フジロックが示した「部屋でフェスを楽しむ時代」の幕開け

この週末に行われたフジロックにて、同フェスとして初めて実施されたライブの生配信。ソフトバンクの仕切りで、YouTubeにてたくさんのライブアクトが中継されました。

ちょうど土日は大した予定がなかったので、家でがっつり見ました。Fire TV Stick経由でリビングのテレビを占拠。去年一緒にフジロック行った長女は「またふじろっくいきたいー!」と言いながら、ハンバートハンバートのステージのクライマックスで踊りまくっていました。

※去年のフジロックの我が家の模様

それはさておき、今年の「フジロックが会場の外からリアルタイムで楽しめる」という状況は、いろいろな側面において大きな影響を与える可能性があります。

単純にこの中継自体が来年のフジロックのプロモーションになったという話もあるでしょう。来年は新規ユーザー増えるかな?

また、ソフトバンクにとってもブランドイメージの向上につながったはず。こういったライブコンテンツの配信を行ううえでの良いサンプルケースにもなったのでは。

フジロックに参加していないリスナーとしても、この週末で自分にとっての新たな魅力的なアーティストに出会ったのではないでしょうか。フジロックが備えている「様々な音楽を紹介する」というパワーが会場外にも広がることは、音楽シーン全体にポジティブな波及効果がありそうです。

今回のような取り組みが定着・進化していけば、フェスに対して「会場に行く」だけでなく「家で楽しむ」という選択肢が生まれます。正直、大雨の中で会場にいるよりも、家でリラックスしながら好きなだけライブを見ていたほうが楽しい…なんてこともあるのでは?

一方で、会場に行かないと楽しめない空気や雰囲気があるのも当然のこと。そのうえで、この先日本のフェスにおいて「ライブ配信」が定着していった場合、どんなことが起こりうるのか?

そんな話を拙著『夏フェス革命 音楽が変わる、社会が変わる』の最終章で触れていたのでご紹介させていただきます。

>>以下引用

「COUNTDOWN JAPAN ×紅白」のような「フェスのフェス会場外への進出」というフォーマットは、今後のフェスのあり方を考えるうえで重要なものとなる可能性がある。本章の締めとして、そんな切り口から「未来のフェス」について考えてみたい。

「フェスが家で楽しめる」という形は、海外においてはすでに定着している。たとえば2章でも触れた世界最大級のフェスであるコーチェラでは、多くのアクトのライブストリーミングが行われており、世界中の人たちがリアルタイムでステージの模様を楽しむことができる。また、EDMの祭典であるウルトラでも同様の取り組みが行われている。

デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏は、こういったフェスの配信に関してこのように語っている。

フェスやライブは会場の動員数に合わせたチケット枚数しか販売できないため、売り切れたらそれ以上の人に見てもらえない。それを打破する一つの方法がライブ配信です。オンラインでもフェスに参加してもらうためのツールであり、配信を見た人がTwitter に投稿したりしてハッシュタグがトレンドに入ることもあります。SNSで話題になることでブランド力、訴求力を際立たせ、さらに人が集まったり、話題になるフェスが増えている気はしますね。特にウルトラはYouTube、LINE LIVE などで積極的にライブ配信を行うことで、どこからでも観れる環境を作っている。リーチを広げて、会場に行けない人もフェスに参加している、という繋がりの体験を作りたいという思いを感じます。
(Real Sound「ULTRA はなぜ世界展開に成功した? 音楽フェスを広げるテクノロジーの役割」


「会場」「チケット」といった物理的な制約を外して多くの人にライブを体験させることでフェスの価値はさらに高まり、ユーザーも直接参加できなかったイベントをリアルタイムで疑似体験できる。双方にメリットのある取り組みである。

現状の日本のフェスは、こういった取り組みに関してそこまで積極的ではない。4大フェスに関して、こういったリアルタイム配信の類は2017年時点では行われていない(ロック・イン・ジャパンの一部ステージの模様がWOWOW で中継されていたこともかつてあったが、定着には至らなかった)。

一方、4大フェス以外では、2017年のMETROCK がAbemaTV で中継されていた。ウルトラとLINE LIVE が絡んでいることも含めて、インターネットの動画配信プラットフォームにとってフェスのストリーミング中継は一つのコンテンツの核になっていくのかもしれない。

ここで着目したいのは、「どこからでもライブを見ることができる」ということによってフェスの会場で起こる可能性のある変化についてである。今後「フェスでのライブをフェス会場の外から楽しめる」体制が構築された場合、それによってフェス参加者のゆるやかな「棲み分け」が起こるのではないだろうか。

これまで再三述べてきたとおり、フェスの現場は仲間同士で一体感を楽しむためのお祭りになりつつある。それはすなわち、音楽だけを楽しみたい人たちの居場所が少しずつなくなろうとしていると言い換えることもできる。ならば、そういう人たちにとっては、自分のパーソナルスペースでライブをじっくり見ることができたほうがよほど快適な可能性が高い。

この先さらに技術が進化し、VR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)といったテクノロジーや、クオリティの高い家庭用の音響システムが普及していくと、遠隔地でも生のライブを見ているかのような体感を味わえる配信というものが実現するかもしれない。

そんな未来が到来した場合、「音楽を楽しむ」という観点に限れば「フェス会場にいるか/いないか」は関係なくなるだろう。音楽が目当ての人(提供価値の「①出演者」を重視する人)は会場外からステージにアクセスし、仲間でフェスそのものを楽しみたい人(提供価値の「②出演者以外の環境(衣食住)」、「③参加者間のコミュニケーション」を重視する人)は皆で会場に足を運ぶ。そんな世界がいずれ訪れるかもしれない(これが本当に楽しい未来かどうかはわからないが)。

本項の話には非現実的な未来予測も含まれているが、いずれにせよフェスのあり方が変われば音楽の聴き方・楽しみ方や音楽産業全般のあり方が大きく変わる、というのが今の時代である。「部屋でフェスを楽しめる」というような方向性に繋がる形でテクノロジーが進化すれば、さらにフェスの裾野が拡大し、多くのアーティストがますますフェスに依存するような構造が生まれるかもしれない。逆にフェスに関する何かしらネガティブな要素が顕在化すれば(あれだけ人が集まるのだから何か事故が起こってもおかしくない)、タイムテーブルがヒットチャートの役割を代替するような状況は一気に後退するだろう。社会のあり様を映し出すフェスは、日本の音楽のあり方そのものを規定する力を持っている。

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詳細は拙著にてぜひ


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夏フェスがわかればマーケティングがわかる

『夏フェス革命 音楽が変わる、社会が変わる』(blueprint)の内容をベースに、夏フェスをモデルケースとして2010年代のマーケティングのあり方について考える連載企画です。
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