見出し画像

情報収集における、建築の歴史という縦軸と、同時代のクリエーションという横軸。

こんにちは。
久々になってしまいました。アーキテクチャーフォトの後藤です。

以前から漠然と考えていたことを、ふと思い出したので、ザックリと文章化を試みてみます。

ぼくはメディアの運営を生業としているので、ネット上や誌面上の情報をとりあえずなんでも見まくる、という生活を日々送っているのですが、その情報の取り扱いや収集の仕方にも、自分の中に軸があるような気がするな、とメタ視点で考えながら日常を過ごしてきました。

ぼくは建築分野を専門としているので、建築に関して言えば、過去の名著を読んだり、歴史的な建築を見に行くこともしますし、その背景にある歴史についても知りたいと思っています。建築の歴史を遡って知ることは、未来の建築を想像するヒントになりますし、自身が見学した現代建築を、その歴史の中でどのように新しいのかを考察するための知識にもなってくれます

このように自身の専門分野である建築に関しては、時間を遡って色々と見るようにしています。

これが、ぼくにとっての情報収集の縦軸になっています。

そして、もうひとつ、同時代のクリエーションもかなり意識的に見るようにしています。アートであったり、ファッションであったり、デザインであったり、ビジネスであったり。それらを総合してクリエーションと言っています。それらの他分野にも固有の歴史があると思いますが、そこまで深くは追いかけていませんが、同時代に発生している現象には気を配っています。

それはなぜかというと、同時代のクリエーションには、同じ時代に生きている人間として社会をどのように見ているかという認識や社会背景がその作品の中に表現されていると言えるからです。それらを見ていくことで、現代社会というものがどのように変化しているのかに気づくこともできますし、他ジャンルでの試みが、自身のフィールドである建築という分野にも応用できると考えているからです。

例えば、ファッションの分野を見てみます。現代のファッション分野においては、ユニクロがプラットフォームのように君臨しており、またZARAなどをはじめとするファストファッションと呼ばれるブランドが台頭して定着しています。それによって、洋服の単価や人々の中の認識も大きく変わっているという状況があります。その中でファッションブランドはどのようなクリエーションを試みているのか、ということは、建築分野にもフィードバッグできると考えています。

建築分野で言えば、商品化住宅が一般化したり、建売住宅で家を買うという状況が一般化していると言えます。そのような社会環境で、建築家がどのようにふるまうべきか、という問題のヒントが、先に書いた同時代の他分野のクリエーションの中にヒントがあると思っているのです。

例えば、ぼく自身はコムデギャルソンオムプリュスというブランドを昔から定点観測しています。90年代に発表されていたコレクションと、現在のコレクションを比較していくと現代のコレクションの方が圧倒的に前衛度が増しています。この背景には、ユニクロやファストファッションの台頭が確実に存在していると思っています。ベーシックなある種道具的な服が安価で手に入る状況が生まれたために、服を買うという行為が、より趣味的なものに移行している、と見ることができるでしょう。

ここには、川久保玲というデザイナーが社会をどのように認識し、そのクリエーションに反映させたか、という意思を読み取ることができます。

そして、それを知ることができれば、自身が建築と言う分野でなにをすべきか、と言うことが想像しやすくなると思うのです。

これが、情報収集の横軸になっています。

建築の歴史という縦軸と、同時代のクリエーションという横軸を意識して情報を閲覧して収集してきたんだなあ、とこの文章を書きながら再確認してきました。この二つの軸を意識すれば、自身の建築を、その歴史の中に位置づけたり、自身が現代を生きる建築家として、どのようにふるまえば良いのかという思考がずいぶん楽になると思います。

(この「建築」という言葉は、ご自身のジャンルに置き換えてもいいと思います)

最近、若い建築家の方々と話す機会が増えています。皆さんとても真面目で勉強熱心なのですが、建築の枠を超えてしまうと、同時代で話題になっているクリエーションの話やビジネスの話が通じにくいな、と思ったことは何回かあります。

同時代のクリエーションと言う横軸を意識することは、とても重要だなあと思って、ここに書いてみました。

ぼくのような、ものを見るということを専門にして生きていると、素晴らしい建築家や、アーティスト、建築物、作品、に出会うことが多々あるのですが、それぞれに共通して感じるのは、この人たちは「人間についてよくしっているなあ」という事です(飛躍しましたが。笑)。

結局何かをつくって、それを見てもらい、評価をうけるということには全て人間が介在しています。だから、人間のことを知っていないければ、評価されることもないし、見た人を感動させることもできないと思います。

ものやデザインの背景にある人を意識すること。人間をより深く知ること。この鍛錬には、同時代を生きる人たちがつくったものや話を聞くことは欠かせないと思っています。

最後、説教くさい話になってしましましたが(笑)、ぼく自身が意識している情報収集の軸について書いてみました。

アーキテクチャーフォトの後藤でした!


皆様に、有益な情報をご紹介できるよう活用します!