サウナとジジイと家と金
俺は観光やライブ目当てで遠征する際に、カプセルホテルをよく使う。
理由は簡単、安いからだ。寝る事のみが目的であればカプセルホテルの価格は魅力的だ、安めのビジネスホテルよりも3割程度安く泊まれる。
別に金に困ってるわけではない。もし金に困っているのなら旅行やライブに行かなきゃいいだけなんだから。だから単純に、俺は数千円をケチっているだけだ。俺は少しの不便よりも節約できる数千円にメリットを感じている。
一方、カプセルホテルに泊まるデメリットは大きく分けて二つある。
一つ目は、自分用の個室がない事だ。法令上、鍵が取り付けられないため、出入り口をカーテンで仕切られたカプセルに蜂の子のように眠る。快適とは言い難いが、まあ充分。
そしてロッカールームやトイレ、風呂といった水回りが共用なところがもうひとつ。トイレが共用なのはまあ落ち着かないが、風呂は大浴場が用意されていることが多いからそれなりに楽しい。サウナもあったりするしね。
こうしてカプセルホテルの浴場やサウナに入ると気づくことがある。ジジイが多い。
おっさんではない、おじいさんだ。壮年でも中年でもない、高年や老年だ。白髪で痩せ細った、若く見積もっても80を超えるおじいちゃんがサウナで即身仏の如く鎮座している。果たして生きているのだろうか?
ここがスーパー銭湯ならわかる。健康のためとか、趣味とか、サウナを利用するだろう。ブームでもあるしね。あと単純に大きなお風呂が好きなのかもしれない、俺も好きだ。
だが、ここはカプセルホテルだ。すなわちここにいるのは宿泊客である。フロントで渡されるルームキーがないと入場できない。
そう、齢80を越えようかという高齢者がカプセルホテルに泊まっているのだ。それもたくさん。
決して悪いことではない、むしろ良いんじゃないかな? 俺も年寄りになってもアクティブでありたいと思う。安宿を渡って旅に出るのも素敵だと思う。
だが、本人らはそれを望んでやっているのか。本人らの希望ではなく、金銭の事情でここにしか泊まれないんじゃないか?って疑問が頭によぎる。
何故ならたった+3千円でもっとまともな宿に泊まれるからだ。歳を取ったらゴミゴミした共同スペースばっかりの空間よりも自室があった方が快適なのではないかと思う。ワンコ用のケージのようなカプセルホテルよりもホテルのベッドの方が疲れが取れるのではないかと思う。
わざわざこんなところを選ぶのは、三千円が「たった」じゃないからなのではないか。
それか、ここ10年来の社会問題となっている「ネットカフェ難民」のような、「カプセル難民」なのではないかと考えてしまう。
私の泊まっているカプセルホテルでも、2週間連泊での割引コースを備えている。こんなコースを設定しているということは、住む場所のない人間もターゲットとしていることになる。すなわち、ビジネスとして成立する程度にはその状況に置かれた人間がいるってことだ。
それもこれも、ホテル代が高すぎるってことだ(給料が安すぎるって話も大切だが、今回は触れないよ)。一晩の宿を得るだけでもカプセルホテルですら5000円以上は必要だ。
バイトの最低賃金を千円とすれば5時間分必要だ。しかし、人は住処があれば生きられるわけではない、食事やその他の買い物を想定すれば、1日フルタイムでバイトをしても泊まれないのである。
だから、寝る場所を得るってことは非常に困難だ。当たり前のことだが改めて思い起こされる。
アパートは歳を取ると貸してくれないしね。アパートに入れない人間にマンションや戸建が買えるわきゃねえし。そうなるとネットカフェやカプセルホテルのような格安宿でジリ貧の攻防戦を強いられるのだろう。
まあしかし長くは保たないはずだ。こういった宿はまともな宿と比べて相対的に安いだけなのであって、家賃としては割高な部類なのだから。
うん、飛躍しすぎかもしれないけどね、単純にアクティブで節約好きなご老人たちなのかもしれないし。だが気になってしまう。
一方金はあるところにはあるもので、サウナにじゃぶじゃぶ使える人は使う。
俺が建材を納める得意先に、軽井沢等に別荘を建てたい富裕層を相手に商売をしている業者がいるが、それはま〜景気が良い。
バレルサウナって知ってる?
こんな感じのバレル(樽)状に木材を組んだ個人用のサウナのだが、一番安いやつでも100万以上はする、こだわればその価格は青天井だ。
しかもそれはあくまで本体の価格ね。わかりやすい部分では施工費もかかれば光熱費もかかるし、何より設置する土地が必要だ。
社長曰く最近これがめちゃくちゃ売れているらしい。今年に入ってもう7台契約したのだとか。サウナブームにあやかって、別荘に是非とも設置したいというお客さんが多いのだとか。
どえれぇ格差だ。
家じゃねえぜ、別荘だぜ?
年に何回使うんだよ笑
そんな数回のためにウン百万をポンと出せるやつもいれば、毎日カプセルで蜂の子になっている爺さんもいる。
金がないと住む場所も選べないのだ。金があれば住まない場所すら自由自在なのにね。
はあ。
LUNKHEADのフルアルバム『家』から名曲、シンフォニアを紹介しておこう。彼らを支えたファンたちとMVを作り上げだ会心作だ。それにしてもすげぇアルバム名だよね。
写真引用元
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?