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蟹スキに少しのぽん酢 銘醸の力強いソアーヴェの完璧な調和

年末に山陰の温泉旅館で蟹づくしを堪能した余韻冷めやらぬなか、自宅で蟹スキを楽しむ。

昆布でだしを取り、酒、醤油、みりんを少々。

そこに白菜、長ネギ、しいたけ、豆腐を入れてしばし煮込む。秋田県産の大ぶりのしいたけは見るからに美味しそう。

ふるさと納税で届いた冷凍の蟹は解凍してスタンバイ。さっと軽く火を通して次々に蟹を食していく。

合わせたフランスのワインはシャンパーニュとブルゴーニュの古酒(1997ビンテージ)の2種、イタリアからはアルプス山脈そびえるトレンティーノ・アルト・アディジェ州のスパークリングワイン、北西部リグーリア州のヴェルメンティーノ品種、シチリア島エトナ火山のふもとの畑の地場ブドウ4品種ブレンド、南部カンパーニャ州土着のフィアーノ品種、ヴェネト州のソアーヴェ(ガルガーネガ品種)の5種。

ローラン・ペリエ ラ・キュベ, シャンパーニュ, フランス, 8,195円
Laurent Perrier, Champagne, La Cuvée, Brut, 12%,

ぶどう品種シャルドネ50-55% ピノ・ノワール 30-35% ピノ・ムニエ 15-20%。
香りにはやや厚みのあるリンゴのコンポート、リンゴジャム、シナモンの華やかなスパイス香、ヘーゼルナッツ、ブリオッシュの芳ばしい香りと複雑で奥行き、バニラのように甘美な芳香が艶っぽい。
風味にはリッチで厚みのある果実味、こぎみよい酸味、舌に残るフェノリックなタッチは黒ブドウの恵み、ヨードのようなミネラルのニュアンスに富むのが明確な個性。
蟹スキに合わせる。野菜、昆布、シイタケなどの出汁を吸い込んだ旨味爆弾のようなカニの身を、適度にフレッシュさを備えたシャンパンが心地よく引き締める。このシャンパンのフレッシュな果実味とシャンパンらしい奥行きや複雑さの絶妙なバランスは、蟹スキの出汁の重層的な旨味によりも、焼き蟹の香ばしいフレーバーへの相性が良さそう。相性: ★★★☆☆

ロータリ ブリュット プラチナ, トレントDOC, 2016, , 12.5%, 1,746円
Rotari Brut Platinum

アルプス山脈がそびえるイタリア北部トレンティーノ地方に位置。
自社ブドウ100%にこだわる。ステンレスタンク発酵。シャルドネ 80%、ピノ・ノワール 20%。
はっきりとした色調は7年熟成を思わせる、非常に細やかな泡が緩やかに持続的に立ち上がる。
香りにはリンゴのコンポートの厚みのある果実香、海藻のヨード香、微かに干しわら、やや複雑なヘーゼルナッツ。
風味にはみずみずしくピュアな果実味に、心地よいシャープな酸味、中盤からヨードのニュアンスに富みややビターな余韻に、鼻腔にはブリオッシュが抜ける充実の質感。
蟹スキに。出汁をたっぷりと吸い込んだ蟹の身に、ワインのドライでフルーティーな風味が薬味のように作用し調和。相性: ★★★☆☆

ルナエ, エチケッタ グリージャ, コッリ・ディ・ルーニ, ヴェルメンティーノ, イタリア, 2021, 2,492円
LVNAE, Colli Di Luni, DOC, Vermentino, Italy, 2021, 12.5%

トスカーナ州とリグーリア州の境にワイナリーと畑をもつ。コッリ・ディ・ルーニは両州にまたがる産地の呼称だ。ワイナリー名のルナエの由来はラテン語の「Lunae(月)」。古代ローマ時代、ワイナリーの土地の近くに「Luna(イタリア語で月)」という名の町があり、高品質なワインを造っていた町でもあったことにあやかった。
香りには青リンゴ、メロン、スイカズラ、ほのかにグァバ、白桃の果実香に白い花のフラワリーなフレーバーが豊かに、穏やかに混じる潮の香りがワインのフレーバーを完成させる。
風味にはみずみずしいピュアな青リンゴジュースを思わせる清々しくハリのある果実味、酸味は中庸からやや穏やか、余韻にほのかに舌にフェノリックなタッチとほろ苦さが心地よい。
蟹スキに。ワインのハリのある上質な果実味は殻に近い赤い身ではなく、真っ白な身の部分の旨味を引き立てる。相性: ★★★★☆

マストロベラルディーノ, ラディーチ, フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ, カンパーニャ, イタリア, 2021, 2,732円
Mastroberardino, Fiano di Avellino, Radici, Campagna, Italy

イタリア南部ティレニア海沿いのカンパーニャ州で造られる。標高520-620mの単一畑で栽培される地場のフィアーノ品種。
香りには青リンゴ、ライチの爽やかでほのかに甘い香りに、潮の香り、白胡椒のスパイス、樹脂のような香りやヨードのニュアンス、フラワーな香りも強く、セルフィーユなどのハーバルな印象も。
風味はみずみずしく果実味は程よくコントロールされている、果実味がややおとなしめな分、明瞭に感じる酸味、やや明瞭な塩味、余韻にはほのかにフェノリックなタッチとほろ苦さを残す。
蟹スキに。ワインのほのかに甘やかな果実味の香りは殻に近い赤い身ではなく、真っ白な身の部分の旨味を引き立てた。相性: ★★★★☆

テッレ・ネーレ, エトナ・ビアンコ, 2,695円
Tenuta delle Terre Nere, Etna Bianco, DOC, Sicilia, Italy, 2020, 12.5%

シチリア島、ヨーロッパ最大の活火山エトナのは島の東側海岸近くに位置し、またかつては海底火山だったとされる。その火山の北斜面、海抜700mに位置する火山灰土壌の面積 2haの畑で栽培されるブドウで造られる。
カッリカンテ50%、カタラット25%、グレカニコ15%、インソリア10%と4種のブレンド。樹齢は60年超。
香りには青リンゴ、白桃、ほのかに杏、白と黄色の花のフラワリーさが豊かに、微かにセルフィーユのハーバルなタッチ。ヴィオニエとピノ・グリージョ品種の香りをいいとこどりしたよう。
風味にはみずみずしい口当たりにハリのある果実味ながらミネラル豊かで柔らかいビターなタッチが心地よい引き締め、強すぎず的確な酸味、中盤からほろ苦さがゆるゆると続く。
蟹スキに。ワインのフラワリーな香り、豊かなミネラルのニュアンスは、殻に近い赤色の身の強めのフレーバーに絶妙に調和。相性: ★★★★☆

ピエロパン, ソアーヴェ クラッシコ ラ・ロッカ, ヴェネト, イタリア, 2020, 12%, 3,773円
Pieropan, Soave Classico DOC La Rocca

ラ・ロッカは海抜200~300mに位置する南西向きの畑。石灰質と粘土が豊富な土壌。短期間マセラシオンの後、ガラスで内張りしたセメントタンク(2500L)を用いて発酵。2,000Lと500Lの樽に移し替えて澱とともに約12ヶ月間熟成。さらに数ヶ月の瓶内熟成。
ゴールドがかったはっきりとした強い色調。
香りにはりんご飴、リンゴのリキュールなどの濃密なリンゴの香りに、バニラ香は炙ったバニラビーンズを鼻の前に置いたよう、複雑なヘーゼルナッツ、明瞭にアカシア、フラワリーな蜂蜜、微かにヨード香や海藻や炙りわかめのニュアンス。
風味は厚みのある凝縮感の強いリッチでまったりとした果実味は陽のニュアンス、塩味やヨードのニュアンスはワインを心地よく引き締めワインを支える陰のニュアンス。陰と陽の両面をバランスよく備える。余韻にも豊かにバニラ香が広がる。
蟹スキに。ここでポン酢を付けてみた(鍋に出汁が効いているので更なる味付けはやりすぎかもしれないが味変だ)。ポン酢に引き立てられた蟹の旨味に、ワインの樽の効いた重量感のある果実味が混然一体となる。相性: ★★★★★

ルモワスネ ブルゴーニュ・ブラン キュヴェ・スペシャル, フランス, 1997, 4,266円
Remoissenet, Bourgogne, Cuvée Spéciale, France, 1997, 13%

艶やかなゴールドは年月を感じさせる色調。
香りにはアプリコットジャム、開栓日はバニラやカスタードなどもあったが翌々日にはかなり穏やかに、リンゴ酎やリンゴリキュールのリンゴの力強いフレーバー。
風味はカドが取れ穏やかでややまったりとした果実味、酸味はかなり削ぎ落とされているが奥にきらりと残る、果実味は蜜のような風味に発展、中盤から余韻にかけてほろ苦さやヨード、ミネラルを感じる、鼻腔をドライアプリコットが抜けていく。
蟹スキに。古酒特有のワインの奥にある微かな蜜のような風味が出汁を吸った蟹の旨味に調和。ただ、ワインが複雑すぎて料理とのバランスが少々微妙か。相性: ★★★☆☆

蟹スキとひと口にいっても、蟹の部位や味付けによってワインとの相性は様々で楽しい。殻に近い赤色の蟹の身にはエトナ火山の麓のミネラル豊かなワイン、白い身の部分には果実味とミネラルのバランスの良いリグーリア州のヴェルメンティーノ品種とカンパーニャ州のフィアーノ品種、味ぽんには銘醸の力強いソアーヴェだ。味ぽん+ソアーヴェが最も印象に残る素晴らしい組み合わせだった。

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