「リサーチなんてやるだけ無駄」と言われたら
何が課題なのか?
生活者リサーチ・マーケティングリサーチを生業にしてきて、何度か、タイトルのようなことを言われたことがあります(もちろん、もっとオブラートに包んだ大人な言い方でです)
とはいえ、「リサーチという仕事は社会の役に立つ」と信じて仕事をしているわけなので、この言葉の裏側に何があるのかを理解しておいた方が、複数の面で良いと思います
結局、何が課題なのでしょうか?
2つの背景仮説
この言葉の背景には、2つの大きな仮説があるように感じます
(1) 予測系のリサーチ結果が、”あたらなかった”経験がある
(2) スティーブ・ジョブスの言葉をきちんと消化できずに使っている
1つ目を「体験仮説」、2つ目を「名言仮説」と呼んで、読み解いていきたいと思います
(1)体験仮説の読み解きとリサーチャーからのお願い
この仮説を背景にした発言者は、過去にリサーチを頼ったのに、リサーチにサポートしてもらえなかったということで、ある意味、リサーチ側に非がある可能性が高いです
予測系のリサーチなので、そもそも予測モデルがしょぼかったのか、投入するデータの質や量が十分でなかったのか。色々あるとは思いますが・・・)
なので、その部分については、素直に受け止めてるべきですね
その上で、お伝えしたいこととしては、「リサーチって、予測だけではなく、他にも色々な課題に対してソリューションを提供できるツールキットなんですよ」ということですね
顧客インサイト理解のような「お客さんの先のニーズを読んで、価値提案に繋げる」リサーチもありますし、SNSなどのソーシャルデータから「未顧客でありながら潜在的なターゲット層を炙り出す」リサーチなどもあります
そのほか、VUCA時代の環境やそれに伴うマーケティング課題に合わせて、様々な手法が生まれています
「リサーチは課題に対するソリューションの1つ」であり、熟練したリサーチャーは、知識や経験を組み合わせて、課題に対するリサーチを必ず考えられます
ですので、「もうワンチャンスいただけませんか?」とお願いしたいですね
(2) 名言仮説の読み解きとリサーチャーとしての思い
この仮説を背景にした発言者は、ジョブスさんの発言を読み、それを取り入れておられるということで、まず勉強熱心な方だと思います
そのジョブスさんの発言を、今一度、以下に引用しておきましょう
VUCA前のマーケティング・リサーチを想定している?
取材での発言なので、こういうこと言うと野暮なのですが、「だから」の前と後ろって、ロジックが凄く飛んでいませんか?
おそらく、マーケティング・リサーチが、顕在的ニーズやそれに伴った既存プロダクトのしょぼい変更くらいしか理解できるツールであるということなのかなと思います
しかし、現在のリサーチャーで、「市場規模がすでにわかっていて、競合プレイヤーもほぼ分かっていて、ニーズが顕在化している」という世界を想定している人は、ほぼいないんじゃないかなと思います
なので、デザイン思考やアート思考、エフェクチュエーションなどの動きなどとも連動するように、様々なリサーチのフレームワークや手法などが出てきており、課題に対してソリューションを提供できるようになってきています
「顧客にアイデアを作ってもらう」のはリサーチではありません
そもそも、プロダクトやサービスに対するマーケティング・リサーチって、顧客にアイデアを生み出してもらうものではありません
実態やインサイトなどから本質的に価値を感じてもらえるものを理解したり、想定している提供価値を具現化したアイデア評価を通してビジネスの確度・精度を高めたりするものです
「インタビューしたら、お客さんからアイデアをもらえる」と考えているマーケーターの方がおられるのも事実でしょうが、そんな話が出た時点で、「そうではなく、こういうことですよ」と伝えるのは、リサーチャーの責任と役割でしょう
たかがリサーチ、されどリサーチ
私自身は、「たかがリサーチ、されどリサーチ」と信じています
しかし、タイトルのような言説はまだまだ影響が大きいですし、「リサーチ」という言葉に対する認識をもっと広げる努力をしないといけないと感じましたね
僕のこういった記事もその一助になれればと思っています
本記事も読んでいただいて、ありがとうございました!
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