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一番という袋小路

前回ビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』が結局リリカルなピアノトリオでは一番好き、と書きました。それは紛れもなく私の丸出しの本当の気持ちでした。しかしその文章を書いていて、何事も一番を決めるのってどうなのかな?という疑問がうっすら湧いてきました。

私は何かに順位を付けたり、誰かに順位や点数を付けられたり(昔は食べログが怖かった)するのが元々好きではないんじゃなかったか?と。アレよりコレが好き、という遊び?みたいなことはちょっと浅く単純すぎて、広がりのない袋小路的な場所に辿りついてしまう。特に何かの収集を趣味としている者にとっては実につまらない考えではないかと。

そして若い頃にレコード店でアルバイトしていた頃のことをふと思い出しました。それは大量の買い取りを持ってきて下さった60代位の男性が「ジャズは沢山聴いてきたけど、もうコルトレーンの『バラード』さえあればいいかなと思ってね」と言われた事がありました。まだ20代だった私はその話しを聞いて、なんか凄っ!と驚いたのと同時に、どこかちょっと淋しい気持ちになった記憶があります。

上の方の話は特に極端な例だと思いますが、私も本当に好きなものが100枚位あれば充分じゃないかと思ったことがありました。そしてX(Twitter)上でその100枚を考えてアップした事もありました。でもやっぱりそれだけじゃないな、と思いました。

確かに凄くお気に入りなものにはそうそう出会えるものではないかもしれませんが、どの作品にもアーティストのそして制作に関わった人達の想いが詰まっているし、どの音楽にも良い所があると思うようになりました(なんか綺麗事ばかりみたいな感じの文章になってきたな)。いや、たしかに趣味の世界なのだから好き嫌いはあって当たり前だけど、どれが一番とかを決めない方がずーっと趣味の世界を持続し楽しんでいられるんじゃないかと今回改めて思いました。だって趣味のない、ジャズのない世界なんて私にとったら荒野みたいなものになるに違いないのだから!

今はXではベスト100選に選ばなかったものを時々アップしています。新たに出会うジャズ盤にもワクワクしています☕️


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