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プロレス場放浪記~第3回・夢と鶴見とFIREWORKSと~


はじめに

「今度、鶴見青果市場で東京女子プロレスが大会をやるんですけど、いかがですか?」

「普段と違う興行になると思うんで、是非!」

それは、今年10月頃の事だっただろうか?

SNSで知り合った方々と飲み会になった際の帰り際に、ふと、1人のフォロワー様からこんな事を言われた。


2023.11.23東京女子プロレス鶴見青果市場大会。

何でも、この興行は東京女子プロレス(以下:東女)の通常興行と異なり、2020年のコロナ禍で亡くなった、あるファンの方が愛した空気感を皆で楽しもうという主旨で行われるのだという。


そのフォロワー様は、普段自分の好きな団体があっても、「絶対来た方が良い」とか「来ないと後悔します」といった、何かを強いるような事は言わないタイプの人間だった。

そんな方が、熱心に興行のプレゼンテーションをしてきた事に、私は珍しさと意外さで驚きを隠せなかったのである。

でも、人というのは不思議なもので、熱心に薦められたものや、何度も見かける対象には気にかけてしまいがちだ。

私は、他人のレコメンドと自分の何となくな直感を頼りに、鶴見青果市場を訪れることに決めたのだった…。

鶴見青果市場

私の中で、以前から話は聞いたことがあっても、中々足を運ぶ機会がなかった会場。
その一つが、鶴見青果市場である。

東急東横線・綱島駅から徒歩で片道約25分と遠方に位置する会場ではあるが、駅からバスも出ているので、個人的にアクセスで思ったより難儀することはなかった。


会場は、向かいにあるイオン駒岡店の立体駐車場1階に存在していた。
会場前に大きく掲示されていた駐車場の看板などから、私は「本当にここが会場なのか…?」という驚きと猜疑心に見舞われた。


Google Mapで鶴見青果市場を検索した際に【鶴見爆破アリーナ】という名称が出てくるのだが、その名の通り、同会場では電流爆破マッチが多く開催されてきた。

私自身、電流爆破マッチが嫌いというわけでは無いけれど、その形式で試合を開催する団体には縁がなかった為、自然と鶴見青果市場に行く機会も訪れなかったのだ。

この日は電流爆破マッチを開催しないことが明言されていたのだが、試合が始まると、観客達はカオスの渦へと巻き込まれることになったのである…。


①限界スレスレの場外乱闘

鶴見青果市場では、「選手が会場の向かいにあるイオン駒岡店まで場外乱闘をしに行く」という話を以前より耳にしていたのだが、実際にその様子を目の当たりにすると、あまりの異空間に気圧されてしまうものだ。


セミファイナルで行われた『辰巳リカvsデモニオ・ウノ』では、鶴見青果市場を飛び出して、会場の真向かいにあるイオンまで選手達が飛び出していった。


場外乱闘はロッテリアの前まで移動して行われたのだけれども、あまりの観衆の多さと「ここに行くのは色々とヤバそうだ」という引け目から、私は遠巻きにその様子を眺めるより他無かった。

「これは一体何ですか?」

その場に居合わせた通行人が、観客の1人にこう尋ねた。

「今プロレスをやっていて、場外乱闘の最中ですね…。」

通行人は観客の回答に「ああ…」と納得した様子で信号待ちの群れを通りすぎていった。
(恐らく、無理やり納得させていたのかもしれないけれど…)

傍で聞いていても、凄まじいやり取りではないか…。


この日、私は鶴見青果市場という会場が持つ、独特な磁場の洗礼を浴びたのだ。


②持ち込まれる大量の花火

前述のように、この日は電流爆破マッチ形式の試合は組まれなかった。

しかし、メインイベントで組まれた6人タッグマッチも、セミファイナルの場外乱闘に匹敵する混沌を形成していく。


選手達がロケット花火に火をつける狂気。


直後に繰り出された、トラックの荷台から飛び降りてのフライングボディアタック。


今大会は、一眼レフカメラやミラーレスカメラでの写真撮影が禁止という、プロレス興行では異例のレギュレーションで行われた。

普段の私はプロレス観戦時にミラーレスカメラを用いて、プロレスの写真を趣味で撮っているのだが、この日はカメラをスマートフォンに持ち替えて、ルール上許されている動画撮影を多用しながら観戦。

試合中のほんの一部分ではあるものの、鶴見青果市場と火気類は切っても切れない深い結び付きを感じることができた(笑)。


メインイベントが終わった後の会場は火薬の匂いと観衆の熱気で、冬の足跡が確実に近づきつつある11月後半とは思えない、むせ返りそうな空気が流れていた。
でも、その空気には、多幸感だとか満足感といったものが確実に混ざっていたのである。


まとめ

私にとって人生初体験となった、鶴見青果市場でのプロレス観戦。


ここで実際に観た内容はどれも濃すぎて、まるで夢を見ているかのような錯覚に陥ってしまう。
駅からのアクセスが良いとは言えない環境も、非現実的な空間を形成する一要素へと転じていた。


平場の会場内も、写真を撮りやすかったり試合が観やすかったりする訳では決してない。
ただ、そうした不利を補って余りある魅力が、鶴見青果市場には間違いなく宿されていた。


私がこの混沌に再び触れる機会は何時になるか分からないけれど、また立ち寄ってみたい会場になった。
これだけは、ハッキリと言える。


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