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Week5: 二酸化炭素をつかまえろ(Negative Emissions technology)~社会人17年目のイギリス留学🇬🇧

大学院で学んでいると、自分のルーツ、源流みたいなものを感じることがしばしばあります。
私の父親と祖父は、どちらも、理系のエンジニア、研究者のバックグラウンドで、戦後の復興から高度経済成長を経て、日本が技術立国になる過程を支えてきたひとたちの1人です。
私自身は文系で、プロジェクトマネージャーとして企業の中の変革をゴリゴリ進めてきましたが、祖父や父にゆかりのある製造業系のお仕事も担当したことも多くあります。
そんなバックグラウンドもあってか、学んでいて楽しい、ワクワクするのは、イノベーションがどう起きて、社会がどんなふうに変わるのかのイマジネーションがわく話を聞いた時。

気候変動、特に脱炭素でいえば、風力の躍進や中国のソーラーパネルの席巻は目覚ましいものがあり、次に来るものの一つは、ネガティブエミッションといって、二酸化炭素を捕まえて地中に埋めたり、再利用する技術じゃないかなと感じています。
秋学期もこのテーマを扱って、海運企業が投資した場合の利益やキャッシュフローを試算しましたが、この時はあんまり儲かる試算になりませんでした。。
なので、政策面からも、あとおしが必要なんじゃないかな、ということで、いま、”エネルギー政策とサステナビリティ”の授業のグループワークでこの技術について調べています。

Negative Emission Technologyって?

温室効果ガス(主には二酸化炭素)をつかまえて空気中に拡散しないようにする技術のことを総称してネガティブエミッション技術、と言います。
今週読んだ論文(: Nemet et al., 2018, Negative emissions—Part 3: Innovation and upscaling)では、パリ協定の1.5度、2.0度目標の達成のためには欠かせないものとされる一方、技術分野としてはまだ新しく、研究開発ステージの論文が多いので、どう社会に適用してスケールアップするのか、というのはこれから議論されていくべきである、とされていました。
また、発展途上であるがゆえに、特定の技術にバンっと投資するよりも、いろいろ試してよいものを探るステージととらえたほうがよい、とのこと。
なお、代表的な技術例としては、以下のようなものがあります。大きく自然の力を使って回収する方法(①②)と、工業的に二酸化炭素を集める方法(③~⑤)とがあります。
①新規植林・再植林
②Enhanced weathering (風化促進法)
③CCS(CO2回収・貯留)
④BECCS(回収・貯留(CCS)付きバイオマス発電)
⑤DACCS(直接空気回収)

イノベーションにおける政策の大切さ

しかしながら、こうした技術を企業がいろいろ試してみたり、結果を官民共同で分析してこういう技術にもっと投資して産業として儲かるようにしていこう、みたいな政策があるかというと、まだ成功した事例は少ないというのが実態。
例えば、また別の論文(Haszeldine et al., 2018)では、↓みたいな分析がされていました。
・EUの二酸化炭素排出権取引においても、再エネを使うことは動機付けされているが、ネガティブエミッション技術に投資するためのインセンティブは実装されていない
・CCS設備を建設するのに適した場所を探して、環境への影響や地域住民と合意形成をし、建設をして稼働する、という一連の動きには政策的意思決定が必須で時間もかかる

まだ調べ始めの初期段階ですが、一企業だけで投資するのはなかなか難しそうな感じだったのね・・・。
アカウンティングの観点からみても、地域住民など含めて誰をステークホルダーとして合意形成する必要があるのか、そのためにどういった情報を開示するのか、そもそも、誰が(政府/企業/市民社会)どの説明責任を持つのか、といった枠組みの設計が必要だなと考えています。

このあたりは、せっかくなのでぜひ、グループワークのメンバーとディスカッションしてみたいと思っています。

日本にはユニコーン企業が少ない!

さて、これは別の授業(Entrepreneurial Finance)での話なのですが、ユニコーン(10億ドル以上の企業価値があるスタートアップ)のリストに日本企業がスクロールしてもしても出てこない!
ちょっと調べてみると、メルカリが最後でしょうか。。
なんだか、日本企業って、もっとアグレッシブでもいいんじゃないかな、日本発のネガティブエミッション技術を持ったスタートアップが世界を席巻したらかっこいいな、なんて思いました。
ここにも、日本の政策の在り方に課題があるのか?など考えてみたいなと思っています。
https://www.cbinsights.com/research-unicorn-companies

おまけ:春がきた・・・?

今日の写真は、ミーティングハウス、という建物の写真なのですが、ラッパスイセンやクロッカスと思われるカラフルなお花が咲いていて、しっとりとしたイギリスの春を思わせる風情です。
・・・でも、この日の気温は5~8度くらい。まだまだ寒いうえに、「今日は天気がいいね」と会話すると、その5分後くらいに雨が降ります。。。

友達の間では、「天気をほめるのはやめよう、、ここはイギリスだから…」と会話をしています。イースター休暇(3月後半)ころからお天気は安定しはじめるそうなので、楽しみにしています。

それでは今日はこのへんで。
みなさま、ごきげんよう。


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