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Aesopクィアライブラリーの店員さんの対応がひたすらラブだった

Aesopクィアライブラリー。誰がどう嗅いでも良い匂い、友人へのプレゼントに最適で有名な(そして友人へのプレゼントにしか使わないからそういえば自分では一度も商品を使ったことがないでお馴染みの)Aesop(イソップ)が、なんとLGBTQIA+関連の書籍を店内に所狭しと並べたうえ、好きな本を一冊プレゼントしてくれるという赤字必至の「なんでそんなことしてくれるの?」というイベントを開催しています。

いつもはいい匂いのする石鹸やらシャンプーやら素敵な瓶が並んでいたであろう棚には、ずらりと本が並び、圧巻。本が目の前にたくさん存在するだけで正直テンションが上がるタイプの本好きである私からすると、「この空間で一生生活したい」の一言に尽きました。

うーん、それ置いちゃって大丈夫そ…?という本もちらほらありましたが、まずは本来営利を目的としているはずの企業が、営業時間中に、いろいろな力を割いてこんな赤字必至イベントを…と思うと、やっぱり嬉しいし、まずはここに至るまでたくさん動いてきてくれたスタッフさんたちに感謝だなぁと思います。

店員さんの真剣で素朴な疑問にほっこり

そんな中、一際真剣に声をかけてくれた店員さんがいました。

「どうしてこのイベントに興味を持ってくださったんですか?」
と聞かれたので
「実は大学でジェンダー系のテーマで卒論書いてまして……」
と答えると、その店員さんは
「実は私、ずっとこの問題について考えずに生きてくることができた人間なのでよくわからなくて。(LGBTQIA+の人たちとの)コミュニケーションのコツってありますか?」
と聞いてくださいました。

これ、もちろん「クィアを自分と遠い存在だと思っているから出る質問なんだ」と憤慨する方もいると思うのだけれど、私は寧ろ嬉しくて。
この問題について考えずに生きてくることができた」という言葉を持っていてそれを伝えてくれる人は、きっとこれから考えようと頑張りたい人だと思うんです。

私は、当事者としても、アライとしても、「これから考えたい」と思ってくれる人には惜しみなく応援&情報を送りたいタイプなもので、一言で「コツ」と言えるものがないか頭をフル回転させて、こう答えました。

関わる全ての人をマイノリティだと思って接することですかね……

いや、マジで普段色々考えててよかったよ。うまく一言でまとまったよ。ちょっと名言ぽいし。(本当はその前のフル回転のタイミングで「あ、そうすね、差別って難しくて、難しいですよね」とかわけわからんこと口走っていました、カッコつけてすみません)

「知らない」人が差別をする、という素朴な気づき

そう答えると、店員さんは「そっか、お客様全員マイノリティだって思えばいいんだ!」とパッと顔を輝かせたのち、すぐに曇らせました。

「私ずっと、たとえば見た目が男性に見えるお客様がいらしたら『この香り、男性にすごく人気の香りなんですよ』とかお薦めしちゃってて、そういうのってすごく傷つけちゃってたかもしれないってことですよね…」

すごくしゅんとしていらっしゃる中不謹慎(そして上から目線)ではあるのですが、私はそれを聞いてすごく嬉しくなりました。人を傷つけるのがこわいことだ、傷つけたくない、というある意味シンプルな感情が、人をもっとも差別から遠ざけるのだ、と私は思うからです。あぁ、素敵な人だな、とふわふわした気持ちになりました。

きっと本来なら、知っていたなら、そんなふうに考えてくれる心優しい人たちが、「知らない」というたった1点で差別をしてしまう。つまるところ、差別とは「性格が悪いから」してしまうものではなく、「知らないから」してしまうものが大半なんだろうと改めて感じます。そして店員さんは「知りたい」と思ってくれる人で、そして「知らない」ことで人を傷つけることのこわさを知っている人だったわけです。

素敵な人と話せたな…と心底嬉しい気持ちで、レジに去っていく店員さんを見つめながら本の海に飛び込んで、私は結局前から読もう読もうと思っていた李琴峰さんの『彼岸花の咲く島』をもらって帰りました。心の積読を物理の積読にしました。第一歩。嬉しい。早く読みたい。

素朴でラブな店員さんに出会えて、本までもらえて、良い1日でした。


李琴峰『彼岸花が咲く島』とAesop(イソップ)の試供品

帰ったら白い服の襟がお昼ご飯のすき焼きの汁で汚れてました。オシャレ空間で私はずっと襟が汚れてたみたいです。くそう。






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