的には後者のような手のほうが勝ちやすかったりするので、AIで理論的な手順を身につけつつ、心理戦も仕掛けられるように実践を積み重ねるのがいいのかもしれません。


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