負けてなるものかと、機関車の車輪のごとく──。
嫌な予感しかなかった。利香子さんの身に何かがあったとしか思えなかった。
利香子さん、利香子さん……。
祐介は胸の中で何度も彼女の名前を呼び続けていた。夕焼けの赤が、祐介の汗まみれの顔を輝かせていた。
やがてこの峠最大の勾配である、ヘアピンカーブにさしかかった。さすがにここは漕ぐより、走ったほうが早い。素早くチャリンコから飛び降りて、手で押しながら猛ダッシュした。
夏、裏山で利香子さんを背負ってトレーニングしていたおかげか、祐介は自然と気合いと根性を振り絞っていた。「