【姉枕】怖いのは、姉さんと僕のあいだに──。
「ちょっと見ないうちに、男っぽくなったなぁ」
ヒールを履いて立ち上がった母さんが、振り向きざまに言った。見ると、感心したように目を細めて、かすかに微笑んでいた。そんなふうに、母さんから優しい目を向けられた経験がなかったので、僕はたじろいだ。
「そうか?」
「女、できたやろ」
「へ?」
一瞬で僕の心は凍り付いた。母親っぽいと感じたのはやはり間違いで、ずいぶんと、やらしい言い方で、母さんはにぃと口元をゆるめていた。そのにやついた表情に、僕はあせりにあせった。もしかして、姉さん