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お使ひは自転車に乗って (轟夕起子)。

轟夕起子の歌う「お使いは自転車に乗って」。上山雅輔作詞、鈴木静一作曲で、東宝映画「ハナ子さん」の主題歌でした。此の映画は杉浦幸雄の同名漫画が原作で、昭和13年秋から「主婦之友」にて連載されて大変な人気を獲得しています。映画の制作秘話云々に関しては多くの文献が存在しておりますので省きますが、監督はマキノ正博が務めており、出演は轟夕起子の他、灰田勝彦、山本禮三郎、英百合子らに加えて、高峰秀子、岸井明、橘薫も出ていました。物語は戦時下に於ける都会の中流家庭の姿を描いており、ヒロインのハナ子と夫の五郎との出会い、仲睦まじい新婚生活、出産、夫の出征…と話が進んで行きます。また東宝舞踏団によるダンスの挿入や、冒頭のコミカルな人物紹介、数々の時局歌がミュージカル仕立てで登場するなど見所が多い反面、倹約生活の奨励や日独伊三国同盟締結を万歳三唱で祝うシーンなど、戦意高揚を促す一面も備えた映画でした🎞️。

主題歌「お使いは自転車に乗って」は、歌手としても活躍した轟夕起子の最大のヒット曲であり、戦況が悪化の兆しを見せ始めた中でも大いに愛唱されました。ビクター専属の上山&鈴木のコンビが書いており、仁木他喜雄は奔放で可憐なヒロイン像が浮かぶ様な編曲を施しています。全四番構成で、轟は元気よく力強いアルトで歌っていて、それは全く曇りない明るい青空を思わせるのですが、伴奏が何処となく厳ついのはやはり戦争中の歌と云う事情もあるのでしょうか。吹奏楽器も控えめで統率された感じであり、シンバル音が妙にけたたましく聞こえるのも、検閲の都合による制限だったのかも知れません。裏面には劇中にて灰田と共唱した挿入歌の「楽しい我が家」が組まれましたが、専属の都合でレコードでは霧島昇が代役を務めました。映画のもう一人の主人公の五郎を演じた灰田勝彦も「丘の青い鳥」「緑の小径」を吹き込み、共に昭和18年春に発売されています😀。

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