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I Just Called Only To Realize I Love You

私がnoteで紹介する歌は、年齢に見合わずひと昔前に発表されたものばかりで困る。

今回はStevie Wonderの”I Just Called To Say I Love You” (1984年)。ご本人が歌っている映像を観たのはまだ私が幼い頃のことで、それがプロモーションビデオであったかライヴ映像であったかさえ定かではない。ただ、受話器を模したマイクでステージ上で歌い上げる姿は不思議と印象的だった。「ただ君を好きだと言うために電話を掛けた」――中学英語で習う文法・単語から成る平易なタイトルも、この曲が記憶に残っている理由のひとつかもしれない。


しかし、この曲の邦題は表面的には原題に忠実ではなく、『心の愛』という。これこそ翻訳の妙だと思う。そもそも異なる言語で書かれたものが、完全に一致するはずがないのである。原題の直訳からは遠く離れて、それでいてニュアンスを崩さない。”I Just Called ~”を『心からの愛』でも『愛の心』でもなく『心の愛』とすることに、翻訳の翻訳たる所以がある。



その点、最近の洋楽の邦題を見ると少し寂しい。世界的に人気のColdplayによる”Every Teardrop Is A Waterfall” (2011年)は『ウォーターフォール〜一粒の涙は滝のごとく』、”Adventure Of A Lifetime” (2015年)に至っては『アドヴェンチャー・オブ・ア・ライフタイム』である。なんとヒネリのないことか。特に、原題をカタカナで書き換えるだけというパターンは近年の曲に多いかもしれない。



――さて、この投稿のタイトルだ。直訳すれば「電話を掛けてみたけれど、君を好きだと再認識しただけ」だが、分不相応に邦題をつけるなら『ほどけぬ言葉』などどうだろうか。心の中にある想いの糸をほどけず、言葉にできない。ただ、それは、簡単にはほどけないほどの気持ちの裏返しでもある。実感のこもったそんな感覚を重ねてみた。



そんな電話をしていると思い出す歌がある。Billy Joelの”Just The Way You Are” (1977年)である。

I said I love you and that’s forever

And this I promise from the heart

I could not love you any better

I love you just the way you are



『素顔のままで』。シンプルな歌詞にシンプルな題。これもまた、いい。

(文字数:1000字)

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