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美しさと救済の物語「落下の王国」

最近石岡瑛子さんの展覧会が開かれ、テレビでも放送されたのでご覧になった方も多いかもしれません。
独特の映像表現が特徴的な映像の魔術師と言われるターセム・シン監督と、
アートディレクター・広告・衣装デザイナーと様々な分野で活躍し、映画「ドラキュラ」の衣装でアカデミー賞衣装デザイン賞受賞(1993年)も受賞した石岡瑛子さん、この二人がタッグを組んで制作されたのがこの「落下の王国」という映画です。
2006年公開、インド・イギリス・アメリカの合作映画で、シッチェス・カタロニア国際映画祭ではグランプリ(最優秀作品賞)を受賞するほど高い評価を受けました。


物語のあらすじ(ネタバレなし)

舞台は1995年のロサンゼルスの病院。
木になっていたオレンジを収穫しようとして落下し、腕を骨折して入院している5歳の少女アレクサンドリア、彼女の視点で物語は始まります。

ある時、ふとしたことがきっかけでアレクサンドリアは、同じ病院に入院していたロイと出会います。
ロイは映画のスタントマンで、撮影中事故で橋から落下し両足を骨折、ベッドから動けない状態で、しかも恋人を映画俳優に奪われてしまい、身も心もボロボロの状態でした。
生きる希望を失ったロイは自殺を考えますが、自分はベッドから動けません。そこで彼はアレクサンドリアを利用する手を考えます。

ロイはアレクサンドリアに自分で考えたおとぎ話を語ります。
それは6人の男たちが、悪者に立ち向かうために旅する愛と復讐の叙事詩
アレクサンドリアはその話に夢中になり、毎日来ては話の続きを聞こうとしますが「続きが聞きたかったら病院の薬室から薬を持ってきてほしい」とロイに頼まれます。それは自殺用の薬でした。
おとぎ話の続きが聞きたいアレクサンドリアは薬室に忍び込み、毒物だと知らずにロイに言われた薬を持ち出そうとするのですが・・・


圧倒的映像美と美しい衣装

この映画の見どころはやはり映像美です。
構想に26年かけ、世界24カ国以上、そして13の世界遺産で4年がかりで撮影されました。
そしてその厳選された世界中の美しいロケーションで、俳優たちは石岡瑛子のデザインしたこれまた美しい衣装を身にまとい、演技するのです。
もう美!美!美!!が目の前で次々と展開されていきます。まるで写真集を見ているかのよう!!
またロケ地巡りをするファンの方も沢山いるそうで、確かにこれはどこも行きたくなる!と私も思いました。

落下の王国2

ここで石岡瑛子さんのデザインした衣装の紹介です。

物語の主人公とも言える黒山賊/ロイは、黒を基調とした金の装飾が映える海賊風の衣装に、つばの広めな同じく黒い帽子。(イラスト中央)

また一緒に旅をする仲間たちも個性それぞれの服を着ています。
生物学者のダーウィンは、蝶をイメージした独特な模様の赤いふわふわなコート。(イラスト右上)
インド人の衣装は鮮やかな緑で統一されており、特にターバンの形が特徴的。(イラスト中央上)
元奴隷のオッタ・ベンガは角が生えた兜がかっこいい。(イラスト左下)
爆弾専門家のルイジは、一見すると黄色のシンプルなコートかと思いきや、背中に炎の模様が施されています。(イラスト右下)

そして途中から登場するお姫様、彼女のドレスには蓮の花のような繊細な模様が描かれており、優雅さ・高貴さが表れています。(イラスト左上)
ちなみに登場時は帽子についた扇のようなものは閉じており、顔を見せる時に開く仕様になっています。開くと蝶のようにも見えるような面白いデザインです。

どれも色が明るく派手に見える衣装たちですが、砂漠の中や寺院などの世界遺産の美しい風景と絶妙に溶け込み、圧倒される映像を作り出しています。


おとぎ話から救いの物語へ

しかしこの映画、映像が美しいだけではありません。もちろん、ストーリーも美しく感動するのです。
絶望の中にいるロイと、純真無垢なアレクサンドリアの交流、
おとぎ話と現実が交錯し、やがて自分が考えたただのおとぎ話とアレクサンドリアの優しい心によって、ロイの運命が変わっていきます。

ロイもアレクサンドリアも、落下がきっかけで怪我をし、病院に来ました。
落下してから人はどう起き上がるのか、それとも落ちたままなのか。
後半部分は涙なしには見られない、壮大な救いの物語のように私は観ていて感じました。

リー・ペイスとカティンカ・アンタルー

最後に、ロイ役リー・ペイスとアレクサンドリア役カティンカ・アンタルーについて。
カティンカちゃんは演技経験が一切ない普通の女の子だったらしく、だからこそあのような自然な表情で映画が撮れていたんだな、と納得しました。
監督も自然体をとにかく意識していたらしく、台本らしい台本などはなく、俳優たちが自由に発言できる撮影現場だったそうです。
また演技経験がない彼女のために、ロイ役のリーは本当にベッドから動けない下半身不随だと思い込まさせることにし、トイレに行くにも介助をつけ、ずっと動かないよう徹底されていたそうで、カティンカちゃんどころか周りのスタッフすら皆彼は実は歩けるということを知らなかったそうです。役者と監督というものはすごいと改めて実感しました。
大人の男性、しかも身体障がい者と接するのは初めてのカティンカちゃんも最初は怖がっていたものの、リーと接するうちに少しづつ慣れていき、最終的にあの映画での自然な表情やセリフが出せるまでうちとけたようです。

そしてリー・ペイスですが、落下の王国が公開された当時は、まだまだ無名の俳優でした。
しかししばらくして映画「ホビット」を観た時に驚きました!スランドゥイル様!?これあの落下の王国のお兄さんじゃないか!!と(眉毛が特徴的なのですぐ気づきました。笑)
かっこよさと色気がパワーアップしてましたね。あと眉毛も。

ただマーベル映画のロナン役は彼だとは私気づきませんでした。特殊メイクがすごくて・・・
とても演技力が高く、いろいろな役ができそうな俳優さんなのでこれからも彼の活躍を見守っていきたいと思います!

以上「落下の王国」の感想でした。
皆様も観る機会があれば是非!ご覧になってください。


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