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Vol.24 浜松市製造業についての分析

今回は、浜松市製造業の付加価値額や労働生産性、また製造品出荷額等、給与について調べてみました。

まずは付加価値額と労働生産性について特化係数を使い、どの業種が全国の他地域と比べて特化しているのかを見てみました。

特化係数とは・・・
域内のある産業の比率を全国の同産業の比率と比較したもの。 1.0を超えていれば、当該産業が全国に比べて特化している産業とされる。

<産業別特化係数:付加価値額、労働生産性>(2016年)

総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工

上記を見ると、付加価値額で、特化係数が1を上回っているのは11業種あり、そのうち特化係数が2以上の業種は、輸送用機械器具製造業(4.27)、石油製品・石炭製品製造業(3.13)、電子部品・デバイス・電子回路製造業(2.96)、その他の製造業(2.95)となっています。
つまりは、他地域の同一業種にと比べると利益を多く出しているということですね。

一方、労働生産性を見ると、特化係数で1を上回っているのは、石油製品・石炭製品製造業(5.28)、電子部品・デバイス・電子回路製造業(1.49)、なめし革・同製品・毛皮製造業(1.35)、情報通信機械器具製造業(1.12)の4業種しかありません。

先ほどの付加価値額の特化係数と合わせて見ると、石油製品・石炭製品製造業と電子部品・デバイス・電子回路製造業は、労働生産性の高さが付加価値額に良い影響を与えているように思えます。

それ以外の業種については、付加価値額が特化係数では1以上となっておりますが、労働生産性では1を下回っているということもあり、この辺りの改善が進めば、更なる付加価値額の向上が十分に見込まれ、事業価値を上げられることに繋がるのではないでしょうか?

以下からは、付加価値額、労働生産性の両方とも上位業種に入っている輸送用機械器具製造業、生産用機械器具製造業、電子部品・デバイス・電子回路製造業、プラスチック製品製造業、石油製品・石炭製品製造業、非鉄金属製造業、繊維工業のみを抽出して見ていきます。

<製造品出荷額等(実数)>(2019年)

経済産業省「工業統計調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯調査」

ここで注目して見てみたいのは、付加価値額・労働生産性の2つとも特化係数が高かった石油製品・石炭製品製造業と電子部品・デバイス・電子回路製造業です。
電子部品・デバイス・電子回路製造業については、製造品出荷額等でも浜松市では3番目の規模を誇っており、産業規模的にも大きく、労働生産性の高さから利益体質的にも優良な業種であることが窺える。一方、石油製品・石炭製品製造業は、付加価値額が5.28、労働生産性が3.13と、高い特化係数となっているが、産業規模は小さくなっている。

<製造品出荷額等(実数)の推移>

製造品出荷額等を時系列で見ると、やはり浜松では、輸送用機械器具製造業が規模の観点から長年当地域を引っ張ってきた業種であることが分かります。

経済産業省「工業統計調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯調査」

上記では、輸送用機械器具製造業の値が大きすぎ、その他業種の推移が分かりづらいので、以下で輸送用機械器具製造業を除いた推移を見てみたいと思います。

経済産業省「工業統計調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯調査」

ここで見ても電子部品・デバイス・電子回路製造業は、1986年以降右肩上がりで伸びてきていることが分かり、労働生産性の高さからくる付加価値額の高さ、また製造品出荷額等の規模的な面から見ても、当地域の主力産業になっていく可能性を秘めているのではないでしょうか?

一方、石油製品・石炭製品製造業は、長年製造品出荷額等も低い位置で横ばいに推移してきていることを見ると、産業規模は小さいが高付加価値業種として今後も安定的に推移していくものと思われます。ただし、地域の主力産業としての成長は難しいのかもしれませんね。

その他業種では、非鉄金属製造業、繊維工業が右肩下がりとなっており、それ以外は横ばいが続いていることが分かります。

<現金給与総額(従業員1人あたり)>(2019年)

経済産業省「工業統計調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯調査」

こちらでは、付加価値額、労働生産性ともに上位に位置していなかったはん用機械器具製造業と情報通信機械器具製造業となっているところが特徴であり、これらの要因分析は行ってみたいものです。

付加価値額で圧倒的な特化係数を示していた輸送用機械器具製造業が3番目となっています。

付加価値額、労働生産性とも特化係数が高かった石油製品・石炭製品製造業は比較的上位に位置しており、ここでも高付加価値業種ではあり、その利益が従業員にもある程度は還元できていることが窺えるのではないでしょうか?

一方、もう一つの電子部品・デバイス・電子回路製造業は、比較的低いところに位置しているが、製造品出荷額等は現在も右肩上がりで伸びていることもあり、今後の規模拡大による給与上昇を期待したいところである。

<現金給与総額(従業者1人あたり)の推移>

経済産業省「工業統計調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯調査」

現金給与総額(従業者1人あたり)の推移を見てみると、電子部品・デバイス・電子回路製造業と非鉄金属製造業が上昇しているが、その他業種はほぼ横ばいで推移しています。

電子部品・デバイス・電子回路製造業は、付加価値額、労働生産性、また製造品出荷額等の伸びからも給与が伸びていることは想像できるが、非鉄金属製造業は、付加価値額こそ特化係数が1.34となっているが、労働生産性が0.8と1を下回っている状態にも拘らず給与が右肩上がりになっているところは興味深いところです。

<まとめ>

付加価値額、労働生産性とも特化係数が2以上になっている業種は、石油製品・石炭製品製造業電子部品・デバイス・電子回路製造業の2つとなっているが、それぞれ傾向が違っています。

石油製品・石炭製品製造業は、特化係数が非常に高くなっているが、製造品出荷額で見るとその構成割合は非常に小さくなっている。産業規模は小さいが、高い労働生産性と、それに伴う付加価値額の高さで今後も安定的に推移していくことを期待したいところです。

電子部品・デバイス・電子回路製造業は、労働生産性、付加価値額が高く、また製造品出荷額等も伸びていることもあり、今後は規模拡大による更なる成長により、給与に関しても増加していくことも期待したいところです。

その他業種に関しては、労働生産性が他地域に比べて低くなっていることから、DX化や働き方改革等により労働生産性の向上を目指す必要性があるのかもしれません。それにより労働生産性を高め、付加価値額の増加を図り、輸送用機械器具製造業等、現状でも付加価値額が高い業種に関しては、より強固な企業体質に改善していくと伴に、それらにより生まれる余剰資金を給与に反映させていきたいところであります。
また、規模が小さい、または減少している業種に関しては労働生産性を高めることで、石油製品・石炭製品製造業のように小規模でも高付加価値化業種としての地位を確立していくことが必要なのかもしれません。

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