熱き炎を胸に、魂を燃やす。
ネルフォンさんから借り受けた本と別の歴史に関する本を何冊か持って机に戻りノートを開く。本のタイトルは「失われし個性」というものだ。
その昔個性があった時代の事が書かれているのだが、その内容のほとんどは悪だ、消し去るべき人類の汚点だ、なんて散々な言われようだ。
しかし読み進めていくと先人の一人が“個性を認めなければ人の心は朽ちてしまう”という言葉を漏らしていたという。
「(その人はどうなったんだろう。)」
この世で個性は悪だ。無意味だと言われているものを必要だといったその人が辿る道など容易に想像が出来てしまって息がしづらくなった。
嗚呼、これはなんていうものなんだろう。
人の行く末を想像して苦しくなることはどんな言葉で表されるのだろう。
気になる文章と感情に関する文、それ以外の個性について書かれていた文章を殴り書きでノートに写して本棚に戻しに立ち上がると
「あの、もしかしてレイリーさんですか?」
柔らかい声がしてその方向へ顔を向けると女性が立っていた。そしてその顔には見覚えがあった。
「えぇ。サラさん、ですよね?」
サラ…オレの婚約者で会うのはもうしばらく後のはずだけどまさか図書館で会ってしまうなんて
「はい。お会いできて嬉しいです。」
そっと上がる口角に同じように自分も口角を上げ
「何をなされていたんです?」
「お花の本を読んでいたんです。花言葉や育て方なんかの本を…」
そうですか、と淡白な返事を返して
「すみません。お会いするのはもう少し先だったのに、思わず声をかけてしまいました。」
「いいえ。というよりも貴女から声をかけるようシナリオは書かれていますし、問題ないでしょう。」
シナリオ通りの人生。それが普通で当たり前なのにそれを受け入れたくない自分がいて、さっさとその場を離れたかった。それなのにサラさんはシナリオ通りに世間話を始めてオレもそれに相槌を打ち、会話を続けた。
しばらくすると
「あぁ、すみません。そろそろ帰らないといけませんよね。」
それに少し口角を上げ、大丈夫だと返して本を戻すために再び立ち上がると
「その本は?」
その問いに動きが止まった。なんて答えれば正解なのか分かっているはずなのにその言葉がのどにつっかえて、声が出せない。彼女は首を傾げ本のタイトルをそっと口ずさんだ。
「個性…あぁ、所長ですから皆の前に立つ者として学習していたんですね。」
「え、えぇ。そうでなければいけませんから。」
ようやく出せた言葉に、オレの心の内が彼女にバレてしまわないか心配になったが彼女は気付いていないようで
「では、また約束の日にお会いしましょう。」
そう言って去っていった。本を持ってネルフォンさんと話していた本棚まで来た瞬間、
「っはぁぁぁぁ~っ…危なかったぁ。」
今までだったらこんな事はなかったのに、意識するようになったらこれまで普通だった表情がすごく難しいものだということを改めて痛感した。
「(ネルフォンさんたちも最初はそうだったんだろうな。)」
それにしても何かむず痒い。ネルフォンさんたちの様に表情を表に出してみたいのに『個性など欲するとろくなことにならない。』厳格な父の言葉が脳裏に浮かんで上手くいかない。
嗚呼オレもネルフォンさんと、もっと早くに出会っていたら少しは変わっていただろうか。
嗚呼、何故オレは所長の家柄に生まれたのだろう。
普通の一般人の家系なら良かったのに。
「(あの人たちが羨ましい。)」
頭が重くなる感覚に、そっと目を閉じ帰路についた。
ということでには今回は小説の一端をお見せいたしました!
加えて今回はここまでにしたいと思います!
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それでは皆様今宵も良い夢を。
チャオ(*´ω`*)ノ
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