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シンセが淡く響く"ART in MUSIC シティポップ・グラフィックス"

日本のシティポップが世界中で再評価されている。
数年前にyogee new wavesを聴いていたが、シティポップの音楽の影響を受け、さらに今の都会的なポップスへ進化させた、ネオシティポップと言われる括りの音楽が増えている。
1970年代から80年代まで日本の音楽シーンを彩ったシティポップ。現代ではスマホであらゆる音楽を聴くことができるが、当時はレコードの時代。レコードジャケットに描かれたビジュアルと音楽の関係性は切り離せないものであった。

そんなシティポップの名盤から周辺のジャンルのジャケットデザインを通じて、当時のトレンドやその後に与えた影響について読み解くことができる、とっても興味深い展示会「Art in Music シティポップ・グラフィックス」。


ギャラリー内

シティポップのビジュアルとして思い浮かぶのは、カラッとした青空、海、パームツリー、赤いオープンカー、夜景・・。
シティポップなのに、何故海が多く登場するのか謎だが、そもそもシティポップ自体に明確な定義はなく、ざっくり「聴いたときに摩天楼を想起させるような都会的かつ、南国のパーマツリーも思い浮かぶような音楽」だそう。
ギャラリー内でも海を含むジャケットデザインが多く、その他にビルがひしめき合う都心の夜景を扱ったCity Lightsなどカテゴライズされている。最も面白かったのはColorだ。音楽もシンセや歌声が淡く広がる感じだが、色もやや緑がかったブルーのグラデーション、パステルピンクより若干ビビッドなピンクや、淡いペールグリーン、など音楽とリンクした色みだ。そしてこうした配色は現代のグラフィックデザインでもよく見られる。

City Lights
City Pop Color

ここからはシティポップのデザインを代表する3大イラストレーターを紹介したい。

1.疾走感と直球のかっこよさ"鈴木英人"

ギャラリー内

シティポップとは関係なく、私は小学生時代に鈴木英人氏が描くイラストが好きで、ポストカードを買って部屋に飾っていた。
色ごとの輪郭を際立たせて、影や車のボディの質感などを表現しているのが特徴的。いつも空はカラッとして青く西海岸と思われる街並みやそこに佇む赤いオープンカーは、ただカッコ良く漠然と外国への憧れ、みたいなものを芽生えさせた。彼のイラストを通じてアメリカンなロゴデザインや住宅、店舗のデザインも知ることとなり、日本にはない垢抜けた感じに小学生の私は心を奪われたのだ。
山下達郎氏のジャケットで多く使われ、ポップで心地よい音楽とマッチするビジュアルでもある。

2.物語が始まりそう"わたせせいぞう"

都会的でスラッとした男女があらゆる風景の中に登場するわたせせいぞう氏の作品。作風は鈴木氏と類似する部分はあるが、やや憂いを帯びた表情の2人の間にはいつも物語があり、その表情によって風景の見え方も変わってくる。
ピアニストの松岡直也氏のジャケットにはわたせ氏の代表作であるハートカクテルが用いられている。

3.パースのアングルが絶妙"永井博"

ギャラリー内

永井博氏の作品で言うと、大瀧詠一氏の「A LONG VACATION」のレコードジャケットがあまりに有名だ。
音楽も描かれたイラストも日本ではない、とても開放的な遠い場所の常夏の時間を想起させる。
比較的シンプルな構図のものが多く、プールサイドや建物、道路のパースがきれいに効いているのも特徴的だ。さらに目線を低く設定して大胆に空を描くスペースをとっている。その空は地平線の際で薄っすらグラデーションをなしていたり、どこか哀愁が漂う。そこに異国の地を表すパームツリーがスラッと伸びている。

隣のショップでは永井博氏をはじめとするジークレーアートの販売も行われている。

Penguin&Co.

シティポップは音楽からもジャケットデザインからも淡い色や音、人や景色の中で繰り広げられる淡い感情たちがじわじわと滲み出る不思議な世界だ。

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