西見伶

Xで短歌を投稿しています。noteでは、主に短歌小説化計画の作品を中心に、長めの文章を…

西見伶

Xで短歌を投稿しています。noteでは、主に短歌小説化計画の作品を中心に、長めの文章を投稿していこうと思います。春から浪人一年生。

最近の記事

父さんの正しさやっと分かったよ 金魚掬いに憧れた夏

僕は今日、二十年来の親友を亡くした。交通事故で、即死だった。  午前11時ごろ、彼の母親から電話がかかってきたときは、彼の最近の過ごし方を教えて欲しいのだろうと、呑気なことを考えていた。  泣きながら訃報を告げられて、僕はただただ立ち尽くすばかりだった。  僕たちは、生まれる前から一緒だったのだ。母親どうしもまた親友であり、僕の半年後に彼が生まれてからというもの、小・中・高と連れ添ってきた仲だった。大学こそ違うものの、二十年を共にして、もはやお互いのことを自分の体の一部のよう

    • 星色のインク(2) 私たちラッコのように手を繋ぐ 手首にしっかり鎖を巻いて

       夢を見ていた。  仄暗く広い、冷房のよく効いた空間。左手に、銀色の光の群れ。「お魚、綺麗だね!」誰かの声がする。ここはーそう、水族館だ。私にはそれがはっきりと分かる。私は誰かと手を繋いでいる。誰かが言う。「浪華、こっちこっち!」左手を引っ張られる。手を繋いだまま走り出す。「走ったら危ないよ!」これはーそう、母の声。私たちは、笑っていた。  一転して、今度は明るい場所を歩いている。真夏の太陽が眩しく、肌を焦がすようだ。私の左側で、誰かが言う。「ラッコさん、楽しみだね!」アナウ

      • 星色のインク(1)「星色のインクが欲しい。飲み干せば冷たく燃える星になれそうな」

         私ー東浪華は、実に醜い人間だ。  負けず嫌いで、傲慢で、そのくせ弱虫で。同級生たちとうわべは仲良く付き合っているふうでも、内心見下していたりして。そんなだから、相手との距離を一歩詰めることが怖くて、親友と呼べる友人は一人を除いてできた試しがない。  私は、毎朝鏡の前に立って、自分の顔を見ただけでも、嫌でたまらなくなる。  顔立ちは男受けする造りだし、見かけに気を遣っているだけあって、言っちゃなんだがモテるのだけれど、その内側に隠している心の醜さを思うと、朝から最悪な気分にな

      父さんの正しさやっと分かったよ 金魚掬いに憧れた夏

      • 星色のインク(2) 私たちラッコのように手を繋ぐ 手首にしっかり鎖を巻いて

      • 星色のインク(1)「星色のインクが欲しい。飲み干せば冷たく燃える星になれそうな」