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「サブプライム問題と議員」の巻

■反日派が応援するオバマ
 共和党の女性副大統領候補、セーラ・ペイリンが「旋風」を巻き起こし、ジョン・マケインの支持率がアップした直後に起こった金融危機。再びバラック・オバマが巻き返し、この原稿を書いている時点では、オバマが数ポイントリードしている状況だった。ただ黒人に対する拒絶反応は根強いものがあり、過去の地方選挙では、選挙前の世論調査でリードしていた黒人候補が当選できなかったという前例もある。選挙の行方はまだまだわからない。
 筆者は市民権がないので勿論選挙権はない。自分なら中道右派のマケインに投票するだろうと思いつつも、オバマの若さに期待したいところもあった。しかし2008年8月28日付『北米毎日新聞』をふと読むと、民主党大会で、あの反日道化=マイク・ホンダがオバマの推薦演説をしていたことを知った。支那系住民の票ほしさに、日系人でありながら日本人を人種差別するような醜悪な人間の応援を受けていると知った途端に、オバマには悪いが、彼への幻想が一気に醒めてしまったような気がする。オバマ自身はマケイン同様、同盟国である日本を重視すると言ってはいるようだが…。

■日本のバブルとよく似た金融危機の構造
 さて、アメリカの金融危機。所謂サブプライム問題、つまり通常なら家を買えそうにない低所得者やクレジットヒストリー(過去のローンやクレジットカードの返済に関する記録。ポイント化され、金融機関やクレジット会社に提供される)の悪い人に、住宅ローンを提供するために作られた政府系金融機関の破綻が原因となった。ローンが返せなくなったので土地家屋を差し押さえたが、評価額が下がって、金融機関の首が絞まったという構図は、日本のバブルと良く似ている。筆者が住むカリフォルニア州のいくつかの街、例えば、サンフランシスコとサクラメントの間に位置するヴァレーホやフェアフィールド、サクラメントとフレズノの間に位置するストックトンやマンティーカなど、都市の中間にある、片道2時間未満の通勤圏内で、格安の家が手に入った街では、無理をして購入した所有者が家を手放さざるを得なくなり、銀行所有になった物件がごろごろしている。主だった産業がなく、固定資産税が大きな収入源だったヴァレーホなど、市そのものが倒産するという憂き目にあっている。
 貸した側が悪い、という批判も日本のバブル期同様に行われている。多くの人が住宅を買えるようにする、という最初の意図は確かに間違っていなかっただろう。しかし、ゼロ・ダウンペイメント(頭金なし)で30年間のローンを組み、日本円で3000万円台の家を買えば、月々の支払いは軽く20万円を超えることになる。夫婦共稼ぎとはいえ、簡単にリストラが行われるこの国で、月20万のローンは苦しい。経済が上手く回転しなければ破綻するということは、簡単に予見できたような気もするのだが…。
 アメリカは今、日本のバブル後の回復過程をなぞろうとしているようだ。いずれにしてもイラク問題、そして、原油価格高騰に伴うエネルギー問題に加えて、新大統領に大きな仕事ができたのは間違いない。
 金融機関の再編は急ピッチで行われている。凍り付いていた住宅市場も、低価格帯のフォークロージャー(ローンを支払いきれずに、借金整理のために売りに出された物件)やショートセール(同様の理由で緊急セールになった物件)を中心にやや活況を呈しているというが、「羹に懲りて膾を吹く」体の金融機関は、一転して審査のハードルを厳しくしており、住宅が景気回復の牽引をできるような状況にはなっていない。
 ただ10月末にはハロウィーン、11月には感謝祭、12月にはクリスマスと、消費シーズンがやってくる。消費で支えられている国アメリカにとって、この時期に突入したことは不幸中の幸いだ。尤も、その買い物もローンでやりくりするのが、普通のアメリカ人だ。

■露呈した議会政治の脆弱さ
 9月下旬に、アメリカ発の第2次世界大恐慌が懸念される中、ジョージ・ブッシュ大統領は、議会に対して「公的資金」の導入を要請した。小さな政府を志向していたブッシュと共和党にとっては、苦渋の選択だっただろう。二大政党はこれに合意したものの、連邦議会は一旦これを否決するに至った(最終的には一部修正で合意)。選挙民が「公的資金」の導入に否定的だから、次の選挙を考えると、賛成に廻れない。多くの議員はそう考えたらしい。
 これを見ながら、アメリカも日本も、議員という人種は同じだなと感じた。1929年に起こった世界大恐慌が、大東亜戦争につながったということは少し勉強した読者なら良くご存知だろう。否、それをアメリカ自身が知っているからこそ、大戦後にIMFやGATT(現WTO)などの組織を作り、貿易と国際金融のルールを強固にしてきたのではなかったか。良いか悪いかは別にして、アメリカには国際社会に大きな責任がある。ところが、それを示すべきはずの法案が、議員の当落という、いわば個人的な理由で、いとも簡単に否定されてしまうのだ。いつかは必ずしなければならない消費税引き上げという決断を、政府も野党もできないでいる日本もまったく同じこと。そして極めつけは、河野洋平を筆頭とする売国議員だ。
 アメリカ製の議会制民主主義システムは、いよいよ再考の時期が来ているのではなかろうか。

『歴史と教育』2008年6月号掲載の「咲都からのサイト」に加筆修正した。

【カバー写真】
 カリフォルニア中部の農村地帯をいくサザンパシフィック鉄道の貨物列車。カリフォルニアでは今頃、「新幹線建設」が議論されている。景気回復の救世主が鉄道とは、どうなってるんだ。(撮影筆者)


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