パンデミックがやってきた。
なんでも罹ると脱皮するという。
犬も、猫も、人間も。動物全てに感染力があるらしい。
予防法としては、手指の消毒、うがい、手洗い、洗体などが有効とされていて、まだ科学的によくわかっていない。
パンデミックが続いて一年後、まだ終息とは程遠い真夜中。
家にいる1匹の猫が脱皮し始めた。
今までの皮毛を脱いで、黒が新しくキジ色になっていた。
はて。どう接しようかもわからない。なにせ相手は猫だし……。
万が一、触れて感染ってしまったら今までの感染予防が水の泡になる。
とりあえず私は感染予防よりも猫への愛が大事と判断し、キジ猫を風呂場で洗体した。
風呂場から上がると茶色の猫も脱皮し始めていた。これは止まらん。
何故か茶色が白色に変わっていた。否応なく白猫も風呂場で洗って遣った。
猫だからと言って普段洗わなかった自分も悪いし、良い機会になった。
さて。保健所は明日か……報告して猫たちが殺されなければ良いなと頭の中をいろんな考えがめぐったが、今度は私の番だった。
ひどく乾いた音を立てて、私の体は黄色から血管の透けるような白くて透明な肌に変わっていった。
特に痛みは無かった。むしろ剥けるのが面白くなっていった。
少し冷めた風呂に入りながら、明日からの生き方を模索するのはこれからだと考えた。
パンデミックとは言え、猫の色を変えられたり、白色人種になれたのはちょっとありがたいものだと思っていた。
おわり
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