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憂鬱を超えていけ。

今回は「検診」について。

今週「胃がん検診」を受けた。というか、先週の「腱鞘炎」に続き、今週は「胃がん検診」って、テーマが完全に“おじさん”なのだけど、もはやそういう年代であるという自覚もあるので、今日がクリスマスイブだろうがなんだろうが気にせず書いてみることに。

とにかく今年の「胃がん検診」は憂鬱で仕方なかった。自分の住む町では30代半ばを過ぎると「胃がん検診」の案内が来るようになる。思うところあって毎年きちんと受けているのだけど、例年は春先に実施されているこの「胃がん検診」が、今年は例の新型ウィルスの影響で延期され、年も押し迫った今週の案内となった。これは誰が悪いわけではないのだけど、何かと慌ただしい年末、しかも寒いのにな…といつもに増して憂鬱になる要素が増えてしまっていた。

とはいえ、いつとか以前にやはり検診自体の憂鬱感の方がどうしたって大きい。受診にかかる身体的かつ時間的拘束もそうだし、「もし悪いところがあったら…」という不安もある(これはもちろん何かあれば見つけてもらった方がいいのだけれども)。そして「胃」に限らず「健康診断」と名の付くものには大抵セットで強いられる“あれ”が、僕はどうしても苦手だ。

それは、「前日の夜8時以降は飲食しないでください」「お酒は飲まないでください」「朝食は食べないでください」「水以外は飲まないでください」というやつ。

実際のところ、夜中まで何か飲食する生活は最近はしていないし、さっさと寝ることが多い。お酒だって「飲め」と言われても「いやまぁまぁ」といって飲まずにやり過ごすくらいの感じなので、飲めない方がむしろウエルカム。なのに、こうやって禁止されると不思議なもんで、途端に苦しさを覚えてしまうもんなんだろうな、人って。いわゆる「カリギュラ効果」というものだそうで、「禁止されるほどやってみたくなってしまう」という心理現象が働くということらしい。まさにそれがきっちり作用してしまっているわけだ。

ふと、「あー今日の夜は飲み食いしちゃダメなんだな」と別に食べたいものも無いくせに、「あーお酒飲んじゃいけないのか」と冷蔵庫にはどうせビールも何も入っていやしないのに、思い浮かべては、独りで憂鬱になってる…という毎回の健康診断前夜。そして、「コーヒー飲みたいなー」「ご飯美味しそうだなー」と、やけに思ってしまう当日朝。どうしても毎回あの感じに陥ってしまう。うーん恐るべしカリギュラ効果!

さらに「胃がん検診」は、“憂鬱ポイント”がそれとはまた別なところにもある。知る人ぞ知る「バリウム」ってやつ。あれを数年前に初体験した時は、初めてということからくるそれなりの新鮮さや、大人の階段上ってる感あったけど、何度か経験した今となっては、ただしんどいのみ。好きな人なんていないんだろうけど、「またあれを飲まなきゃいけないのか…」という、“してはいけない憂鬱”とは逆の"しなきゃいけない憂鬱”…!

そのうえ、「バリウム」ってやつは飲んだ後にこそ、もう一つの“憂鬱な事態”が待っているわけなのだけど、それについては今回は割愛するとして、いろいろ片付くとやはりそこには「終わった!」という、何て言うんですか的な「解放感」もある!食べてもいいよー飲んでもいいよーという「自由」を取り戻すと、毎回(いろんな意味で)爽快な気持ちになる。

だからと言って、その晩にビールで乾杯するでもなく、夜更かしして夜食を貪るでもなく、何か特別で高級な朝食をいただくでもなく、これを機に有難みを増して食するわけでもない。とりあえず検診後に淹れたコーヒーは美味しかったけども。あれやこれやを解禁したところで、昨日のあの感情は何だったんだろうかと思うほどに、結局は憂鬱と爽快がバランス取り合って、何かが変わるわけでもない日々がまた始まっていて、往々にしてそういうものなんだろうなと気付かされたりもする。これが人生の抑揚ってやつなのだとしたら、それによって記憶に刻まれるものなのかもしれない。今年も胃がん検診頑張ったぜと。頑張ったつもりが、カリギュラ的な作用に見事に踊らされて、実は何もしてないし、できていない。考えてみたら今年2020年は、そんなものばかりだったような気もする。抱えた憂鬱もいつか解放されてしまえば、あっという間に何もかも元通りになるけど、ちゃんと忘れないで残してはいたい。そういう年に今年はなってればいいのかなとも思う。ひとつの些細な憂鬱を乗り越え、夜8時以降に飲食をするでもビールを飲むでもなく、僕はただちゃんと覚えたままで静かに待つことにしようと思う。いくつもの憂鬱を越えて、あれやこれやも超えて、新しいけど特に何もない少し前のような普通の2021年と、“所見なし”と書いてあれと願う、胃がん検診の結果を。

とりあえず今回はこの辺で。それではまたそのうちに。そして、ついでじゃないけどメリークリスマス!

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