筋トレ後の筋肉痛にフォームローラーは効果があるのか?【最新エビデンス】

【お知らせ】
*2020/1/10 「習慣的なフォームローリングは筋肉の柔軟性を高める最新エビデンス」の記事を追加しました!

*2019/11/19 Q&Aコーナー「フォームローリングの最適なセット数は?」を追加しました!

*2019/11/11 「フォームローリングは筋肉の柔軟性を高める最新エビデンス」の記事を追加しました!


 筋トレをすると必ずと言っていいほど経験するのが「筋肉痛」ですよね。

 正式にはトレーニング後に遅延して生じることから「遅発性筋肉痛(DOMS)」と言われます。

 筋肉痛のメカニズムは解明されていませんが、現時点では過度なトレーニングが筋肉を損傷させ、筋タンパク質の分解を促進するとともに、炎症および代謝産物を流出させることによって発症すると考えられています(Rahimi MH, 2017)。

 発症してからどれくらいで痛みのピークを迎えるのかというと、おおむね48〜72時間までにピークを迎えます(Howatson G, 2008)。

 筋肉痛が残存していると筋力は減少し、関節の可動範囲が狭まり、運動のパフォーマンスが低下してしまいます(De Marchi T, 2017)。

 そのため、重要になるのがアフターケアであり、近年、注目されているのがフォームローラーを用いた「フォームローリング」です。

 フォームローリングは、安価なフォームローラーを使用して、自分の好きな時間に行えるため、トレーニーやスポーツ選手から人気を博しています。しかし、いまだに体系的な科学的根拠(エビデンス)は示されていませんでした。

 そして2019年、ようやく高いレベルのエビデンスを示すメタアナリシスの結果が報告されたのです。

*メタアナリシスとは、これまでの研究結果を統計を用いて全体としてどのような傾向があるかを解析する、エビデンス・レベルがもっとも高い研究デザイン。

 今回は、フォームローリングによる筋肉痛の改善効果についての最新のメタアナリシスの結果をご紹介します。

 トレーナーの方や筋肉痛に悩んでる方はぜひ知っておきましょう。


◆ ほとんどのアフターケアに効果はない!?


 筋トレで筋肉を大きくするためには、重いバーベルによる「高強度トレーニング」をしなければならない、というのは昨日までの常識です。

 現代のスポーツ科学は、筋トレによる筋肥大の効果はバーベルの重さではなく、「トレーニングの総負荷量」によって決まるというエビデンスを示しています。
筋トレによる筋肥大の効果は強度、回数、セット数を合わせた総負荷量によって決まる

 トレーニングの総負荷量とは、強度、回数、セット数を掛け合わせた負荷量の総量のことをいいます。

 総負荷量 = 強度(重量)× 回数 × セット数

 つまり、軽い重量の低強度トレーニングであっても、回数やセット数を多くして総負荷量を高めれば高強度トレーニングと同等の筋肥大の効果が得られるのです。

 しかしながら、筋肉痛があると総負荷量を高めることができず、効果的な筋肥大を得ることができません。筋肉痛は筋力や耐久性を低下させるからです。

 そこで重要になるのが「アフターケア」です。

 トレーニング後のアフターケアは、ジョギングなどの軽い運動を行う「アクティブ・クールダウン」と、ストレッチや冷水浴といった受動的なパッシブ・クールダウンに分けられます。

 アクティブ・クールダウン:ジョギング、自転車
 パッシブ・クールダウン:静的ストレッチ、冷水浴、マッサージ、電気刺激 etc

 しかし、実はこれらのほとんどのアフターケアには、筋肉痛を改善させる効果が認められていないのです。
筋トレによる筋肉痛にもっとも効果的なアフターケアの最新エビデンス
筋トレ後のクールダウンに効果なし?〜最新のレビュー結果を知っておこう

 この中で、もっとも高い効果のエビデンスが示されているのが「マッサージ」です。

 2018年、ポワティエ大学のDupuyらは、これまでに報告された研究報告をもとに、トレーニング後のアフターケアによる筋肉痛の改善効果ついてまとめて解析したメタアナリシスを報告しました。

 アフターケアは軽い運動(アクティブクールダウン)、マッサージ、加圧ウェア、冷水浴、交代浴、寒冷療法、電気刺激、静的ストレッチの8つの方法により行われ、トレーニング後6時間以内、24時間、48時間、72時間で解析されました。

 その結果、筋肉痛の改善効果はマッサージがもっとも効果が高く、トレーニング後6時間以内、24時間、48時間での痛みの軽減効果が認められたのです。また、ストレッチや電気刺激などによる効果は認められませんでした。

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Fig.1:Dupuy O, 2018より筆者作成


 この結果から、Dupuyらは、トレーニング後の筋肉痛に対するストレッチやなどには改善効果がなく、もっとも効果が高いのがマッサージであることを示唆しています。
 
 筋トレのあとに静的ストレッチをしている光景をよく目にしますが、実はストレッチには筋肉痛を予防・改善する効果はないのです。そして効果的なのがマッサージです。しかし、筋トレのたびにマッサージを受けるにはお金がかかりすぎます。

 そこで代替されているのがフォームローラーを用いた「フォームローリング」なのです。

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