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股関節‐機能解剖‐「関節構造編」

はじめに

今日は、股関節を語るにおいて避けては通れない機能解剖、「関節構造」について。
解剖学の本って分厚くて開くと眠くなりますよね。
私も以前からずっとそうでした。解剖をどうやって臨床に活かすのか・・・と新人の頃から思い続けてはや8年。
結婚、妊娠、出産、育休に手術…いろいろなことを経験し、ブランクばかりの理学療法士8年目(現在も休職中)ですが、今だからこそ基礎に戻って勉強中です。

評価するにも、考察するにも、治療するにも、構造をきちんと知っておかなければどのように動かしたら組織がどう動くのかもわからないですよね。
ということで、様々な部位の構造や特徴、機能についてまとめました。

絵を載せる余裕がなかったものですので、解剖学の本の図や絵をみながら見てもらえればと思います。
解剖の勉強をするにあたって、臨床に活かす方法としたら、
このポイントと全体的な構造(絵や図)を頭にインプットし、その後、構造を奥から外側まで順番に口頭で言えることが出来ればアウトプットOKかなと個人的には思っています。

それではまず、股関節でも大腿骨側から。




股関節構造


①大腿骨側

*大腿骨頭

鼠経靭帯の中1/3のすぐ下に位置
成人の両側骨頭の中心間距離は平均17.5㎝
大腿骨頭はほぼ完全な球面の2/3を形成
”大腿骨頭窩を除いた”大腿骨頭の表面の大部分は関節軟骨で覆われる
軟骨は大腿骨頭窩のわずか前方の広い領域で最も厚い=3.5㎜→月状面の表面

*大腿骨頭靭帯

寛骨臼横靭帯と大腿骨頭窩の間を走行する
滑膜で裏うちされた結合組織の管状の鞘
屈曲・外転時に伸張されるが関節の安定性にわずかしか寄与しない
大腿骨頭への寛骨臼の小さな動脈(閉鎖動脈からの分枝)の通過に対して、「保護的なパイプあるいは鞘として」主に機能する
大腿骨頭へわずかな血液供給をする
*大腿骨頭と大腿骨頸部への主な血液供給→内側および外側回旋動脈
大腿骨頸部に近接している関節包を通過している)


②寛骨側

次は股関節の寛骨側を。

寛骨臼の構造

*寛骨臼

大腿骨頭を包み込むように深い半球状のカップ形のソケット
寛骨臼縁の約60~70°は下極に近く不完全な形で寛骨臼切痕を形成する
寛骨臼横靭帯は寛骨臼切痕に張っている

大腿骨頭は馬蹄形をした月状面でのみ寛骨臼と接する
月状面の表面→関節軟骨で覆われ、ドーム状の上前方領域で最も肥厚(3.5㎜)
軟骨の肥厚部(最大3.5㎜)は、歩行時最も圧力がかかる部位にほぼ相当する
歩行時、股関節にかかる力は、遊脚中期には体重の13%
立脚相では体重の300%以上まで変化する
立脚時の力が最もかかるときには、寛骨臼切痕がわずかに広がって月状面はわずかに平らになる
これにより接触面が広がり、最大圧力を減少させる=自然の緩衝メカニズム
歩行時に寛骨臼にかかる力は仙腸関節と恥骨結合に伝達される
→これらの関節の低可動性は股関節への応力を増加させ、過度の摩耗を生じる可能性がある


*寛骨臼窩

→寛骨臼底の深い陥凹
一般に大腿骨頭と接触しないので、軟骨を欠く
代わりに、大腿骨頭靭帯、脂肪、滑膜、血管が存在


*寛骨臼唇(または関節唇)

寛骨臼周辺を囲む繊維軟骨の輪
寛骨臼切痕に隣接して、唇は骨臼横靭帯に移行するまで広がる
寛骨臼の縁に沿って付着し、その横断面は三角形
寛骨臼切痕付近で、関節唇は寛骨臼横靭帯に混入する
ソケット凹面を深く、骨頭の縁をしっかりと保持し、関節の安定性を増す
股関節の外傷性脱臼では通常、関節唇が断裂する

関節唇は大腿骨頭の約30%を包み込む→股関節の安定性を確保している
関節唇によって関節の周りを包み込むこと
→負の関節内応力が起こり、それゆえ関節表面の動揺に耐えうる適度な引き込みをつくっている
周辺を包み込むことにより滑液を留置する
⇒関節唇は間接的に滑らかな動きを高め、関節軟骨の機能への負担を減らす
直接的に、関節唇は寛骨臼の表面積を増加させ、接触応力(力/面積)を減少させることにより、関節軟骨を保護する

関節唇は外1/3に対して血液供給を受けるだけで、十分な血管が分布していない⇒そのため、損傷を受けた関節唇は治癒能力が非常に弱い
対照的に、固有受容フィードバックを有する求心性神経が豊富であるため、関節唇が急性損傷を起こしたとき、痛みを感じる

以前、大腿骨の頚体角と前捻角について投稿しました。
今回は寛骨臼アライメントについても。

*寛骨臼アライメント

寛骨臼はある程度の下方や前方の傾斜をもって骨盤より外側に突き出る
寛骨臼の形成不全は先天的or後天的状態により起こる
大腿骨頭を十分に覆いきれていない不完全な寛骨臼は慢性的な脱臼と応力増加を誘発し、変性や変形性関節症の原因となる

寛骨臼の形が大腿骨頭を自然に覆う程度を表す2つの測定方法

  1. CE角(center-edge angle)

  2. 寛骨臼前傾(捻)角

1.CE角
成人のX線像での平均は35°
明らかに少ないCE角により寛骨臼が大腿骨頭を覆う程度が減少する
覆う程度の減少→脱臼のリスクを増加させる、関節内の接触面を減少させる
CE角15°は35%ほど正常接触面を減らす
歩行時の片脚立位において、接触面積の減少は約50%まで関節応力(力/面積)を増加させる

2.寛骨臼前傾(捻)角(acetabular anteversion angle)
水平面で骨盤に対して相対的に寛骨臼がどの程度前方であるかを測定する
測定方法はCT画像
上方からみると寛骨臼前傾(捻)角は正常約20°
正常なときでも骨頭の前方は露出する
股関節の厚い前関節包靭帯と腸腰筋腱が関節の前の損傷を受けやすい側を自然に覆い支持する
過度に寛骨を前傾(捻)している股関節はより前方に露出する
前傾(捻)が重度の場合、特に最大外旋時に股関節は前方脱臼を起こす傾向にあり、前方関節唇の傷害と関連する
→この異常傾向は、寛骨臼前傾(捻)が適度な大腿骨前傾(捻)と組み合わさって増加する
水平面において、寛骨が外側特に後外側に位置している場合
→異常に後傾していると表現される


③股関節の関節包と靭帯

股関節の大腿骨側と寛骨側のそれぞれの骨構造(骨と靭帯等)が終わりましたので、次は股関節全体を覆う関節包と靭帯について。

関節包の内面は滑膜により裏打ちされ、腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯によって関節包の外側を補強している
これらの伸張された靭帯と関節包、周囲筋の他動的な張力が股関節の最終可動域を決定している
股関節の可動域制限に対して、徒手療法において、関節包のあらゆる部分において柔軟性を増加することは重要
大腿骨頭は腸骨大腿靭帯の内側から突出するが、正常では滑液包によって覆われている

股関節周囲の靭帯(腸骨大腿靭帯と恥骨大腿靭帯)

*腸骨大腿靭帯(Y靭帯)

非常に厚く強い結合組織逆Y字型に似た形をしている
近位で下前腸骨棘付近と寛骨臼縁に沿って付着
線維は明確な内外側線維束を形成し、それぞれ大腿骨の転子間線のどちらか一方の端に停止する
最大伸展時、腸骨大腿靭帯と前方関節包が伸張され、最大外旋時、腸骨大腿大腿靭帯の線維、特に外側線維束が伸張される
股関節の中で最も強く硬い靭帯の一つ
線維断裂を起こす最大の力の平均は約330N
股関節を完全に伸展して立位を保持するとき、骨頭前部は腸骨大腿靭帯を強く圧迫し腸腰筋にもたれかかっている
この状態の立位において、靭帯の他動的張力は大腿骨上の骨盤のさらなる伸展に抵抗する重要な安定力となる

*恥骨大腿靭帯

寛骨臼の前下縁、これと近接した恥骨上枝と閉鎖膜の一部に沿って付着
腸骨大腿靭帯の内側線維束と混合し、股関節外転、伸展、時として外旋時に緊張する
恥骨大腿靭帯と坐骨大腿靭帯は関節包と混入し、その後下面を補強する


股関節周囲の靭帯(坐骨大腿靭帯と腸骨大腿靭帯)

*坐骨大腿靭帯

寛骨臼の後下方で、近接した坐骨から起こる
この靭帯からの線維は、後下方関節包の深くに位置した円周状線維と一緒になる
表在の線維は大腿骨頸部の後方を上外方にらせん状に走り、大転子の先端に停止する
表在線維は最大内旋と伸展時に緊張する
上部線維は最大内転時に緊張する

わずかな内旋と外転を伴った股関節最大伸展は、多くの靭帯をねじり、らせん状にし、最も緊張させる
⇒この位置は股関節にあるすべての関節包靭帯をストレッチするときに有益
=この肢位は股関節の「不動の肢位」といわれる
関節包の伸張によって生じる他動的伸張の増加は
関節に安定性を与え、他動運動や”関節の遊び”を減少させる
しかし、「不動の肢位」が股関節では最大の関節適合が得られる位置と一致しない
股関節面は、90°屈曲と適度な外転と外旋で最も適合性が良い
⇒この肢位で、関節包や関連靭帯の多くはもつれず緩んだ状態になり、関節に他動的張力を与えない


まとめ

股関節は内部の構造からみると…(矢状面で大腿骨頭→寛骨臼まで)
大腿骨頭→関節軟骨(大腿骨頭の)→大腿骨頭靭帯(円靭帯)、寛骨臼横靭帯、寛骨臼切痕→月状面→寛骨臼窩(大腿骨頭靭帯が続いている、脂肪、滑膜、血管)→寛骨臼関節軟骨→寛骨臼

また、大腿骨頭から筋肉まで奥から外側までとしてみると…
大腿骨頭→関節軟骨(大腿骨頭の)→関節腔(滑液あり)、寛骨臼唇→関節包(内面滑膜)→靭帯(前面:腸骨大腿靭帯・恥骨大腿靭帯、後面:坐骨大腿靭帯)→筋肉

それぞれの部位等、詳しい構造や働きまでを丸暗記することは難しく、また丸暗記したとしても臨床に活かすことに繋がりにくいため、
「奥から外側までの構造を順番にスラスラと言えるようになる」
ということを目標に今回は頭を整理することに重きをおきました。

かなりわかりにくい投稿ではありますが、構造を順番に言えるって方、意外と少ないと思います。(絵もかなり見にくくて申し訳ないです)


解剖学の本を開きながらみてくださると、あーこんなのあったなあと思うことばかりだと思いますので、この機会を機にぜひ本を開いてみてはいかがでしょうか。


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