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ホルモンを考慮したリハビリテーション


今日は、STのリハビリテーションで成果を出すために大切であろうことをやっていきます。

今日のキーワードはホルモンです。
ホルモンと言えば、ドーパミンとかアドレナリンとか聞き馴染みがあるところはこのへんでしょうか。

そのホルモンを考慮してリハビリすることで目の前の患者さんへの解釈や対応の仕方に幅がでて、成果に繋がるのではないかなと考えて本日のテーマをやっていきます。
本日の内容は不足があるかもしれません。あくまでも研究のための情報ではなく臨床で活かすために絞って簡易的に説明する点があることをご容赦ください。
僕自身、3年目の時からこのホルモンを勉強し助けられてきた面があります。
ちょうどシマチョウを好きになったのもこのへんです。

では、さっそくやっていきます。

エンドルフィン

イルカのドルフィンみたいな名前ですね。
イルカとはまったく関係ないエンドルフィンは「笑い」によっても分泌されることが知られています。

エンドルフィンは麻薬として知られるヘロイン(アヘンから作られる)に似た構造をしています。アヘンは痛み止めとして戦時中に使われていたそうです。

笑いによりエンドルフィンが分泌されるため、アヘンと同じように「笑い」により痛みの閾値を上昇させる効果が報告されています。
(Dunbar RI, Baron R, Frangou A, Pearce E, van Leeuwen EJ, Stow J, Partridge G, MacDonald I, Barra V, van Vugt M. :Social laughter is correlated with an elevated pain threshold. Proc Biol Sci;279(1731);1161-1167,2012.)
つまり、痛みに感じにくくなると言い換えられます。

脳血管疾患で腰痛など痛みを訴えやすい患者さんには、徒手的な介入やポジショニングなどももちろん大事ですが、さらに笑顔にさせてエンドルフィンを分泌させる配慮が必要だなと感じています。

また、「笑い」は免疫機能を向上させることも有名です。
日本の報告で、最も古く有名なのが伊丹(先生)らが健常者11人と甲状腺疾患、乳癌、悪性リンパ腫、陳旧性心筋梗塞、糖尿病の8人にグランド花月で漫才や漫談、喜劇をみてもらう実験です。
そこでは、下記のような改善が報告されています。

特にSTの訓練では座位で行うことも多いと思います。
面白味が少ない臨床とこちらが感じる時に腰の痛みを訴えだす患者さんもいます。意識の対象が目の前の課題ではなく、痛みにいったり、ストレスによりエンドルフィンの分泌が少なく痛み閾値が低いのかもしれません。そのほかの原因もありえます。

毎回は正直、難しいですが、できるだけ介入中、笑顔を引き出すためにトークや雰囲気を良くすることも仕事の一環と思います。

また、エンドルフィンにはストレスホルモンであるコルチゾール等の神経伝達物質を減少させると報告されています。
(Yim J. Therapeutic Benefits of Laughter in Mental Health: A Theoretical Review. Tohoku J Exp Med;239(3):243-249,2016.)

入院していればたくさんのストレスに患者さんは、さらされています。入院前よりも圧倒的な臥床時間、思うように身体やことばを扱えないストレス、この先の不安、むかつくスタッフなど、こちらが想像もつかないぐらいのストレス下にあるはずです。
そして、ストレスの厄介なところは、コルチゾールなどのストレスホルモンが前頭前野の機能を低下させます。
つまり、理性など感情のコントロールなど高次な活動を扱う前頭前野が機能低下してしまい、感情的になりやすいなど問題行動が出現しやすくなります。
結果的に、最悪なのは様々なストレスから易怒性など感情的になりやすくなっているにも関わらず、薬がどんどん追加され覚醒も低下しドロンドロンの患者さんが完成してしまうことです。
そうなってしまえば何から対処すればよいか分かりません。
そのため、初期段階でエンドルフィンを分泌させる関わりをしていることは、わずかにでも効果的である可能性があります。ちなみにエンドルフィンは「有酸素運動」によっても分泌されます。感覚的な話になってしまいますが過去に易怒性が凄まじく難渋した小脳性認知情動症候群の患者さんに全職種で一貫して楽しく会話できる環境をつくり有酸素運動を40分間していただき、易怒性の改善に有効であったことを覚えています。

ホスピタルクラウン(クリニッククラウン)

聞いたことありますか?病院や診療所にクラウン(道化師)が来て、患者を笑わせる活動のことです。あの「ジョーカー」の冒頭らへんで主人公アーサーがやっていた活動です。

この活動の先駆者である、パッチ・アダムスさんは現役精神科医です。治療として笑いを取り入れることの重大さに学生時代に気付き、医師になった後も病院を設立し笑いを取り入れていったそうです。映画になっていますので、詳細は映画で確認を。笑いは本当に大事そうです。

日本でもホスピタルクラウンやクリニクラウンの協会があり、患者さんの前で道化師となり様々な方が活動されておられます。

笑顔は先手必勝

今回の「笑い」に関連させてこのトピックを最後にお伝えさせてください。
患者さんの部屋を訪室した際は、特に初見は笑顔で対応することが基本ですが(患者さんの体調が不良な時は異なるかもしれませんが)、そこにめちゃくちゃ重要性を感じます。
表情や感情は伝搬します。
過去の自分は、笑顔でレスポンスをくれる患者さんは楽に対応できましたが、強面でレスポンス低めな方になると対応がぎこちなくなってしまったりしていました。その時、患者さん発信で自分の臨床を左右されていることに気づきました。成果を出すための臨床を考えた時に友好的なコミュニケーションが確実に必要です。
そのためには「自分から笑顔で対応」し、自分でコミュニケーションを操作することが大切と考えます。最初は難しかったですが、実践し慣れてくると患者さんによって自分の臨床のパフォーマンスに差が少なくなっていると実感しています。
コミュニケーションは先手必勝です。

まとめ

本日は、ホルモンの中でもエンドルフィンの内容でやってきました。
エンドルフィンは「笑い」や「有酸素運動」でも分泌されるとお伝えしましたが、本日は特に「笑い」を中心にお伝えしました。
なぜ、こんなに「笑い」に絞ってやってきたかといいますと、自分自身「笑い」を過小評価して臨床を当時行っていました。どうしても目の前の患者を治そうとするとガチガチに訓練をして患者さんが笑っていないリハの時もありました。本日、お伝えさせていただいた通り、「笑い」にはエンドルフィンを分泌させる効果があり医学的にも痛み閾値の向上やストレス耐性、免疫機能Upなど様々な効果が示されています。(調べてみると様々な報告が出てくるため、ぜひ。)過去の僕のように過小評価せず、目の前の患者さんにエンドルフィンが分泌されるよう「笑顔」を引き出せる介入ができればと思います。もちろん有酸素も適宜取り入れてもらうことも忘れずに!

では!

言語聴覚士 乳井




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