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『宮原健斗vs永田裕志』の三冠戦を見て、私が感じた事

はじめに

2023.2.19。永田裕志、三冠ヘビー級王座戴冠。


新日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノアが管轄しているシングル王座戴冠のグランド・スラムに加え、先に達成していた3団体のシングルリーグ戦制覇も含めると、史上初の『シングル完全制覇』。
54歳9カ月での三冠王座戴冠は、天龍源一郎の52歳2カ月を更新する史上最年長記録になりました。


一方で、この結果に対して、全日ファンを中心に荒れている意見も耳にするわけでして…。

2023.1.3に永田が三冠挑戦表明した際、宮原が「ただ、『今のホームで居場所がない』だったら挑戦は受けない」という問いかけをリング上で行ったのに対し、「ネットの中傷書き込みを世間の声だと思ってる」という返しをTwitterで投稿するなど、個人的にガックリ来る部分があったのは確か。


SNS等の反応を見た限り、戦前の永田三冠挑戦に対する機運は、全日ファンだけでなくプロレスファン界隈でもイマイチという実感がありました。

そういう状況も加味しての王座移動となったので、「暫く全日行くのやめようかな…」みたいな意見を見かけたのは、1人や2人だけではなく…。


ただ、実際私が試合を見に行って、感じた部分もあった訳でして。
それは何も、否定だけではなく、認めざるを得ない凄みも含まれていた。
ただ、言いたくなる気持ちはめちゃ分かる。そんな感じ。

今回は、私の中で整理のつかない思いを、記事にして吐き出してみる事にしました…。


①【声援が勝たせた】三冠戦

私が今回の三冠戦で肝だと感じた箇所は、観客の声援。

今大会は声出し可能な大会で、前説の段階でコール練習も兼ねての永田・宮原コールの割合は、6:4で宮原という体感がありました。


試合開始前にまず感じたのは、永田コールの大きさ。
開始直後のコール合戦は、ナガタとケントで二分。
どちらのコールかハッキリ聞き取れないレベルで分かれていました。


試合の方ですが、宮原が掌握していた感は否めず。
ただ、永田も腕攻めに活路を見出していた事で、一方的な流れにならなかった印象はありました。


しかし、この日の永田が凄いと感じたのは、ファンの声援による後押しだったんです。


冒頭は二分されていた声援も、終盤に差し掛かるにつれて、永田コールが圧倒。
会場の「永田に勝ってほしい」という願いや希望がアウェーの地でも圧倒していたのは厳然たる事実で、そこを宮原サイドは覆せなかったのは痛かった…。


多分、声援禁止だったなら、ここまで盛り上がりも納得も生まれていなかったはず。

その点でも、【会場の声援が永田を勝たせた】三冠戦だったように私は感じました。


②「このベルトを持っている限りは~」に覚えた違和感と納得

「このベルトを持っている限りは、この全日本プロレスを盛り上げます」

上記のコメントは、試合後に永田がマイクを握った際のもの。

ただ、揚げ足取りになってしまいますが、個人的には「このベルトを持っている限りは~」という箇所に引っ掛かりがありました。
意地悪な言い方になりますが、戦前の盛り上がりに欠けたのは「ベルトを持ってないから、全日を盛り上げていなかったの?」と言いたくなってしまった訳でして…。


個人的に、今回の三冠戦でイマイチ機運が高まり切らなかった理由は、【全日を盛り上げる】という点にあるんじゃないかと。
永田がファンに対する納得感だったりを試合等で高めきれないまま三冠戦を迎えたことで、「グランドスラム目的なんでしょ?」という疑念を払底できなかったのは否めず。


比較しちゃいけないとは思っているんですけれど、似たようなシチュエーションということもあって、2022年にプロレスリング・ノアに小島聡が参戦した当時と重ねてしまう私がいます。


当時の小島も【GHCヘビー級王座を獲ればシングル王座のグランドスラム】とリーチがかかっていた状況でしたけれど、小島の場合は新日所属にもかかわらずNOAHロゴTシャツを着用してきたり、試合で盛り上げた上で潮崎豪が保持していた王座に挑戦したり、機運と納得感をしっかり高めた上で辿り着いた印象なんですよね。


だから、外敵という立場にもかかわらず小島がNOAHファンから支持されているし、小島への批判的な意見に対してNOAHファンが小島の味方をする様子もちょいちょい見かけるくらい。

こういうコジとNOAHファンみたいな関係性を、永田が全日ファンと築けたかどうかが実は大事だったんじゃないかな、という気はしてるのですが、現状そうはなっていないですね…(白目)。


③良くも悪くも、今後の防衛ロード次第

賛否分かれた感のある、今回の永田の三冠戴冠。

正直、試合を見ていて(ネットで言われている)「動けてない」というよりは、「今ある手持ちのカードを活かしている」印象でした。
ただ、防衛する相手は限定されそうだなあ、とも。


三冠王者・永田が、全日でそうした納得感を重ねていけるかどうかは、良くも悪くも今後の防衛ロードにかかっている感あり。
今回の三冠戴冠が、ただの「記録達成」だけで終わってしまうのか、「人の心を動かす」防衛ロードを築くかでは、中身も大きく異なってくる気がしてます。


武藤敬司だって、2021年のGHCヘビー級王座戴冠時はNOAHファンからショックの声も聞かれましたけれど、試合の納得感で圧倒していったわけで、三冠を持ってる以上、永田のそういう姿は見たい所。


全員の意見は覆せないかもしれないけれど、変えて認めさせる事は出来る。
私は、それが出来るかどうかで評価も変わる気がしてます。


まとめ

今回の『宮原vs永田』を見て、上記の3点以外に感じた事がありました。

私自身、色んな団体を見るのが好きで、メインで見ている団体も全日では無い自覚があるのですけれど、この結果に熱くなっているファンの方たちを見て、「私はこれだけの思いを持って、一つの団体を応援したことがないんだよな」と感じたんですよね。

多分、この悔しい感覚だとかは、"箱推し"でしか感じられない特権かと。


皮肉でもなんでもなく、それだけ熱量を注げる団体がある。
「こんだけ愛されてる全日本プロレスって凄くないですか?」と。

だからこそ、そういうファンを失望させないでほしい、という願いは勝手ながら抱くわけでして。


個人的に、暫く三冠の座に手が届いていない石川修司(次期挑戦者)、三冠未戴冠の青柳優馬、(所属外ですが)永田と因縁のある鈴木みのるなど、防衛ロードで面白そうな顔触れは見れるんじゃないかと思っているので、その点にも期待しながら見たいと思います。


しかし、私はこれで、3年連続グランドスラムを見たことになるんだな。
貴重…。
(2021年:武藤敬司、2022年:小島聡、2023年:永田裕志)

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