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ライティングと建築、お互いを想い合う"東京国際フォーラム"

写真は数年前に娘とラ・フォル・ジュルネの屋外コンサートを聞くために国際フォーラムに行ったもの。
コロナが始まってからしばらくライトアップされた建物や街並みを見ていない。早く光る床の上を歩きたい。

東京国際フォーラムは東京都庁の移転に伴いコンペが開催され、ウルグアイ出身のラファエル・ヴィニオリが選ばれた。選定された理由は、要求されたプログラムを合理的に配置し、敷地特性を生かした上で多様なパブリックスペースを生み出したことだそうだ。
同フォーラムは、大小の8つのホール、31の会議室、ガラスのアトリウム空間から構成される。ホール棟とガラス棟は地下のコンコースと連絡ブリッジでつながっている。2つの棟の間に地上広場が広がり、各ホールのロビーにこの広場からアクセスできるようになっている。

この場所の照明を担当したのがLPAの面出薫氏である。事務所を設立して3日目にこの仕事の依頼があったという。国内のみならず、海外の主要プロジェクトの照明計画に長年携わっている。決してライティングが出しゃばることなく効果的に建築物の潜在的な需要を引き出している。

建築とライティングの関係は相思相愛でないと成立しない。たまに建築と照明の関係において、これが目指していたアウトプットなのか、と疑う空間もある。異なるデザイナーが携わる場合、お互いを信頼し、想い合う気持ちと技術がないとよい空間は生み出されない。
その点でこのフォーラムの秀でている点は、

1.照らすのではなく、街の一部になっている

照明が果たす役割は多岐にわたる。その中でもこの光床は、2つの棟の間にできた主要動線でありながら、街に開き、憩いの場となるこの空間の1要素になっている。アートワークや樹木や外構を形成する様々な要素と同様、空間を構成する要素として必要な役割を果たしている。

2.光は時間を視覚化する

面出氏が出した「建築照明の作法」という本の中の10の思想と27の作法がとっても素晴らしい。照明デザインは専門的な知識を要するため、専門書だと共感しづらい部分もあるが、この本では、一般人がライティングに対するプラスの印象は、こういう思想からもたらされるものなのだ、と納得。その中で「光のみが時間を視覚化する」というのが特に印象深い。光が建築物に時間軸を与えて、その変化を楽しませてくれる。

3.空間の機能に光は従う

光は主役でなく、常にその空間がどのような機能を持つか、その機能にとって必要な光は何かで決まってくる。ホール内の照明がどうあるべきか、ガラス棟のアトリウム空間の漏れ出る光は周辺の街にどのような影響をもたらすか、綿密に考えて設計されている。

建築照明の作法

私は建築に比べて照明の知識は乏しいけど、こういう空間に直面するとライティングについて考えざるを得ない。

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