見出し画像

中国なのにハングルがあふれる街、延吉を見てきた

 中国には漢民族以外に55の少数民族がおり、規模の大きい民族は各地にその民族の名前を掲げた自治体を持っている。代表的なものがモンゴル族の内モンゴル自治区や、ウイグル族の新疆ウイグル自治区である。これら2つは省に匹敵する大きな行政区分だが、それ以外の地域にも小さい自治体は多数存在する。今回は、その一つである延辺朝鮮族自治州へと向かった。

 延辺朝鮮族自治州は中国の東北である吉林省に属し、その東部に位置する。その名が示す通り朝鮮族が多数住む地域だ。最大の都市・延吉では、人口に占める朝鮮族の割合が4割にのぼる。


延辺朝鮮族自治州の位置

 延吉へは、吉林省の省都・長春から高速鉄道で向かった。高速鉄道とはいえ高規格の路線ではないため最高速度は200km/hに留まり、およそ350kmの道のりを2時間半かけて進む。列車を延吉西駅で下車し、バスで市内へと向かう。小さな街ながらBRTシステムが整備されており、主要な場所への移動は便利である。

延吉西駅の外観、漢字とハングルが併記されている

 延吉は朝鮮族が多く住む街だけあって、店の看板や施設など、至るところで中国語とハングルが併記されている。街中や店では、ここに来る前の期待に反して、朝鮮語がそこまで多くは聞こえてはこなかった。朝鮮族の街とは言っても漢民族の人口のほうが多く、彼らはほとんど朝鮮語を解さないはず。また、店で普通話で話しかけられるのも、我々が明らかに旅行者だとわかるからだろう。私と同行者の二人とも北方出身の見た目をしていないし。
 しかしながら、朝鮮族と思しき人の、特に年配者の話す中国語からは東北訛りのほかに、韓国人の話す中国語のような、朝鮮語からの影響もわずかに感じられた。西市場という観光地としても有名な場所で店を出していたおばあさんは、もともと朝鮮語しかわからなかったのだが商売のために普通話を勉強したそうだ。中国人にしてはそんなに言葉が流暢ではない気がしていたのだが、それを知って合点がいった。


左上がそのおばあさん。小红书でも投稿している人が何人もおり、彼女はちょっとした有名人である
蜜雪冰城も延吉ではこのとおり


SNS映えすることで有名な网红墙


毎日隆というコンビニをよく見かける

 延吉の街中には「毎日隆」というコンビニが各地に出店していた。現地資本のコンビニチェーンのようだが、同じ吉林省でも省都の長春では見たことがない。恐らく延吉あるいは延辺朝鮮族自治州内にしかないローカルチェーンなのだろう。店内には韓国からの輸入食品が数多く置かれていた。

 市内に韓国資本の店が見当たらないのが意外だった。韓国との繋がりが深いのだから、コンビニも現地資本ではなく、韓国のコンビニチェーンであるCUくらいあるのかと思っていたが、それもなかった。(マレーシアやモンゴルにはあるのに)
 これが意味するのは、延吉が韓国の延長ではなく、あくまで「『中国の』朝鮮族の街」であるからだろう。CUが出店しているモンゴル国は韓国人の旅行者が数多く訪れるだけでなく経済的な協力関係にあり、韓国にもモンゴル人労働者が多い。一方の延辺朝鮮族自治州というと、ここから韓国に出稼ぎに行くのは一般的で、その存在は韓国国内でも知られているようだ。だが、逆に韓国人にとって延辺への思い入れは少ないのではないだろうか。

 今回、延吉に行ってみて、吉林省の端に位置しているのにも関わらず発展しており、人もそれほど多くなくコンパクトにまとまっていて異国の要素もあり、すっかりこの街を気に入った。長春からは高速鉄道で2時間半、飛行機で行くならソウルから一日何本も飛んでいて僻地の割にアクセスは悪くない。もし今後中国にビザ無しで渡航できるようになれば、韓国旅行のついでに延吉を訪れてみるのもいかがだろうか。
 今回は長くなったのでこの辺で。次回は延吉の隣の図們に行って北朝鮮との国境を見に行く。


毎日隆では韓国の食品が充実しており、アイスもたくさんあった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?