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『月の裏側のビデオゲーム』—未知のゲームを発掘する特集

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“ビデオゲームの可能性”を追求した、あらゆるゲームを取り上げる。あなたが知らないビデオゲームの世界がここにある。
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記事一覧

▼日常▼膨大な数があるシミュレーターの世界には、なんと電子レンジでマカロニが温められる2分半をただ待つシミュレーターもある。『microwave simulator』【月の裏側のビデオゲーム】

▲シーズンテーマ『日常』に参加しているテキストです 多種多様な要素から構成されるビデオゲームを「時間の体験」という尺度から捉えた際、ある種の極北とも呼べる作品がいくつか存在する。最低限のインタラクティブ性は担保しつつ、プレイヤーが操作可能なインタラクションを「電子レンジのボタンを押す」一点に絞った『microwave simulator』も、そんなゲームのひとつだ。 冷凍食品を温める間の2分半を眺めて過ごす行為がゲームプレイの大部分を占める本作は、長大なボリュームやリッチ

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『MapFriend』はGoogleストリートビューのいびつな風景が持つ恐ろしさを確認させる、批評的な短編ホラーADV。【月の裏側のビデオゲーム】

いまやGoogleマップは生活や仕事に欠かせないものだ。特にストリートビュー機能は行先を事前に確認するときに重宝している。東京のおいしいカレー屋のチェックから、ベルリンの旅行前に興味深いストリートアート美術館の場所を見ておくところまで頻繁に使っている。 ストリートビューは現実をシミュレーションしたマップとして優れているが、よく見ると違和感があるものを映し出してもいる。地球上の都市部のほとんどを、気づかないうちに路地裏まで360度カメラが撮影し、マップの情報にしている事実もそ

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英語圏を席巻するゲームエンジン「bitsy」のシーンについて——まるで日記や詩を作るみたいに、ゲームを作れるゲームエンジン

シーズンテーマ『日常』で特集しているテキストです bitsyとは、ミニマルなゲームエンジンです。ブラウザ上で動作し、プログラミングの知識もいらず、シンプルな操作でゲームを作れることを特徴としています。bitsyは開発の手軽さから、このエンジンのコミュニティが築かれていることも大きな特徴ですし、決められた期間にゲームを作って持ち寄るゲームジャムにおいてもしばしば利用されています。この記事では、bitsyを使って作られたゲームを「日常」というテーマからいくつか紹介します。 執

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▼日常▼ADHD当事者が生きる世界を、ゲームプレイすることで体験する『ADHDventure』【月の裏側のビデオゲーム】

▲シーズンテーマ『日常』に参加しているテキストです 発達障害の一種であるADHD(注意欠如・多動症)の当事者が生きる世界とは、果たしてどのようなものなのだろうか。『ADHDventure』は、言葉では伝えづらいそうした多様な脳とともにある人々の日常を、ミニゲーム形式のさまざまなタスクに取り組むことで体験するシミュレーションゲームだ。 本作はitch.ioの公式ページからウェブブラウザでプレイでき、クリアまでの時間は10〜15分ほど。日本語への翻訳には対応していないものの、

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▼日常▼ 謎の痛みの原因をいくら医者に聞いても診てもらえない……クリエイター・npckc氏の実話からゲームデザインされた難病診断ライフシム『気のせいだ』

シーズンテーマ『日常』で特集しているテキストです 『気のせいだ(原題:you're just imagining it)』は心をかき乱される一作である。というのも、僕自身が昨年2023年に、本作のクリエイターであるnpckcさんとゲームイベントなどでお話させていただくことが多かったからだ。 npckcさんはさまざまなジェンダーアイデンティティを持つ主人公を描いた『A YEAR OF SPRINGS』や、特殊な開放で切り抜けるホラーの『a pet shop after da

▼言語▼考古学者が古代言語を解読し、過去の歴史を探るSFアドベンチャー『Heaven's Vault』【月の裏側のビデオゲーム】

シーズンテーマ『言語』で特集中のテキストです 歴史を調べることは、同時にいまの自分の立場にあるかを知ることでもあるという。では歴史家や考古学者は、その調査のなかで自らの立ち位置をいつも思い知らされているものだろうか? 実際そうなのか定かではない。だが少なくとも、『Heaven’s Vault』の主人公アリヤ・エラスラは考古学者として、何万年も前の世界の言語をひとつ解き明かすとともに、自分の存在を確認し続けている。 『Heaven’s Vault』は何万年も過去である古代

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▼日常▼仕事のために生き急ぐな。ゆっくりした歩みから見える景色もある。『Gradually|じょじょに』【月の裏側のビデオゲーム】

▼シーズンテーマ『日常』に参加しているテキストです ランゲームの形式を用いたミニマルな体験を通じて、クリアまでの間にあるプレイの潜在的な豊かさを照らす『Gradually|じょじょに』。目標へ向かって急ぐことに焦りや不安を感じる、そんな人たちに「立ち止まってもいいんだよ」と温かく寄り添う短編ゲームです。 itch.ioの公式ページより、PCのブラウザでプレイできます。クリアまでおよそ5分程度ですが、そこには豊穣な体験に満ちています。 執筆 / ドラゴンワサビポテト 編集

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▼日常▼あのサンフランシスコの電車の中で見た日々は。過ぎ去った日常を情緒的に描く短編『Commute』【月の裏側のビデオゲーム】

シーズンテーマ『日常』で特集しているタイトルです Star St. Germainによるゲーム『Commute』はサンフランシスコを舞台にしたインタラクティブ・フィクションです。リンク先のサイトにて、ブラウザでプレイできる情緒的な短編です。 本作はbitsyというシンプルなゲームエンジンをベースにしていながら、その枠を超えるようなリッチなアートと、ニュアンスに満ちた語りを魅力としています。操作方法はシンプルでありつつ、ゲームならではの効果もはっきりと感じさせる作品であり、同

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▼言語▼文学から単語を探し、まさかの “Haiku(俳句)”を生み出す言語探索パズル『Haikuna』【月の裏側のビデオゲーム】

シーズンテーマ『言語』で特集しているタイトルです 『Haikuna』とは英文の中から単語を見つけ出し、日本の俳句——いや、 英語による“Haiku”を完成させるという、異色の単語探索ゲームだ。 本作は、英語による文学から、日本語による俳句を生み出すという、言語間の意味の違いから、別の可能性を見出していく一作でもある。英語と日本語、それぞれの言語で表現できる違いについて理解がある、翻訳などを行うゲーマーに遊んでみて欲しい一作でもある。 執筆 / ようげ 編集 / 葛西祝

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