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離床に必須の知識~CRPとWBC~

今や当たり前の"早期離床"

ー「早期離床をしましょう」
今は違和感なく使われている言葉ですが、みなさんの施設ではどうでしょうか?まだ消極的なところも多いかもしれませんね。

実は日本における早期離床の歴史は、まだ新しいのです。

1910年代から、婦人科領域での外科術後に早期立位・歩行が行われ始める

田代義徳.荒井程吉:開腹術後の早期離床起立について,日本外科学会誌1910;11:140-141

海外では1800年代から報告があるのですが、その時代は「術後の傷口が開いてしまう」と安静臥床が主流だったそうです。

今では現代医学の技術の発展もあり、早期離床は安全に行われるようになりました。しかし、だからといって全ての患者様に早期離床が当てはまるわけではありません。その見極めの1つがCRPとWBCの関係なのです。



■ CRPとは?

CRP(C反応性タンパク:C-reactive protein)は健常な人の血液中にはほぼ存在しません(基準値:0.14mg/dL以下)。

ー「CRPが高かったから、離床は控えました」というセリフを、職場で聞きませんか?これは半分正解で半分不正解なのです。

CRPは確かに炎症マーカーの代表的存在ですが、この"値"だけを見てしまうと、離床の機会を逃してしまうのです。

上記スライドにもあるように、肺炎などにより炎症が起こるとサイトカインが放出されます。その結果、普段肝臓にいるCRPが産生されるのですが、血中濃度が上がるのに時間を要するのです。ピークとしては2~3日と言われているので、血液データでみているCRPの数値はその時の数値ではない可能性があります。


ーでは何を指標にすべきか?

上記スライドにもあるように、CRPは2~3日が炎症のピークです。そのため発症時はCRPが低値である事が多く「CRPは低値だったから離床しました」となりがちなのです。

そのため臨床では必ず"ある血液データ"と併せて状態を判断していきます!

■ WBCとは?

WBC(白血球:white blood cell)は骨髄にある造血幹細胞から生成されます(基準値:3.3~8.6×10³/μL)。

私自身もある手術をした際に、WBCが10000/μLを超えた時がありました。正直そうとうしんどかったです。WBCは外傷や感染症などで上昇するので、そういった点ではCRPと変わりないですよね?

ーでは何が違うのか?
それが"タイムラグ"です。CRPは2~3日でピークになるとお伝えしましたが、WBCは数時間以内に上昇し始めます。つまり、同じ炎症マーカーですが乖離しやすいのです。

【例】
・1日目:CRP1.56 WBC10000
・2日目:CRP2.35 WBC8000
・3日目:CRP3.25 WBC7500

上記のように、CRPは上昇しているから「ヤバイ」と思うかもしれませんがWBCの値をみると減少しています。つまり、WBCがピークアウトしているので急性炎症から改善しつつあると考えられます。

もちろん、これだけで離床の判断はしません。ここを指標に実際の症状(発熱、呼吸状態、痛みなど)を評価して離床を行っていきます。

そのために必要なのがフィジカルアセスメントです!血液データと併せて、実際のアセスメントを行うことで、より安全に早期離床を進める事ができます!

■ 最後に

皆さんの職場にはCRPを重視している人もいるでしょう。もちろんCRPが高い時に高負荷の運動はやめた方がいいです(自分自身で実証済み)。血液データは1つの項目だけで考えるのではなく、他のデータと併せて『どんな状態なのか?』を包括的に考えていく必要があります。

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