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リターン トゥー フォーエバー(15)


母屋まで戻って、ともあれシンハーを頼み、海に向かって座りビンを煽る
ビールを飲むという行為はひとつの儀式だ

薄いクリーム色がかったような白の砂浜の向こうに巨大な岩が二つ
まるで門の様にそびえ、その間に見える海は浅いせいか
船で見た生々しい海とは違い、透けた淡い緑と時折翻る白い波飛沫が
綺麗だった

「急に秋の色になるんだ」
湘南の海をやたらとバイクで走っていた頃、お盆のあたりで
急に海が秋の色になる気がして
そしてその海の色を見る度に、あと何回夏が来るのだろうと
僕は思った

兄弟分を乗せて湘南に行った時、二人で砂浜に座って話した
「だんだん変わるんじゃなくてある日急に変わるんだ」
どう変わると訊かれても困るけど
彼はただ海を見ているようだった

僕はその2年ほど前、21歳の時に急に病気になり、数ヶ月入院していた
その後も完治はしないと言われ、長く生きられないと
医者になったばかりの若い女医は平気で僕に伝えた
一年ほど酒も飲まず検査を受けたりおとなしくしていたが
特に問題も無く、それでも医師は大丈夫とは決して言わず
僕は病気が治るとか治らないとかではなく、それも含めて自分と決めて
自由に生きる事にした

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