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『picnic』

僕はいつも祈っている
そして幸せになる
世界中のレイプ犯と
同じ身体の仕組みで
『picnic』作詞:小林祐介

 なんだか不意に聴きたくなった曲。なぜなら引用した歌い出し部分が気になってしようがなくなったから。

 最悪だ。

 でも本当の事だし逃げられない。歌詞に出てくる犯罪に関わらず全てがそうだ。私の身体と罪を犯す人間の身体、どちらも仕組みは同じ。やろうとすれば物理的に同じことを再現する機能がついている。個人差はあれどハードウェアにそう変わりはない。それじゃあ違うのはどこなのだろう。

 凶悪な犯罪者もみんな昔は子供だった。という有名なフレーズにも近いニュアンスがあるが、こちらの方がより露悪的に感じる。「私たちも犯罪者も元々は同じだったんだよ」というよりは、「自分も凶悪な犯罪者と同じ設計で作られている事、重なる部分がある事を嘆いている」ように思える。自分自身の肉体を気持ち悪がっているような。

 そんな最低の奴らと同じ構造の自分が幸せになることに違和感があるから、抵抗感があるから、“そして幸せになる”って歌詞の後に凄まじい嫌悪感のあるフレーズをくっつけたのだろう。

 事実だが、こんな事を意識しながらではまともに生活を続けるなんて困難だ。精神の安全カバーや保護テープを自らベリベリと剥がしていく行為。とにかく危なっかしい。何を思って書かれた楽曲なのだろう。

 これは私の追いかけてるバンドのTHE NOVEMBERSのファーストアルバム『picnic』の表題曲だ。同期やブレイクビーツを導入して身体的なリズムが強くなった近年の作風とは大きく異なり、普通のギターロックだ。(普通って何?だけどね)リズム隊の存在感が控えめだが、その分緊張感のあるツインギターが引っ張っていく。(耳がブッ壊れるぐらいの爆音でギターをレコーディングしたいらしいよ)

 鬱屈した歌詞と攻撃的なサウンドが特徴的なアルバムの最後を飾るこの楽曲。危なっかしい言葉に反してそのメロディは滑らかで美しい。小林祐介の陰のポップセンスが爆発している。このアルバムが出たのは2008年、彼が23歳の時の作品だ。繰り返すようだが何を思って書いたのだろう。

でも君は許してくれたから
嬉しかった
『picnic』作詞:小林祐介

 何を歌ってるのかよくわかってない自分でも“許してくれたから 嬉しかった”と歌われると、勝手に救われた気にはなるからとりあえずこれでいい。

(オマージュ元の映画があるらしいけど未視聴なんだ。何しろ突発的に聴きたくなって書きたくなった記事だもの)

 2014年のオンラインライブも圧巻。1曲目の『picnic』から次曲『Rhapsody in beauty』の繋ぎが素晴らしすぎる。

 というか7年前からオンラインライブやってたとはね、インディーズゆえにフットワークが軽いし、試行錯誤ができるのかしら。

おしまい

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