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クレカ積立、ポイント還元競争の終焉。


オルカンでポイント付与は奇跡的。

 これまで月5万円が上限だった投資信託のクレカ積立が、金融商品取引業等に関する内閣府令改正に伴い、月10万円に緩和された。それに伴いポイント還元をウリにしている、ネット証券各社が続々と対応を発表する中、某R証券の改悪で覇権を取り、事実上の一強となっていた某S証券が最も遅い3/22に対応を公表、改悪する運びとなった。

 証券各社とクレカ別の還元率については、既にまとめサイトに記載されている通りなので、ここでは割愛させていただく。

 重要なのは、ネット証券のツートップである某S証券と、某R証券が事実上のポイントばら撒きを抑制したことで、改悪しなかった他のネット証券にポイント乞食が流れ込み、食い散らかされて短期間で旨みがなくなる、共有地の悲劇的な結末まで秒読みとなっていることである。

 仮に還元率0.5%だとしても、つみたて投資枠の120万円をクレカ積立で埋めれば、6000円相当のポイントが付与されるわけだが、流行りのインデックスファンドのオルカンは信託報酬が0.05775%と、120万円分ファンドを保有する顧客から年間693円しか取れず、付与しているポイントとのバランスが悪いのは明白だ。

 忘れてはならないのは、信託報酬は運用会社、受託会社、販売会社で山分けされることだ。つまり、証券会社の取り分は、販売会社部分のみで、単純に3分割しても、年231円しか売り上げにならない。

 これは還元率0.5%で付与される撒き餌、もといポイントの損失分を回収するためには、顧客に最低でも26年間ファンドを保有してもらわなければ、収支トントンにならないことを意味し、ポイント稼ぎで即時売却されたら、証券会社的には、たまったものではないのは想像に難くない。

 逆説的に考えると、オルカンの信託報酬如きで、クレカ積立時や、保有するだけでポイントが付与されること自体が奇跡的な状況であり、現状は資産形成するにはボーナスステージと言っても過言ではない。

どうせ改悪する運命。手数料の安さが肝。

 そんなボーナスステージが、半年後に終焉のフェーズに移行しようとしている。過去になんとかPayで囲い込みからの改悪一辺倒な流れを見ても、どこの証券会社を選んだところで、どうせ改悪する運命であることには変わりない。

 そして、NISA口座の金融機関変更は、今開設している証券会社から勘定廃止の書類を取り寄せて、それを新しく開設したい証券会社に送る必要があるため、思っているよりも面倒くさい。

 しかも、旧NISA(一般)であれば非課税期間が5年間で、売却したら枠の復活はなし。満期まで保有したら、その後は特定口座に移管されるが、新NISAは非課税期間が無期限で満期の概念がなく、非課税枠は売却すると翌年に復活する仕様となった。

 これにより、金融機関変更を行うと何が起きるか。人柱報告が2025年以降にならないと出てこないため、憶測の域を出ないが、2024年にA証券で360万円。25年〜26年にB証券で720万円。27〜28年にC証券で720万円。みたいな使い方を想定する。

 28年時点では、クレカ積立のポイントが魅力的なC証券にNISA口座を開設しているが、同年に現金化の必要に迫られ、A証券で50万円、B証券で30万円売却すると、翌年の29年に投資枠が復活するのはA証券で50万円、B証券で30万円になるものと思われる。

 しかし、C証券でクレカ積立をしているのに、29年に復活する合計80万円の投資枠をC証券で使えず、仕方なく特定口座で積み立てるような事態が起こりかねないため、煩雑さを回避したいなら、金融機関変更は慎重に判断すべきと思われる。

 そう考えると、クレカ積立の還元率で毎年NISA口座を引っ越すよりも、長期目線ではポイントばら撒きはそう長くは続かないと考え、開設時点で最も売買手数料が安い証券会社で、NISA口座を開設した方が、結果としては合理的なのかもしれない。

NISA保有銘柄は移管できない。

 私は新NISAのつみたて投資枠だろうが、成長投資枠だろうが、同じインデックスファンドで埋める気でいる。そして個別株で運用している日本株は、引き続き特定口座で運用するつもりである。

 日本株でNISAの成長投資枠を使わないのは、専ら高配当銘柄が中心で、配当控除を駆使すれば、配当金の実効税率は7.2%まで圧縮でき、損益通算できないリスクを負ってまでNISAで運用する必要性を感じていないこと。そして、NISA保有銘柄は他の証券口座に移管できない点がデメリットと感じているからだ。

 これは大したデメリットではないと思うかもしれないが、10年、20年先のネット証券の勢力図が、今と同じ状態とは限らないため、昔の条件よりも有利な証券会社が台頭してきた際に、個別株を自由に移管できた方が不自由しないと考えるからだ。投資信託はノーロードを謳っている商品であれば、そもそも売却時の手数料も掛からない。

 それに、もし保有銘柄がTOBやMBOの対象となった際に、幹事証券会社に移管するのに、一度、市場を通じて売買して、NISA→特定口座に移管する手間が増えるのも経験上、地味に面倒くさいと感じたからだ。

 旧NISAは5年ないし20年経過すれば、自動的に特定口座に移管される仕様だったため、長年放置しても、後から一つの証券口座に集約可能だったが、新NISAは無期限のため、いたずらに金融機関変更を行うと、後から一つの証券口座に集約できない可能性がある。

 いかんせん、年初からスタートした制度のため、私が懸念している問題が表面化するのは早くても数年後で、人柱になりたくないのであれば、下手に動かない方が良いと考えるが、いかがだろうか。


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