【初愛】~君に捧ぐいのちの物語~① 黒田勇吾
第一章 再びの道 ①
三月十一日の午後、安田公春(やすだきみはる)は牧野石市の南風地区で行われた3・11の追悼祈念の集いに出席した後、車でひとり日和ケ山に上っていた。
曇り空で風が冷たく、春はまだこの牧野石市には来ていないようだった。外で行われた祈念の集いとその前のお墓参りで冷え切った身体を車のヒーターで温めながら、公春は日和ケ山公園の道路脇に車を駐車してしばらく考え事をしていた。
震災からちょうど四年の歳月。それは激動の日々だったが、やれることはすべてやり切った