見出し画像

あまがえるをふりかえる。

今回は「かえる」について。

前回、「あんこ」という自分の「好きなもの」について書いてみたら楽しかったので、今回も別な「好きなもの」について書いてみることに。
その「好きなもの」として真っ先に浮かんだのが「かえる」。「カエル」。あの「蛙」。世の中に「かえる好き」は多分たくさんいて、そしてそれは「リアルなかえる」派と「キャラのかえる」派に分かれると思う。あの両生類代表の、あの何とも言えない質感やフォルム、生態を持つ生き物としてのかえるが好きなのか、それともデフォルメされて愛らしいキャラクターとして描かれたかえるが好きなのか。同じかえるでも実はだいぶ違うものと思われるこの派閥、どちらがメジャーでマイナーなのかは分からないけど、それで言うと自分は「どっちも」派。

振り返ってみれば、始まりはやはり「リアル」の方から。東北の田舎の農家の長男坊からしたら、かえるはごくごく身近な存在。庭先にも田んぼにも畑にも裏の山にもいた。小学2年生の時、友達と田んぼからかえる(多分ツチガエルかアカガエルだったと思う。違うかもしれないけど。)をたくさん捕まえてきて、先生にお願いし、教室の外に大きな水槽を準備してもらって、飼ったりもしていた。ただ、大量にかえるを入れたからか、頻繁に掃除をしなければいけなかったからなのか、すぐにとんでもない悪臭を放つようになってしまい、早々に撤去命令が下され、泣く泣く逃がし、かえる飼育はあっという間に終わってしまったということがあった。また、校舎裏の茂みの中に大きなウシガエルが住み着いているのを発見した時は、その日から毎日その場所に行き、今日はいた、今日はいないと見に行っていた。この頃から気になる存在だったのかもしれない。

そして、小3~4くらいになると、あの有名キャラクターがこつ然と現れる。「かえるキャラ」といえばやはりあの方。みんな大好き「けろけろけろっぴ」。大流行して、プリントされた文房具や学用品をみんな持っていたし、僕もノートや消しゴムなんかを持っていた気がする。当時のクラスメイトに信者的にけろっぴが好きな女の子がいて、今思うと、その子のことが好きだったから、僕もけろっぴが好きだったような気もする。得てしてそういうことなんだろうなぁ好き嫌いの感情って…とも思う。けろっぴさんは、最近ではかつての人気もすっかり下火になってしまったという話も耳にした。腐らず頑張ってほしい。人気再燃を切に願うばかり。そういえば、小学生の時には、国語の教科書の教材の一つとして、有名な「がまくんとかえるくん」というシリーズにも出会っていて、それも後々手を出し始めるジャンルではあるけども、当時はまだそこまでの認識ではなかった。

こういう環境を過ごし、やがていよいよ「かえる好き」が発症する。それは大学生の時に、某アジア系雑貨店で何んとなしに買った「かえるの置物」が、今思えば始まりだった。よくある、木製の小さな置物で、棚に腰掛けるように作られているシリーズ。おそらく、日本人の誰もが一度は買ったことがあるのではないかとも思える、あの置物。それの「かえる」の、竿を持って魚釣りしてるタイプのやつ。あれを一人暮らしの部屋に飾った。それがやたらしっくり来たのか、その「釣りをしているかえる」を皮切りに、かえるの置物を次々と買い始めた。座ってるやつ、寝てるやつ、船乗ってるやつ、羽生えてるやつ、などなど、大きさも様々に「置くもの」だけに留まらず、「吊るすもの」「壁にかけるもの」など、見掛けるたびに買い足していった。お店の棚には、犬や猫の同じような置物も並んではいたけど、そこには全然手を付けず、なぜか「かえる」だけを選んで、少しずつインテリアが「かえる」だらけの部屋になっていった。

そうやって暮らしていると、「置物」にかかわらず、だんだんと「かえる」関係のものすべてが気になってくる。キーホルダー、ポストカード、お守り、ぬいぐるみ、時計、食器などなど。アジアン雑貨風のかえるにと止まらず、擬人化されていたり、されていなかったり、リアリティを追求したような「リアルかえる」側のものも含めて、あらゆるタイプの「かえる」惹かれ、気になったもの、目新しいものをついつい買ってしまっていた。ただし、やはり何事もほどほどが大切で、増えすぎた「かえるグッズ」は、やがて置き場もなくなるほど溢れかえり、僕自身も持て余し始めてしまうことになる。その後、結婚や引っ越しを機に、少しずつ減らし減らされ、最初に買ったあの「釣りをしているかえる」はもう手元に残っていない。あの頃買って今も残っているものといえば、この少し大きめの「傘を持ったかえる」の置物くらいか。新たに買うのもほどほどに…思いつつも、ここ最近また増え始めてきている気もする。昨年はかえるの文鎮やらブローチやらを買ってしまったし。気付かれないようにこっそりと…がポイント。

画像2

結局、かえるの何が好きかというと、元も子もないけどもやはり「全部」ということになってしまう。リアルな「かえる」の、オタマジャクシからかえるに成長していく過程や、世界中にいる様々な種類のかえるが生息していることを考えると、そこにロマンを感じるし、あのとぼけた表情がたまらない。キャラクター化された「かえる」の方も「リアルかえる」と同じくらいに愛嬌があるし、特徴は異なれど、数多く存在するどのキャラクターも好きだ。中でも最近は前述の「がまくんとかえるくん」がお気に入り。絵本も面白い。あと、「バムとケロ」シリーズの「ケロ」が急上昇中でもある。
「かえる」が好き過ぎて、歌も作ってしまった。タイトルもそのままの「あまがえる」という曲で、歌詞に「かえる」が出てくる。作ってからしばらく経つオリジナルの中では比較的古い方の曲だけど、ライブではほぼ毎回歌っている、僕にとっての名刺代わりのような曲でもある。具体的な描写多めの歌詞ではあるが、ノンフィクション要素がないことはないけども、歌詞の韻から始まったイメージをあれこれ膨らませて作った。歌詞には「道端に見つけたあまがえる」という一節があるが、この部分で言うと、実際に道端であまがえるを見つけたことがあるわけではない。正直、小さいしね、あまがえるって。草に紛れていたりもするから、実際に見つけるのは割と難しいと思う。
ただ、そういう歌詞のイメージのもとになった光景が実はあって、それは卒論用の実験をしていた大学4年生の夏のこと。農学部で作物学というものを専攻していた僕は、田んぼの土が条件によってどのように変化するか?みたいなことを調べていて、何種類か行った実験の一つにビニールハウスでの測定があった。田んぼの土と水をポッドに入れたものを条件を変えて何種類か設置し、その土の酸化還元電位や溶存酸素量の変化を調べるというもので、数週間、毎日、専用の機械で測定をしていた。計測機をポッドにセットし、測定、記録、その計測器を洗浄してから次のポッドへ…みたいな流れで、これがまぁ、ワンパターンで飽きる…。実験とはそういうものなのかもしれないが、それを毎日毎日一人で黙々と行っていた僕は、ある日ふとポッドの陰に動くあいつを見つける。それが「あまがえる」だった。その時点ですでにかえるグッズをたくさん集めていた僕にとって、愛おしい存在だった「あまがえる」の登場に僕は歓喜!そして辺りを見まわすと、ビニールハウスの内側の端の方にはいくらか草が生い茂っていて、そこにあまがえるがたくさん生息していることが判明した。単純作業に飽きてしまっていた僕は、気分転換にそのあまがえるを捕まえて、バケツの中に入れたり、時には手の上に乗せたりして、観察したり、戯れたり、お話したり(あくまで心の中で)して、その数週間を過ごした。おかげで、実験が捗った…というわけではなかったが、心を折られることもなく実験を終え(結果はともかく)、無事卒論を書き上げることができた(出来はともかく)。
だから、卒業して何年か経った後、「あまがえる」の歌詞を書いている時に浮かんでいたのは、「あまがえる」とじっくり向き合っていたあの頃の光景で、そうなると正確には「道端に見つけた」ではなく、本当は「ビニールハウスの端に見つけたあまがえる」だった。
この曲を知らない人からしたら訳の分からない話だし、知っている人からしても「だから何だ」としか言いようがないとは思うが、十数年も歌い続けていた歌の、元になったイメージを、今ふと思い出せたことが、妙に面白かった。夕暮れ時のオレンジ色の街っぽいイメージを浮かべて歌っていたつもりだったけど、卒論用実験のあの暑いビニールハウスの光景が、この歌の真実。そう思うと、歌詞の「もう帰ろうか」や「続いていく そうまた明日へ」も違う意味で聞こえてしまうかもなぁ…。どちらにしろ「あまがえる」という曲はこれからも歌い続けていくと思うので、真実はどうあれ、自由にイメージしながら聞いてもらえたら何より。この「あまがえる」という曲は、バンドスタイルでレコーディングもしていて、ダウンロードもCD販売もまだまだやってますので、ぜひ一度聞いてみてもらえたら!どーぞよろしく。詳しくはWebで検索!

結局、宣伝のようになってしまったけど、「かえる」のことを思う気持ちはこれからも変わらない。ちなみに唯一残っている「傘を持ったかえる」の置物は、今では我が家の“神様的な存在”にまで成り上がり、高いところに祀られています。あの“かえる様”のおかげで今の僕があると、思わずにはいられない…こともない…とも言えない…まぁとにかく、今後はもう「かえる」の曲を作ることはないかもしれないけども、手に入れた「かえる」も、野で生きてる「かえる」も、いろんな「かえる」も大切に、生きていきたいと思う。
最後に、最近買ったお気に入りの「かえるグッズ」をご紹介。先日、東京で買った「かえるの木のおもちゃ」。形は同じだけど、5種類の違う木で作られたかえる。重ねて遊んだりするやつで、それぞれに手触りや重さが違って面白い。表情いい。もう1セット欲しいくらい。見掛けたら多分買ってしまうと思う。おすすめです。

画像1

とりあえず今回はこの辺で。またそのうちに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?