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セロ弾きのゴーシュ?いや、俺のはギターなんだけど。

アンサンブルでは、みんな歳上だ。もう20年近くやってるらしい。俺はというと50の手習よろしく、教本3冊目に、ようやく突入しました、今は足踏み状態です。高齢化で人数の少なくなったアンサンブルに起爆剤として投入されて、そろそろ2年かな。最初は、失敗のドミノ倒しの起爆剤だった。みんな暖かいから笑って済ませてくれたけど、演奏が中断されるから申し訳ないやら、恥ずかしいやら。
失敗については、何も注意されないけど「失敗しても良いから、もっと音を大きく出すように」と、言われる。

アンサンブルの前夜、風が強かった。雨の予報も出てた。部屋でギターを弾いていたら、マフラーを改造したバイクが、あたりに響き渡る音を立てて走るのが聞こえてきた。こんな強風の中、何故、彼は走るのだろう。雨も降りそうな天気なのに、煽られて倒れそうなのに。ふと、蝉の鳴き声を思い出した。蝉は鳴き声で、つがいの相手を選ぶらしい。いつまでも泣いてるのは売れ残りだから、必死に泣き喚く。強風の中、彼が派手な音を響かせて走るのも、それに似てるのかな。

当日は、風も収まって予定通りアンサンブルだった。
俺も、起爆剤としての存在感を示さなきゃ。

宮沢賢治作「セロ弾きのゴーシュ」は、楽団のみそっかすが、入れ替わり訪れる動物達に演奏を聞かせているうちに、覚醒?しちゃう話。

そんな調子で、昨夜のバイクの音で覚醒?した俺は、失敗して元々だと、思い切って演奏した。
演奏を終えてギターに腕を乗せた。会心の出来だ。

声が響いた「音を、もっと控えめに、それに1音多い」

明日は晴れるかな