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迷惑すぎるあの国のお爺は本当にやめてほしい。

毎度毎度文句を言うつもりはないのだが、と、ウソをつくつもりもないのだがウソをついてしまった。文句が言いたいのだ。逆に文句しか言いたくないくらいだ。俺の血圧をどうしてくれたいのだろうか。

大体文句を言いたいことなんてちょっとしたことなのだろう、この小さい男め!と蔑みの言葉を投げつけようとしている方々もおられるかと思うが、俺の話を聞いてからにしてほしい。あなたならその状況を怒りの方向に感情を揺り動かさずにいられるのかどうか。もしいられると言うのであれば是非俺に晩飯をご馳走してほしい。ただ、いられないというのならディナーでもいい。

さて、ジムのロッカールームのドライヤーであんなところやこんなところまで乾かしているあの国のおじいさんたちがいると怒りをあらわにしたことがあったかと思うが、思いもよらない事件?は尽きない。

ボディコンバットを終え、シャワーを浴び、体を拭きながら服を着ようとしていたところに、パンツ一丁のあの国のお爺がひとりアイロン台の前に陣取った。そして台の上にズボンを広げる。まな板の上の恋、いや鯉、ではなく、アイロン台の上のお爺のズボン。ズボンはお爺のかどうかは分からない。お爺のかもしれないし、そうでないかもしれない。お爺の孫のかもしれないし、お爺の嫁のかもしれない。そんなのはマジでどうでもいい。お爺が朝飯に何を食ったのかくらい興味がない。食っていないかもしれないし…えっ、ダラダラダラダラこのクダリ必要?って思った人も居ると思うが、俺もそう思う。要る?いや知らんよ、と思った方、俺にどうか晩飯を…

とにかく、そのお爺が俺のロッカーの2つ隣にあるアイロン台でズボンにアイロンをかけはじめた。

まあいい。それはいい。お爺もズボンにアイロンくらいかけるだろう。俺はそっちの方を見ないようにして着衣に注力した。集中して注力した、つもりだった。が、しかし、けれども、よからぬノイズが俺の左の鼓膜を容赦なく刺激してきた。避けきれるものではなかった。

ブブッ、ブブブブッ、ペッペッ

俺は当然耳を疑った。その疑いの真偽を確認するべく音のする方へ振り向いた。すると俺の察した通りのことが目の前で実施されていたのである。

お爺は自分のツバを水代わりにズボンにペッペッと吐きかけ、その上にアイロンをかけているのだ。

俺は自分の口がアングリするのがわかった。これがアングリだ。「びっくり仰天」という言葉は知っていても実際にびっくりして仰天したことは無いのと同じで呆れても呆れ果てても口がアングリすることはない。しかしこのときの俺は口がアングリしてしまったと思う。それほどのことが実際に目の前で起こっていた。これが即座に受け入れられるだろうか?こんな光景はこれまでに見たことがないし、思いつきも考えつきもしない。

お前の汚い唾をその公共の?アイロンにこすりつけるんじゃない!もう本当にマジでやめて欲しい。一体なんなん???どういうつもりがあってそんなことするん?アイロンかけに唾吐くか?なんなん、もうっ!

俺は怒りを鎮めるべく、ちょっと離れたベンチに靴下を履きに行く。トラブルを起こすわけにはいかない。

するとお爺が俺の前を通ってトイレに入っていった。そしてジャア―と水の音がしたと思ったら、首と胴体をそれぞれの手に持って出て来た。それはもちろん人間の、ではなくスプレーのだった。個室のトイレに置いてある便座用のスプレーだ。お爺はそのスプレーの中身を捨てて自分がかけるアイロン用に吹きかける水を入れようとしていたのだと思う。それも俺には信じられなかった。ジムの規則にはいちいち書いてないだろうが、そういうのってモラルとして許されるのか?やりたいことをなんでもかんでも自分の思いつくままにやっていいわけはないだろう。自分主義が過ぎ過ぎるのだ。過ぎ過ぎるという言葉があるのかどうかは分からないが、一番当てはまる。

俺はもう怒りで頭のなかが悶々としていたのだが、午後のお稽古の時間に遅れるわけにもいかなかったので、鏡の前に行き、ドライヤーで髪の毛を乾かした。

そのドライヤーもお爺のきたない菊の門を乾かした後かもしれなかった。

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